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環境イノベーションの普及条件   ~福岡県大木町の事例~

2015年08月22日 | 環境イノベーションとその普及

横浜環境ビジネスネットワーク メールマガジン【8月20日配信】

コラム 【第5回】環境イノベーションの普及条件   ~福岡県大木町の事例~...

 今回のコラムでは、環境イノベーションの普及事例を取り上げることにしてい たが、実はなかなか良い事例がない。洗剤・シャンプーの詰め替え容器、ハイブリッドカー等は普及の成功事例といえるだろう。ただ、国の法律や大企業の戦略等が普及要因であり、地域での取組みによる普及事例ではない。

 今回は、地方自治体の行政施策であるが、福岡県大木町のメタン発酵肥料の普及事例を紹介したい。
 ここでは、生ごみとし尿を原料にして、メタン発酵を行い、その副生物である消化液を液状の肥料(液肥)として利用する試みを定着させてきた。

 生ごみとし尿のメタン発酵は、京都府八木町で先行事例があったが、消化液の利用ができず、消化液の乾燥処理を進めていた。これは消化液のイメージが悪く、農家が利用したがらなかったためである。

 この課題を解決し、消化液の堆肥利用を実現するため、大木町では、消化液を魅力的な肥料にするために様々な活動を行ってきた。肥料登録、液肥による実証栽培、液肥の散布サービス、液肥利用者の組合化、液肥を利用した農産物のブランド化・地産地消、学校での循環授業やシンポジウム等での啓発といった取組みである。

 こうした循環のための取組みを、中村・遠藤は「自然科学的な変換と対になるものとして、社会経済的変換、略して社会変換」と称している。さらに「社会変換は変換品(ここでは液肥あるいは液肥を利用した農産物)の経済的な価値を高めるだけではない。もう一つ大事なのが、「循環の取組みに誇りを持つ市民の育成である。」としている。

 地域の環境ビジネスにおいても、工学技術を駆使してできた製品を売ろうとする だけでなく、その付加価値を創出する社会転換技術を、地域行政とともに工夫して創出してみることが必要だろう。

 

参考文献:
 中村修・遠藤はる奈「成功する生ごみ資源化 ごみ処理コスト・肥料代激減」 農山漁村文化協会、2011年

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