岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド
とりあえず過去執筆した作品、未完成も含めてここへ残しておく

新宿コンチェルト11

2022年04月25日 22時00分36秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 十二月二十八日 火曜日 携帯の着信音が聞こえ、目が覚める。誰からだろう? 画面を見ると西武新宿からの電話だった。「もしもし」「もしもし、朝早くにすみません。西武新宿駅長の間壁です」「え、間壁さんですか? お久しぶりです」 時計を見ると、朝の八時半だった。何かあったのだろうか? ひょっとして昨日本川越駅の助役、小谷野との話がもう伝わったのか?「どうかしたんですか?」「ええ、うちの峰が神威さんにぜひ . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト10

2022年04月25日 21時59分29秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 川越警察署に到着すると入口付近に車を停車する。百合子を車の中で待たせ、俺一人で中へ向かう。途中で警官とすれ違ったので声を掛ける。「おまわりさんー」「はい?」「夜中に家の前、停めといたらやられちゃったけど、これきった奴、出してくんないかな?」「すいません、それでしたら署内の方でお願いできますか」「はいはい」 素っ気ない対応の警察官。別にはなっから期待してないので苛立ちはしない。でもこの件に関しては . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト09

2022年04月25日 21時57分16秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 体が何をしても動かない。俺は大地さんの一撃で完全にノックアウトされた。俺などしょせんこの程度だ。 体を揺さ振られているのを感じる。誰だろう。ひょっとして大地さんが気遣ってくれているのか? しかしまぶたが重く目も開かない。「ねえ、起きてってばー」 女の声が聞こえる。「龍…、どうしたの?」 百合子の声だ。さっきまで大地さんと向かい合っていたのにどうして……。 . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト08

2022年04月25日 21時55分12秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 今までたくさんの問題が山積みになり、パニックを起こしそうになるぐらいだった俺。百合子との件は問題なくなった。 あとは西武鉄道の問題。そして『ガールズコレクション』の問題。この二つ。 西武鉄道のほうはもうちょっとで片付くような気がした。本当の問題はあの店だ。 坂本と若松。馬鹿と阿呆には、それなりの使い道を考えなきゃな。ヤバいぐらいの低脳さにはビックリする。若松が確か俺より三つ上だから三十六歳。若松 . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト07

2022年04月25日 21時54分06秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 百合子が病院に行く時は、せめて一緒に付き添ってやりたかった。仕事を休めるか駄目元で村川に聞いてみたところ、案の定駄目だと言われる。 もう店で従業員をするのは嫌とかそういう問題じゃない。 自分のやるべき仕事だけを済ませると、あとは店のパソコンを使い、『とれいん』の執筆作業に取り掛かる事にした。皮肉な事にメモリースティックを持っている。家に帰ったら、店で打った分を付け足せばいい。 どうせ客が来たって . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト06

2022年04月25日 21時52分41秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 仕事を終え、駅に向かう。百合子からの返事はまだなかった。改札を通り特急券を買おうとすると、喫煙席がすべて売り切れになっていた。俺の後ろに列がたくさんできているので、仕方なしに禁煙席のボタンを押す。「先日はどうも」 背後から声を掛けられたので振り向くと、助役の朝比奈が笑顔で立っていた。彼に対してはもう何も文句はなかったので、俺も笑顔で応対した。あとは駅長の峰がちゃんと謝れば済む。「寒いですねー」「 . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト05

2022年04月25日 21時51分31秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 家に帰ると、以前百合子が渡してくれた俺たちの子供の写真を手にとって眺めた。 二枚のエコー写真。俺の子供の写真……。 彼女と楽しく過ごしてきた少し前の会話が頭の中に思い浮かんでくる。「何だ、これ? 全然どこに写っているのか分かんないじゃん」「ほら、ここ。ここに写ってんのが私たちの子供よ。まだそら豆太郎だけどね。これエコー写真っていって、特殊なカメラで撮ってんだよ」「何だ . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト04

2022年04月25日 21時50分26秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 百合子と知り合ったこの数ヶ月間って、一体何だったんだろうな……。 しばらく部屋の白い天井をジッと見つめていた。楽しかった日々がこんなにも急激に終焉に向かうなんて。 お互いもうちょっと冷静に話し合うべきだったんじゃないのか? いや、もう遅い。別れ際の百合子の目。あれはあきらかに軽蔑を含んだ冷めた目つきだった。女は現実的だと誰から聞いた事がある。彼女の中で、俺との今後はす . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト03

2022年04月25日 21時48分57秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 電車を降りて、改札口の方向へ進む。本川越駅の特急券改札のところで、割腹のいい年配の駅員が立っていた。名札のところに目を向けると駅長と書いてある。俺は近づいてゆっくりと尋ねた。「どうもすみません。先ほど西武新宿駅で騒ぎを起こした者です」「ああ、お客さま、本当にすみませんでした。駅長の村西です。とりあえず立ち話も何ですから、奥にいらして下さい」 駅長の村西に促された通り、改札右手にある駅員待機室に入 . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト02

2022年04月25日 21時39分40秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
 百合子はそのまま俺の家に泊まり、翌朝早くになって会社へ出掛けた。まだ眠かったが、俺も早速動かないといけない。 ホームページ作成について、近所の和菓子屋を営む榊さんに協力を仰ぐ事にした。この人はパソコンのスキルがあるので、一緒にやるなら心強い。電話を掛けてみる。「おう、龍一か。どうした?」「実は歌舞伎町で今度、ヘルスをする事になったんですね。それで店のホームページを作るようなんですが、榊さんの力も . . . 本文を読む
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新宿コンチェルト01

2022年04月25日 21時34分59秒 | 新宿コンチェルト/とれいん
2010年11月23日~原稿用紙?枚『新宿コンチェルト』 クレッシェンド第7弾、2010年11月23日より執筆開始 過去から逃げちゃいけない 業を背負ってまで、俺はまだこうして生きている ギネス? そんなものより前に、俺はこの作品を書かなきゃいけない    二千三年…。思えば本当に色々な事があったものだ。 裏稼業に身を置きながら安定した日々を送っていた俺だが、長 . . . 本文を読む
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