サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

地域の気候変動適応センターへの期待

2014年05月11日 | 気候変動適応

 気候変動の地域影響と適応策の研究の一環で、全国各地の公設試験研究機関を訪問し、インタビュー調査を実施しています。気候変動の地域影響は、地域によって異なり、地域に密着した専門研究機関が、地域によりそって、適応策の推進主体(地域の気候変動適応センター)となることを期待しているからです。

 

 緩和策(温室効果ガスを減らす対策)にしても、公設試験研究機関の役割が重要と考えられます。しかし、適応策(気候変動の被害を減らす対策)では、気候変動の地域影響のモニタリング、地域の自然や産業条件に応じて、地域の生産者のニーズに対応する技術開発、地域協議会等を通じた地域の関係者との付き合いを通じた技術普及等が重要です。東京から出かけるコンサルタントに委託するのでなく、公設試験研究機関の役割が期待されます。

 

 公設試験研究機関には、農業、林業、水産業、工業、自然、環境・衛生等の分野で設置されています。適応策の研究では、農業分野での研究が進んでいて、猛暑でも被害を受けにくい高温耐性のある水稲の品種開発、果樹の高温被害対策等が各地で進められています。また、畜産分野では牛や鶏の熱中症対策、水産分野では磯焼けという、藻場の高温化による消失への対策が進めれています。自然関連では、山岳生態系等のモニタリング、環境分野では気候変動の将来予測結果の分析や影響分析等が実施されています。

 

 昨年度後半からこれまでに訪問した公設試験研究機関は、北海道、長崎、和歌山ですが、これからも各地に出かけたいと思います。インタビュー結果は論文にまとめていきますが、現段階では、公設試験研究機関が地域の気候変動適応策の推進主体となるためには、次のような点が課題になっていそうだと考えています。

 

1.行政予算が潤沢ではないなか、短期的な成果主義になりがちで、長期的な対策や継続的なモニタリング予算等は削られやすいようです。長期的な適応策の検討を何もしなくてもいいわけではありません。研究評価の方法論の見直しが必要なのではないでしょうか。

 

2.北海道では、あらゆる分野の公設試験研究機関を統合し、分野横断的な戦略研究を進めています。その一環として気候変動の研究が実施されています。他県においては、地域内の公設試験研究機関の分野横断的な連携が不十分であると考えられ、気候変動の適応というテーマをきっかけに分野間連携を促していくことが望まれます。

 

3.地域を超えた公設試験研究間の連携と分担により、より効果的な研究を進めることができます。この際、地域を超えた連携を支援する国レベルの専門的研究機関、そこでのコーディネイト人材の役割が重要となります。

 

4.技術開発から関係者への情報提供・普及啓発、関係者の取組の取り上げ、効果測定や見直し等を進めるという流れをつくるためには、公設試験研究機関の持つ政策立案支援、普及啓発、調整機能をさらに高めることが期待されます。この際、気候変動適応策が地域の産業の活力や暮らしの豊かさの創出につながような創意工夫が重要だと思います。

 

等々です。さらに、神奈川、高知、富山、宮崎、新潟、山形等に出かけて、調査を進めます。

 

 

 

 

 

 

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