サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境コミュニティ・ビジネスと地域環境力

2012年01月29日 | 環境と経済・ビジネス

1)環境コミュニティ・ビジネスとは

 

 「環境コミュニティ・ビジネス(以下、ECBと表す)」という言葉が、2003年度から2009年度にかけて実施された経済産業省の事業で使われた。同事業では、ECBを「地域の企業・NPO・市民団体等の地域コミュニティを形成する主体が連携・協働し、地域が有する環境問題の解決、地域の活性化を経営的感覚に基づき実践する事業」と定義した。つまり、コミュニティ・ビジネスのうち、環境問題の解決を活動テーマとする場合を、ECBと定義している。

 

環境コミュニティ・ビジネスという用語は、日本のオリジナルである。しかし、日本のコミュニティ・ビジネス関連の書籍で取り上げられている事例は福祉関連の事業が中心で、環境分野のものは少ない。環境コミュニティ・ビジネスという経済活動の実態は希薄である。昨今の景気状況の根本的打開や持続可能な将来社会の構築を目指し、真に地域社会済にインパクトをもたらす“本格的な環境コミュニティ・ビジネス”を、実体化させ、離陸させていくことが望まれる

 

環境コミュニティ・ビジネスは、ビジネスという手段を用いながら、地域課題を解決する取組を通じて、地域環境力を高める取組みである。地域環境力を高めるという目的の中で、環境コミュニティ・ビジネスを位置付け、推進することに期待したい。

 

(2)地域につながる環境ビジネスへの期待

 

 環境ビジネスであっても、環境コミュニティ・ビジネスではない場合がある。

 

そもそもOECDは「『水、大気、土壌等の環境に与える悪影響』と『廃棄物、騒音、エコ・システムに関連する問題』を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する製品やサービスを提供する活動」を環境ビジネスと定義している。具体的には、環境汚染防止装置・サービスからクリーナー・プロダクション、環境適合設計関連、さらには持続可能な農林水産業、再生可能エネルギー、エコツーリズム等、広範な対象が環境ビジネスに定義されている。つまり、環境問題の解決に貢献する製品・サービスを提供するのが環境ビジネスであり、地域に貢献するかどうかは問わない。

 

しかし、環境ビジネスが地域経済の活性化や雇用創出に結びついていない場合もある。例えば、太陽光パネルの製造工場がある地域では、増産・増員を図るが、増員分は自社内の配置転換を優先させ、地域での新規雇用分は少ないという。また、環境ビジネスを立地させても、製品は地域外の他企業に出荷されるばかりで、地域の一般消費者には製品が認知すらされていない状況も見受けられる。

 

また、地域環境ビジネスの関連書籍をみると、地域の中小企業が個性的な技術力を環境分野に応用し、小さな国際企業として成功した事例が取り上げられている。地域内の市場規模は小さく、域外の大きな市場をターゲットすることも必要である。しかし環境問題の解決のみならず、持続可能な社会づくりを目指す環境ビジネスであるならば、より一層と地域経済への貢献に配慮したものであるべきだろう。

 

環境ビジネスが日本経済を牽引することも大事であるが、環境ビジネスを名乗るのであるならば、地域の足元に目をやり、地域環境力の向上に貢献する環境ビジネスを目指して欲しい。「環境ビジネスのコミュニティ・ビジネス化」に期待したい。

 

3)環境コミュニティ・ビジネス発展のための地域環境力

 

環境コミュニティ・ビジネスの実践事例をみると、原材料の調達・製造・販売という循環の形成、地域内市場への販売促進、地域からの出資調達等において、地域環境力を基盤としている。

 

例えば、長野県飯田市で市民共同発電を行う「おひさま進歩」の事業では、募集からわずか4ヶ月で、2億円を超える出資を集めた。この市民出資業務は「自然エネルギー市民ファンド株式会社」に委託している。同社では、国内4箇所において市民出資による市民風車建設を行っていたため、資金運用のノウハウがあり、短期間の募集が可能であった。このため、同社への出資者は全国に分布する。

 

また、おひさま進歩の市民共同発電事業では、飯田市との売買電契約を結んでいる。保育園、公民館、児童館等の市の公共施設の屋根におひさま進歩が太陽光発電パネルを設置し、それが生み出す電力を市が購入するという契約になっている。

 

契約に関して、重要な点が2つある。第1に20年の長期契約である。20年の契約期間の間には、建て替え、移転等が考えられるが、基本的には「事業の趣旨」をくみとり、契約が継続できるように「配慮する」というなどの規定がある。第2に22/kWhの買い取り契約である。通常の電気買い取り額と同じだが、電気代の変動に対しても22円と固定することで、事業計画を立てやすくしている。

 

このように、おひさま進歩は、環境省や飯田市、自然エネルギーの専門会社、地域の自治組織など、多様な主体との連携を前提に、成立した事業である。

 

また、市民共同発電事業というビジネスモデルでは、出資者との関係づくりによる波及的な事業展開が期待できる。全国の出資者を招待した市内ツアーも開催されており、そうした中から、新たな環境コミュニティ・ビジネスが創出される可能性がある。

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