goo blog サービス終了のお知らせ 

美瑛の「四季」

北海道フードマイスターの宿主が綴る「今日もない物ねだり」

薄暮の奇跡、ふたたび。

2012-12-12 18:39:46 | 美瑛の風景
今日は除雪作業で新コテージの上の、ウッドデッキ部分を・・・。積雪65cmってところでしょうか?実は、より肝心なのは(少々心配なのは)、カーポートの屋根なので、ウッドデッキは1m四方も済ませたところでカーポートの上に移動しました。2~3時間かかるかなぁーと覚悟していましたが、意外にも1時間半ほどで無事終了。その勢いでウッドデッキもやればいいんだけど、やらないんだなぁーこれが・・・。

部屋に戻って薪ストーブの前で蕩けること1時間、また午後3時のマジック・アワーの序章となったのです。うーん、どうもお尻が落ち着かない。除雪作業は「また明日やろう!」と得意の先送りなのに、空が少し夕方に近づいて来た頃には、カメラ片手にクルマに乗っていました。

今日はクリスマスツリーの木を撮りに美馬牛方面まで。

行ってみると先客がいました。湘南ナンバーのフォレスター。ご夫妻が、道路から少し入った畑の手前でじっと時の来るのを待っていらっしゃいます。畑の手前って言うのが何とも嬉しくて、思わずお声掛けしてしまった・・・「いい感じですねぇ」と。するとにっこり微笑みながら「そうなんですよ」と答えてくださいましたが、その表情は寒さの中でがんばっていらっしゃるせいで、少々こわばっていました。
太陽はすでに丘の向こうに落ちて、僅かにオレンヂ色が地平線にこぼれています。目で見ている限りではとっても綺麗で素晴らしいですが、写真はどうでしょうか?湘南夫妻ほど根性のない僕は、数分のうちに10枚ほどのカットを撮り終えて撤収です。昨日と違って今日は独り占めじゃなくて良かった♪

美馬牛から四季彩の丘を越えて、拓真館、千代田の丘を経て丸山橋に来たところで急きょ再ストップです。美瑛川からもうもうと霧が上がっているじゃないですか。よく冷えた朝、ここから川面の霧を見たことは何度もあります。2月にはお客様と川霧の写真を撮って盛り上がっていました。
でも、こんな夕暮れ時に霧なんて、知りませんでした。丸山橋はクルマを停めるところが問題で、ちょっと遠い場所じゃないと危ないんですよね。そこから橋の中央部分まで行くんですが、クルマの気温計を見るとマイナス12℃です。ちょっと軽装(いちおうそれなりの上着は着ていましたが)で来たので、橋の上で写真撮っていると寒いこと、寒いこと!!!しかもすでに一番明るくして撮っても、6分の1秒くらいにしかなりません。仕方ないから橋の欄干にカメラを固定して、あー、冷たい・・・!息を止めて、そっとシャッターを押します。後でライト・ルームの露出補正で逃げることにして、マニュアルで20分の1に・・・。
もう寒くっていてもたってもいられません。今度こそ、ホントの撤収です!!!

冬の薄暮は、美しい奇跡の時間。

2012-12-12 04:22:53 | 美瑛の風景
午後から美瑛町観光協会で用件を済ませると、午後4時になっていました。外は暮れかかる時間帯。この時期、美瑛の夕方はあまりに早くてびっくりしてしまいます。一瞬もう5時半くらいだろうか?なんて考えちゃいましたが、さすがにそんなはずはなく・・・。
協会の外に出ると、駅のロータリーにはもうクリスマスツリーのイルミネーションが灯っています。寒くなって来て、家に戻って薪ストーヴの前で寛ごう、と決めていた思考回路に「方針変更」が下されたのは一瞬のこと。だって、淡い夕暮れのオレンジ色があまりに綺麗すぎるんですよね。ちょっと丘に出かけて行って、とっぷりと暮れてしまう前に景色を見ておこうっと!

ここ数日(2日間ですね)結構な雪が降りました。雪の日はもちろん空は灰色の雲が厚く垂れこめて、景色に期待はできません。で、せっせと除雪作業の繰り返し。2日間とも30cmほども積もって、除雪をまったくしていないところは今や70cmにもなろうかと言う積雪量です。これってこの時期としては断然多い。僕が北海道に来た2007年以降ですと、12月10日の積雪量は毎年10~30cm(まだ根雪になっていない年も)程度なんです。
その分今年はお天気も良くなかったわけで、こうして久しぶりに見る夕焼けが妙に嬉しくもありました。赤羽と三愛と新栄で迷いましたが、気が付くと新栄の丘の上にいます。きっと夕日が一番綺麗なんじゃないかなぁと想像して・・・。

三愛と新栄の丘は、東にも西にも眺望が開けています。西に残るオレンヂ色の夕焼けを見ながら、東にも目を向けました。今月ずっと隠れたままだった十勝岳の山々も、静かに雄姿を見せてくれています。新栄からメルヘンの丘、三愛の丘、千代田の丘を遠望して、真っ白い丘の向こうに一番星が煌めいているのも見つけました。
これは・・・、冬の美瑛のマジック・アワー。暗いところをあまり得意としない我がカメラでどこまで写るかわかりませんが、青色に染まった雪景色の美しさをぜひ見ていただきたいと思いました。

十勝岳が見えたり、見えなかったり。雪がやんで、夕焼けが見えたり見えなかったり。毎日必ずあるわけではない大パノラマの中に立ちながら、これって美瑛の奇跡だなぁー・・・と。誰もいない夕暮れの丘、僕だけの独り占めの絶景。なんだか・・・もったいない。


冬の1日。

2012-12-10 03:10:34 | 季節
今宵はこんなものでも飲みながら・・・(あー、たまには良いですねー)、疲れ切った体を休めましょう。
何?そんなに疲れるほど働いたのかって・・・?えー、もうホントに、神に誓って(それは言い過ぎか)。何しろ朝1時間半、午後2時間半で、4時間も除雪したんですから。いくら冬好き・雪大好きの僕にしてもちょっと降り過ぎです。救いは風があまり強くなかったことと、そんなに寒く無かったこと(マイナス5℃くらい)。

氷点下3℃くらいを境に雪がズシっと重くなるのでそれは勘弁して欲しいんですが、これも心配には及ばず軽い雪でした。早朝はお客様が無理なくご出発できるための除雪ですが、タイムリミットがあるので大変です。中距離走(800mとか)みたいに、全力じゃないけどけっこうフルパワー付近でガッ・ガッとやります。でも疲れるー。
お客様がお帰りになった後は、自分のペースで比較的ゆっくり・・・。これがいいんです。残念ながら昨日は除雪した端からまた積もり出すと言う始末で気分的には悲しかったでのすが、サァー・サァーっと雪を片付けて敷地部分が除雪されて行く様が何とも心地良いんです。

ちなみに雪道はこんな感じ、こんな道を普通に40~50kmでビュンビュン皆走っています。国道ではおおむね制限速度で。移住した最初の冬は、おっかなびっくりでそろそろと。きっとお邪魔な他府県ナンバー車だったに違いありません。横を軽トラのおばぁちゃまがビューンとすり抜けて行くこともありました。今でこそ流れに乗って走りますが、何と言っても慣れは禁物です。そして、これ以上出したらコントロールできなくなる、という速度域を把握できればもう大丈夫。今のタイヤは驚くほど優秀ですが、路面によっては全然止まってくれません。曲がるよりも止まる方が難しいなと思うこの頃です。ですから運転は、予測運転。あ、次の次の信号は捕まるな、とかあそこの交差点は右折車多いから塞がれる(=止まる必要あり)だな、とか・・・。いきなり「おっと止まらなくちゃ」じゃ間に合わないことの方が多い。

旭川まで買い物に出かけると、けっこう神経すり減ります。運転している最中はそれでも楽しくハンドル握っていますが、家に戻って往復60km走破した後はぐったり気分です。一番辛いケースは、薄暗い日。視界が全部明るいグレーになっちゃって、道なのかみぞなのかわからなくなってしまうんですよね。もうひとつは、強風の日。これはブリザードだぁーとか言いますが、巻き上げられる雪煙でこれまた視界がききません。北海道のドライバーは、皆さんホワイトアウトもブリザードも、目がいいのか慣れているのか、僕からしたらなんてことなく運転しているように感じます。でも、僕は手に汗握ってますよ・・・。へんなところで停車してたら、それでなくても視界悪いわけですから、ぶつけられるかもしれないですしね。

あ、そうそう、ここはしばらく前までお花畑だったんですよ。わかりますかね?移動中のクルマを停めて、背の低いひまわり畑だったところをパチリ。なんだか荒涼とした風景にも見えますが(これは旭川市内)、つい雪の積もる11月20日までは、綺麗なひまわり畑でした。

除雪を終えて、家に戻って薪ストーヴの前に陣取って、淹れたてのコーヒーを両手でカップを包みながら飲んでいると、足腰の疲れも、耳や指先の冷たさも、みるみる溶けて行くのがわかります。
冬の1日が、ゆっくり過ぎて行きます。

刺激を受けることと、宣言すること。

2012-12-08 23:06:12 | 「食」と「食材」
帰省途中でいろいろな刺激を受けながら、中でも心に響いたことの一つが「美味しいものって嬉しい」ってこと。何をいまさら・・・とおっしゃるなかれ。食べ物なんて(食事なんて)、お腹がそこそこ満たされて、必要な栄養分が摂取できればいいと思っている人だっています(もちろんどう思ったって個人の自由だと思います)。でも、僕はやっぱり美味しいものに目がないなぁーと改めて実感してしまった。ここのところ旅紀行の中でちょこちょこと書かせてもらっているのであらためてまた書くことはしませんが、とにかく美味しいものを食べて嬉しかった僕です。

で、僕のなりわい、お客様に気持ちよく、快適に、美味しく、できれば少し感動してもらってお過ごしいただくことが大切ですから、自分だけ美味しいもの食べていい気になっていちゃいけませんよね。そう反省していると、旅で受けた刺激もあって以前からやってみようと思っていたメニューの一つが目の前にイメージされます。
そんな折「あさっての夜、いただきもののお肉が食べきれないから来ない?」というお誘いに、行く・行く!と即答しつつ、僕も新メニューにトライしてみるので、実験台になってくださいね・・・とお願いしたのでした。

やってみようと心に決めたのは“ポット・パイ”。全部パイじゃなくて、スープカップで作る、スープの上にパイで蓋したやつです。今回は、テストを兼ねて夕食をお誘いくださったご近所さんが被害者になるかもしれませんが、これも運命と思って諦めていただくしかなさそうです。

あっという間に2日間が過ぎ約束の日、午後電話がかかってきました。
「今日6時半だったよね?」
「いや、確か7時だったと・・・」
「6時半にしようよ」
「でも、試作品が間に合わなさそう」
「いいよ、じゃ7時で」
ってことで、話が決まりました。すでにポットパイの上に乗せる、パイ生地は作成途中だったのです。僕がやってみたいのは、もちろんパン生地ではなく、かといって厳密なパイ生地でもなく、クロワッサンの生地なんですよね。つまりスープにクロワッサンで蓋しちゃおうと。

お料理担当のカミさんにはあれこれ無理難題をてんこ盛りにして、海老の頭でソース取った海老とホタテとほうれん草のクリームスープを作成してもらってあります。事前に冷ましておかなくちゃいけないって情報は入手済み。時計見ながらクロワッサンの生地を伸ばしてぇー、冷やしてぇー・・・。

で、早速焼き上げてみたところ・・・あー、大失敗。蓋がポンと膨らまなくちゃいけないのに、ポッチャンってな感じでスープの中に落ちてしまいました。あー、ふやけたらさらに美味しくなくなる。仕方ない、このまま持ち込んで食べてもらおう。30分早いけど・・・!

行った先で何と言われたかは想像通りです。あんたが30分早くできないって言ったからまだ準備できてないよ、ウチは。でもって、こりゃ失敗作だねー。もう少したたないとワインも冷えないし(テラスに出してありました)。そこを無理強いしてしまうのは、僕の得意科目ってわけじゃないけど、まぁ結論的にはそうなりました。
曰く、「うん、うまいよ、味はね」と。
    
1日明けた本日は、もう本番です。何と気の早い、まぁそうですよね。さすがに僕も不安で、必要数の倍だけスープを用意してもらいました。失敗したら普通のスープをいつも通り召し上がってもらえるように。さすがにポチャンをそのまま「エヘヘー、味は悪くないと思いますので・・・」と言うわけにはいきませぬ!
まずは生地をしっかり薄く延ばし、スープカップの縁は残しておいてもらった溶き卵で糊情に塗り、少し大きめの生地をしっかり張って蓋しました。ヨシ!っと心の中でつぶやくと同時に、オーヴンに入れました。200℃にて8分。

さぁーどうでしょう・・・?少々ドキドキ。
少しずつ生地に焦げ色がついてきました。ウン、いい感じ。
どうやら成功です、しめしめ!!
ピーッと焼き上がりのサインがしてオーヴンから出すと、美味しい香りが部屋中を満たします。よーし・・・。でもさぁ、ちょっとパイの蓋がでかくね?落ちるのを気にして、余寸を大きくし過ぎちゃったようです。うーん・・・。

幸い空っぽのカップが帰ってきてホッと胸をなでおろすも、次回はもう少し小さく(プラス薄く)焼き上げて、上品さも演出せねば・・・!

それにしても・・・、こうやって刺激を受けたことも「実験台になってみて」と宣言する機会があったこともホントに運が良かったです。こういう機会がなくっちゃ、いまだにトライしないまま「できたらいいな」で過ぎて行ってしまっているだけなのかもしれませんからね。


冥王星を殺したのは私です。 マイク・ブラウン(梶山 あゆみ訳)

2012-12-06 05:29:23 | 映画、音楽、本・・・
学生時代からの友人Kaze君が紹介していた本で、いつか僕も読みたいと思っていました。帰省途中のフェリーの中で時間を持て余すだろうからと持ち込んだ1冊。

僕が美瑛に移住する前年の夏、プラハで行われた国際天文学会(IAUと略されて表記されるらしいです)にて、冥王星が「惑星」ではなくなることが決議されたことは記憶していました。では、冥王星は何なんだろう・・・?そんな疑問が微かに残ったのは確かでしたが、きっと学会の決めたことだから冥王星には惑星の資格に足る何かが不足しているんだろうなぁと想像していました。と同時に、長年9個の惑星に親しんできた自分(と、おそらくはほとんどの世論)は、わざわざ格下げしなくても、そのまま特別扱いしたって不満はない(その方がむしろいい)と感じたのも事実でした。

改めてこの本を読んでみると、いくつかまったく想像できなかった面白いことがわかります。その中の一つが、科学の世界で新元素と惑星の発見が同時進行していたこと・・・?意外にも惑星発見が先行していて、冥王星(Pluto)の名は、後に発見されたプルトニュームの命名に一役買っているというわけです。

あるいは著者もそうですが、惑星ハンターたちの私生活のあれこれ。夜空を見上げて一番親しみのある天体は、断然月だと思いますが、惑星ハンターにとって月は厄介者(著作の中では「宿敵」と)。眩しすぎる月が、微細な光を頼りに探す惑星ハンターたちの邪魔をするのですが、それを幼い愛嬢にまで教えてしまうなんて、ちょっと面白いです。

知人の一人がマサチューセッツで生物の研究をしています。大学で、あるいは大規模な研究施設で科学の研究をする、という暮らしぶりは、ある面浮世離れしている世界かもしれません。でも、それとて人の暮らしには違いない・・・。著者のマイク・ブラウンは、いくつもの惑星発見をしますが(結局「惑星」の資格には届かない天体ですが)、大学教授の一面を併せ持つ著者でさえ、挫折(スランプ)とは無縁でいられません。そんな折、彼に継続の力を与えている1人は、何と彼の教える大学院生だったりします。
こういうことって日本ではあまりないですよね?大学教授が教え子に励まされるケースって。会社役員が係長に叱咤激励されているような感じもして、率直なアメリカならではの人間関係も新鮮でした。

結局冥王星は「準惑星」に落ち着きます。同時に著者の発見した複数個の天体も同じカテゴリーに区分けされ、第10惑星の発見者と言う称号は、消え去ってしましました。でも、葛藤の中で著者は、自分が発見した天体は惑星ではないと主張し、同じ理由で冥王星を惑星にしておくこともできない、という立場を貫いています。

海王星よりも外の軌道を回る惑星(があるとして)の公転周期は数百年。もはや惑星の新発見はないに等しいと言った意見が2006年にも出ていたと記憶しますが、今は地球からはるか遠くを移動中の新惑星(新しいわけではないんだけど)が接近して、発見される可能もありますよね・・・?
宇宙には、果て無い不思議がたくさん満ちています。夜空を眺めながら、星を見つめながら、勝手なことを想像してみるのって結構好きな僕です。あ、この本はぜひ一読をオススメしたいですね。Kaze君、ありがとう。