気候変動(地球温暖化)には、緩和策と適応策という2つの対策がある。
緩和策は、人為による気候変動の原因である温室効果ガスの排出を削減するもので、低炭素施策等とも言われる。マイナス6%とか25%等と目標を設定し、これまで進められてきたのが緩和策である。
緩和策に対して、適応策は知らないという人が多いだろう。これは、気候変動の影から人の生命や財産、あるいは地域の風土や文化等を守るための対策である。世界全体で温室効果ガスの排出を半減させたとしても、地球の平均気温は既に上がっているし、将来の安定化状態に向けて、まだまだ上昇を続けると予測されており、適応策は必要である。
ここで注意しなければいけないことは、適応策をとれば、緩和策が必要ではないというわけでなく、緩和策を最優先、最大限に実施することが優先であり、それでも残る影響について、適応策を行うということである。
もっとも、既に、1980年代後半以降、猛暑の頻度が増えているし、豪雨の強度が強まっている。これらは長期的な気候変動(地球温暖化)が一因であると考えられ、現在の暮らしや産業の安全・安心を守るという意味で適応策が必要である。
さて、この緩和策と適応策に対する住民意識調査を、これまでも何度か調査をさせていただいている長野県飯田市で実施した。詳細の分析やレポートの作成はこれからであるが、結果の要点を報告する。なお、アンケート調査では、緩和策や適応策という表現を使わずに質問をしている。
1.気候変動の身の回りの地域への影響を実感する人が多く、この実感を持つ人は適応行動の実施度が強い傾向にある。
また、この実感を持つ人は、気候変動を危機だと認知し、気候変動あるいはエネルギー問題を解決しようとする意図を持ち、これらの認知や意図の形成により、緩和行動の実施度が強い傾向にある。
つまり、気候変動の地域への影響について、実感を高めることで、適応行動はもとより、緩和行動の実施度も高まるという意識構造がある。
2.緩和策と適応策の各々への必要性認知あるいは行動意図の回答から、緩和策を適応策よりも優先するタイプと適応策を緩和策よりも優先するタイプ、緩和策と適応策のどちらも優先するタイプを抽出することができる。
緩和策と適応策のどちらも優先するタイプを増やすことを狙いとした場合、緩和策を適応策よりも優先するタイプは、気候変動の地域への影響実感が相対的に弱いため、影響実感を高めるような普及啓発が有効である。
適応策を緩和策よりも優先するタイプは、気候変動の原因が温室効果ガスであることへの認知が低く、この理解を高めるような普及啓発を行うことで、緩和策と適応策のどちらも優先するタイプに近づいてもらえる可能性がある。
以上、分析はまだまだこれから行うが、緩和策と適応策の両方に対する住民意識構造を分析した例はなく、示唆深い結果であると考えている。