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ニッポンのゆる~い日常

菅氏で新国際環境に対処可能か

2010-09-15 08:42:02 | 正論より
9月15日付     産経新聞【正論】より



菅氏で新国際環境に対処可能か   杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏


http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100915/plc1009150251002-n1.htm



1939年9月3日に英国はドイツに宣戦布告し、その日にウィンストン・チャーチルは海相に任命された。海軍省は「ウィンストンが戻ってきた」との声明を出し、全海軍と英国民は歓声に沸いた。国際環境の変化に適応できる指導者が登場したからだ。

 政治家、外交家、文人である救国の英雄と日本の政治家を比べるつもりはない。が、菅直人・民主党代表、首相の再任に拍手を送るどころか、むしろ怪しい胸騒ぎを覚えるのは私だけではあるまい。迫り来る朝鮮半島の危機や国際的ルールなど眼中にないかのように紛争を仕掛けてくる中国への対応で、この日本の新指導者は相応(ふさわ)しくない政治家のように思われる。




 ≪民主政権下の衝撃の1年≫


 国際情勢の変化と日本の対応を長年にわたって、観察してきた私にとって、民主党政権誕生以来の1年間は衝撃であった。菅首相だけを責めているのではない。東シナ海を「友愛」の海にする、日米関係は「正三角形」にすべきだ、米軍普天間飛行場は「国外、最低でも県外」に持って行く、日本は米国とアジアとの架け橋になる、東アジア共同体構想を推進し米国は除外する、などの発言が少なからぬ幹部たちから相次ぎ、小沢一郎氏は143人の民主党議員を引率して北京詣でをした。

 かと思うと、訪米し「日米関係の深化」を約束してきた菅首相は所信表明演説で永井陽之助を「現実主義者」と崇(あが)め、米軍の基地漸減と有事駐留を説いた永井の著書「平和の代償」を評価した。時計の針を45年前に戻した思考ではないか。外交・防衛政策の「迷走」と批判する向きもあるが、褒め過ぎだ。私は「錯乱」だと思う。国際政治のX軸、Y軸のどこに日本が位置するか、民主党、特に首相は分かっていないのではないか。




 ≪太平洋、インド洋の波高し≫


 ヘンリー・キッシンジャー氏の見方を借用すると、国際情勢の大きな特徴は、(1)主権の一部を互いに譲り合って成立したEU(欧州連合)は世界で最も安定した地域で戦争は起きにくい(2)イスラム原理主義に基づく国際テロリストの挑戦に対応するシステムが構築できるかどうかが重要だ(3)主権国家同士の従来型のトラブルはアジア地域に依然、残っている-の3つだ。地中海と大西洋は平和な海になりつつあるが、太平洋とインド洋の波は高いといっていい。

 危険な地域の中心には中国が存在し、朝鮮半島には北朝鮮の指導者交代をめぐって何事かが起ころうとしている。中国の「軍事的圧力」は東シナ海でいま日本との対立を生み、南シナ海でASEAN(東南アジア諸国連合)諸国との緊張感を引き起こし、インド洋ではインド側の警戒感を高めており、陸上ではロシアの疑念を深めている。世界の平和と安定に最大の役割を演じてきた米国は中国に対し、国際社会の健全な一員にする「関与政策」といざという時に備える「保険政策」を柔軟に適用してきた。アメとムチの政策といってよかろう。「保険政策」の内容は、軍事力の充実、同盟関係の強化、友好国の増加だ。その中で日本に何かできるのか。自衛力の充実と日米同盟こそは、日本の「保険政策」ではないのか。

 尖閣諸島近海で領海侵犯した中国漁船を「公務執行妨害容疑」で艦長のみ逮捕しただけであるにもかかわらず、北京の日本大使が5回にわたって中国政府の抗議を受け、東シナ海ガス田開発の条約締結交渉の延期を通告され、日本の排他的経済水域(EEZ)に入り込んだ中国監視船が海上保安庁の測量船に測量中止を要求した。憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」政治家には、東シナ海で何が起きているのか理解の外に違いない。




 ≪出でよ、日本のチャーチル≫


 民主党の一大欠陥は「日本丸」の運航に当たる責任者に防衛・安全保障の知識が抜け落ちている事実である。鳩山由紀夫前首相は抑止力とは何を意味するか理解できなかった。その人が党内で重きを成し、代表選にあたって少なからぬ役を堂々と演じている。冗談だと信じているが、菅首相は防衛相を自衛官だと思い込み、自らが自衛隊の最高の指揮監督権を持つと自衛隊法に定められていることも知らなかったと伝えられる。

 今回の事件に最高指揮官はどんな判断が下せるのか。自らの無能を正当化する「中国政府は国内世論と日中友好関係の板挟みになっている」といった遁辞(とんじ)に易々とはまっていく。代表選の最中にも外交・防衛は本格的争点に上らなかった。国際環境の厳しさに両候補とも無頓着だ。日本は危うい。


 菅首相に気づいてほしい。自身を含め民主党幹部が内外にばらまいた妄言の大方は、「普通の民主主義国並みに自衛隊を国軍にする」との前提に立てば、整合する。国の背骨は軍隊である-との国際的常識は日本の禁忌であった。平和の維持には精強な軍隊が必要だと唱えた政治家が新しい日本の救世主になる。時代は日本にチャーチルの登場を促しつつあるのだ。(たくぼ ただえ)










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対中姿勢 尖閣の守り強化が課題だ

2010-09-15 08:38:51 | 日本
対中姿勢 尖閣の守り強化が課題だ


http://sankei.jp.msn.com/world/china/100914/chn1009140315001-n1.htm


 沖縄・尖閣諸島の領海内で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、中国の戴秉国(たいへいこく)国務委員が丹羽宇一郎駐中国大使をわざわざ休日の未明に呼び出し、日本側の対応に抗議した。

 事件がそもそも中国漁船の領海侵犯と違法操業に端を発したことを考えると、きわめて理不尽で高圧的な外交手法と言わざるを得ない。仙谷由人官房長官は異様な呼び出しに「遺憾だ」と述べたが、それで済む問題ではない。

 尖閣諸島は明治政府が日本領土に編入し国際的に認知された。中国は1992年に国内法で一方的に中国領だと宣言したにすぎない。岡田克也外相は、この事実を中国の程永華駐日大使にきちんと伝え、直接厳重抗議すべきだ。

 実際には外務省高官が程大使に電話と面談で1度ずつ、抗議しただけだ。これでは腰が引けているとみられてしまう。

 事件発生後、中国側は一貫して強硬姿勢をとってきた。一つは、今月中旬に予定されていた東シナ海ガス田共同開発に関する日中両政府の条約締結交渉第2回会合の延期である。日本が中国漁船の船長を公務執行妨害容疑で逮捕したことへの対抗措置だ。

 もう一つは、沖縄本島西北西の日本の排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査中の海上保安庁測量船2隻に、中国国家海洋局の海洋調査・監視船が調査の中止要求を行ったことだ。「中国の管轄水域」を主張しての威嚇である。

 海洋権益の拡大を目指す中国の海軍艦船がしきりに日本近海に出没するようになったのと比例して、尖閣海域での中国漁船による領海侵犯も急増し、海保が立ち入り検査しただけでも今年は14件にのぼる。放置できない事態だ。

 菅直人首相は尖閣の事件について「国内法にのっとって厳正に対処していく」と述べた以外に何も語っていない。中国漁船の船長を逮捕、送検した日本政府の措置は当然だが、他の乗組員14人は帰国させ、漁船も中国側に引き渡す。中国側に配慮しての措置だとすれば今後に懸念が残る。

 今後も尖閣諸島をめぐって中国側は、力を背景に勢力圏に置こうとするだろう。日本側は尖閣の守りを強化することが喫緊の課題である。以前着手したものの使用に至っていないヘリポート整備などが必要だ。日本の主権を守ることを統治者に強く求めたい。

2010.9.14 03:15








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