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美瑛の「四季」

北海道フードマイスターの宿主が綴る「今日もない物ねだり」

美しいテーブルのお話しです。

2012-11-04 03:19:07 | 「宿」のあれこれ
当館のダイニング(一部客室も)のテーブルは、無垢の木を使っています。ナラやクリ、トチやセンなどの、木目の美しい広葉樹の1枚板です。今年の5月にいらしたお客様が、その板に関心を持たれたのはお泊りいただいた翌日の朝食の時だったと思います。
そのご家族の皆様とはあれこれと家具や木材に関するお話をさせていただきましたが、この秋ご自宅の新築に際して、1枚板のテーブルに興味があると申し出をお受けしました。何かにつけて「申し出」には弱い僕です。が・・・、実は無垢の木の板は、手入れが少々面倒です。あまり手をかけずに放置してしまうと、間違いなく反って来るのです。木材の反りについて書き出すと果てしなくなりますので省略しますが、とにかくそのリスクのことをお話ししましたところ、それでも手に入れて大切にお手入れをして行きたい、と言われました。

そうなったら俄然お節介病に火がついてしまった僕は、以前ビジネスでしのぎを削った(つまり、切磋琢磨させていただいた素晴らしいビジネスパートナーだった)取引先に連絡を入れました。もちろん当館の板も、そこから仕入れたものです。
希望のサイズと納期を伝えると、「時間いただいて、いいものを挽いてみましょう」と・・・。ところが待てど暮らせど返事がありません。お客様には2~3か月くらいお待ちいただくこともあります。急いだって良い板が出て来るわけではないので、待つこともいい板を手に入れるための条件の1つです、とお伝えしました。それでもご新築の日はだんだん近づいてきます。さすがに僕も「おーい、まだですかー?」と急かしてみてから1週間、出て来ました、候補の板が数枚。

お客様に画像をお送りしたところ、ご家族で意見が分かれたそうですが、最終的にはご主人がお選びになったケヤキに決定。僕も持っているささやかな知識と一緒に、板が到着するときまでに用意していただきたいモノと、到着後にすぐ塗装して欲しい旨を連絡しました。

板が到着した(はずの)日から2週間ほどたった日に、美しいケヤキの板のお写真と、そのご感想がメールで届きました。曰く
「オイルの塗装はちょっぴり???でしたが、塗った瞬間から色が変わり、とても美しく仕上がりました。一緒に手伝った子供たちも、それまでと違って食べこぼしをすごく気にするようになったんです」と。押し付け大好きの僕にとって、これ以上ない嬉しい便りでした。
きっと無垢板の塗装は、疑問と不安でいっぱいだった事と思います。でも、いただいた写真を見て、あー上手く仕上げられたな、と確信しました。「木」の好きな人にこうして大切に扱っていただくことが出来てうれしい限りです!

ウチのダイニングにもうちょっとスペースがあったら、僕ももう1枚欲しいな!


薪小屋を2棟作ったものの・・・。

2012-10-27 06:49:58 | 「宿」のあれこれ
昨日に引き続き、快晴の美瑛です。
が、来る日も来る日も観光気分に浸って、あちこち回っているわけにも行かず(行きたい!のですが・・・)、差し迫った冬の準備に時間を割かなくてはなりません。快晴の美瑛のお話し(その2)は、今日・明日中にも書きますが、その前にもうひとつ駄文を記しておきます(記す必要はない、というご意見は当面却下です)。

会社勤めで最前線にいた時のことを思うと、美瑛でこうしてささやかな自営業者になる=多くのことを自分自身でやらなくちゃいけない、となります。もちろんそれは苦痛でも悩みの種でもなくて、どちらかと言えば楽しくもあり、自分を知る非常にいい機会になります。

僕はもともと細かい作業が苦手で、工作をやらされると弱り目に祟り目・・・。ちょっと器用な同僚たちにジェラシーを覚えたことは、1度や2度ではありません。一番やりきれなかった思い出は、コントラクトとして受けた商品を納品した先でトラブルに気づき、その補修に行った際のことです。補修先は福島県のとある市で、商品は病院で患者さんが入院時に利用されるものでした。設計したモノよりも2サイズほど小さい木ねじを使用してしまい、耐久性にわずかな不安があったように記憶しています。
大型の総合病院で、搬入数は500台以上もありました。商品は搬入後にすぐに利用が開始されたこともあり、病院の病室での修理になりました。本当は腕が確かな現場の人間が行けば能率的にも、出来栄え的にも間違いないのですが、彼らはラインに従事しており、何百台もある商品の対応に行かせることなどできません。すぐに事務屋を中心に修理部隊を編成することになりました。新幹線、従来線を乗り継いで僕ら4名で現場に向かうと、販売の前線部隊3名が合流してくれて、7名での修理作業に入りました。
商品はやや重く、2人1組になって作業をしました。普段あまり握ったことのない電気ドリルを手に、1台16本のネジ交換です。商品を移動できる状態にして現地の仮作業場まで運び、部品を外してねじ交換し、また正規のネジを使って部品を取り付ける作業が延々続きました。この時僕は、修理部隊の4人の中ではもちろん、現場合流の販売チーフの方たちの中でも一番不器用で作業が遅かったのです・・・。
ただし僕の作業の遅さを非難し、嘆くメンバーは1人もいませんでした。病院ではいろいろな患者さんが入院しています。癌病棟もありましたし、産科も・・・。そんな場所でご迷惑を最小限に留めながら、部品交換を一致団結して最短で終えなくてはなりませんでした。病院側から許可いただいた時間内では、当初の2泊3日コースでは収まらず、3泊4日へのスケジュール変更となりました。日が暮れて、ビジネスホテルに戻ると、くたくたになった体を寄せ合いながら、お互いをねぎらい、そして翌日の作戦に熱が入りました。作業開始半日で皮のめくれた右手人差し指は、みじめに赤く擦り剥けつづけましたが、普段仲がいいとは言えない販売最前線のリーダーの連中と、ひとつの目的に向かって一致団結できたことは望外の収穫でした。

そんなこともあったなぁーと思いつつ、僕は2つ目の薪置き場を完成させました。と同時に「思いのほか、こういう作業って好きかも!」という気分に浸っています。美瑛に来たばかりの頃、必要に迫られていくつかの工作機械(もちろん個人用の、大したものではない部類ですが)を購入しました。最初に買ったのが、手鋸(いわゆるノコギリです)と電気ドリル。電気ドリルなんて、僕に買われて可哀そうだなぁ、なーんて思ったこともないではありません。けれども北国で小さな自営業者ともなると、電気ドリルを使う機会はいくらでもあるんですよね。今から10年くらいも前に7人で総合病院の病棟で修理に明け暮れた3泊4日を昨日のことのように思い出しながら、電気ドリルを握って作業をしました。
それにしても寒くなりました。最高気温がやっと10℃。現在の美瑛は、氷点下2℃まで下がっています。そろそろ外での作業は厳しくなります。あ、あとは愛車のタイヤ交換。これもそろそろ片付けないとね・・・。

そうそう、病院で修理作業をした思い出に、この夏もうひとつ思い出が加わりました。あの時一緒に作業をしてくれた販売メンバー(営業所の所長でした)が、私と前後して会社を辞していたのです。その彼が、この夏仕事で旭川まで来たついでに、ほんの数時間ですが奥様とふたりで当館に顔を出してくれました。
思わずハグしてしまった彼は、奥様と一緒に充実した毎日を送っていらっしゃる様子でした。思えば彼も自営業者になり、そして僕もそうですが今でもお世話になった会社にはとても感謝しています。戦友・・・、何て言ったらホントの戦争体験者に「ふざけるんじゃない!」とお叱りを受けそうですが、彼が現れた瞬間そんな気持ちが胸にこみ上げました。

薪小屋を作ると、すぐにカミさんが屋根を張って薪を仕舞いました。印象としては、けっこうたいそうなモノを2つも作ったんだけど、意外と入らないねーって感じ。もう1台作らないと間に合わない気がします・・・、困った。


6月3日、パン屋さん「四季」開店しました

2012-06-05 16:07:12 | 「宿」のあれこれ
美瑛は、美し過ぎると言ってもいいほどの素晴らしい光景が、毎日のように続いています。比較的お天気も安定していて、週に1回くらいしか全貌を見せてくれない十勝岳から大雪山の山々が、くっきり見える日が続いています。
庭に目を向けると、雑草の中にいつの間にかすずらんが花をつけていました(これも雑草的ではあるんですが・・・)。どおりで爽やかで優しい香りがしたんですね。

先日パン&ケーキ教室を主宰していらっしゃるお客様が札幌からいらっしゃいました。たぶん知らないだけで(知らないのがラッキーってこと、意外とありますよね)、パンやお料理の世界で活躍されている人も、時折ご宿泊いただいているような気がしないでもありません・・・。

そんな折、僭越と言うか大胆にもと言うか、カウンターの一部にちょこっとしたパンとジャムの販売コーナーを新設しました。今年の3月末に申請した販売許可がゴールデン・ウィーク前には降りていたのですが、ジャムを少し販売しただけで、しばらくもたもたとしていたんですよね・・・。
5時半起きのタイムスケジュールを1時間前倒しして4時半に起き、就寝前に作っておいた中種(小麦と水と、酵母だけを混ぜて、発酵させておいたもの)を入れ込んで、干し葡萄の入ったライ麦パンを焼き、バターを小麦比15%(この15%が、美味しさの秘訣ですよ!)入れ込んだバターロールを焼きました。朝、2種類のパンをご用意するのはちょっぴり大変ですけれども、お出ししている僕も、なんだか豪勢でちょっと嬉しかったりします・・・。

で、もちろんご希望の方にはお売りしなくちゃいけませんから、ちょっぴりたくさん焼きました。生地380gのレーズンのライ麦を3個、バターロールは16個、ま、このあたりが朝できるいっぱいのところかなぁ・・・。
朝ごはんで食べていただいたパンを、よろしかったら(お味見もしていただいたことですので)どうでしょうか・・・?という趣旨なのですが、ありがたいことにパンもジャムもありったけのものがご購入いただけました・・・!

朝1時間早起きしてパンを焼いた甲斐がありました♪
このパンとジャムの販売コーナー、これから時々出現します。なるべく供給をがんばるつもりですが、もし売り切れてしまった際にはご容赦くださいますようお願いします。

コテージの塗装が終わりました。

2012-05-22 01:15:09 | 「宿」のあれこれ
もうのん気にやっている場合じゃありません。明日(もう今日ですが)は宿仲間の方たちと、山菜取り&渓流釣りに行くので、事実上本日が最終日なり!
何がって、コテージの塗装を自分たちでやることにしたんです。車庫の上全体を利用したデッキは、少し木材部分の腐食が気になるので、今のハイシーズン突入前に改修することにしました。それならついでに足場だけお願いして、コテージの再塗装を自分たちでやろうとなりました。

2010年、本館の再塗装を自分たちでやった時、これはこれで少なからず辛い作業でしたが、性懲りもなくまたトライすることにしたんです。本館に比べると、コテージは半分くらいの面積だから、まぁまぁ無理なくやれるだろうとか、初めての経験ではないんだから(本館をやったんだから)、勝手知ったる作業じゃないかとか、自分でやったらコストも抑えられるし傷み具合なんかも自分でわかるぞとか、あれこれいいことばっかり並べ立てて、作業スタートしたのは足場組の終わった翌日5月8日でした。
あれから小雨の降る日が続いたり、ワイン会開催に興じたり、観光協会の業務の現状を教えていただきにうかがったり、ねこむすめのコンサートに出かけたりしているうちに、瞬く間に時間は流れるもの・・・、ですねー!

前回本館をやって、よーくわかっていたことが
・最初にやる、古い塗膜剥がしが最も辛い。
・2番目にやる、窓や金具のマスキングで手を抜くと、致命的。
・高いところは、その場に立つと下から見ている以上に高くて怖い。
     →かと言ってどうしようもないんですけど・・・。
・塗料はしっかり撹拌しないと、最初は薄くて最後はどうしようもなく濃い。
・使った刷毛をシンナーに漬けて丁寧に洗浄しないと、翌日がっちり固まる。
などなど・・・。でも、一番覚えておかなくちゃいけなかった「案外時間がかかって、スケジュールより2~3日くらい遅れてしまう」が、最後に大きなダメージになって来ました。そんなわけで、昨日はふたりとも作業終了は午後8時。ほとんど真っ暗に近いまでやって、どうにかメドが立ちました。
今朝は皆既日食に気もそぞろだったのに、もうずいぶん以前のことのようにも思えて来ます。

どうにか無事に足場撤去の日までに塗装完了して、コテージも綺麗に塗り上がりました。ホッ!


美瑛から千歳に向かうには。

2012-05-18 02:58:02 | 「宿」のあれこれ
小さな用事が出来てしまい、短期間ながら実家の愛知県に戻っておりました。2泊3日の本当に短期間の帰省です。買えれば帰れば(パソコン病ですね!)帰ったで行きたいところがたくさんあるのですが、今回はそれは叶わず、伯父貴の霊前に線香を上げに行く旅でした。

名古屋の伯父貴は5年前に僕が美瑛で宿を始める時に、エールを送ってくださったひとりでした。きっと伯父貴は「俺のところに来なくていいから、しっかりがんばれー!」と言っているに決まっているんですが、他界して10日過ぎた頃になってしまいましたが時間を作って名古屋まで行き戻りしました。

今回は、名古屋紀行と言うよりは、千歳往復について記載したいと思います。美瑛・富良野から高速道路を使って千歳空港に行くルートの1つに、三笠まで下って三笠ICから高速道路を利用するルートがあります。富良野→芦別→桂沢湖→三笠と行く道は、とっても良い道で、北海道のスケールの大きな山岳ルートを高速道路並みの快適なルートをドライヴすることができます。しかも三笠からですと高速料金もかなり安くて済みますので、オススメのルートなんです。1枚目は富良野から芦別を経由したあたりの、国道沿いの3段滝。まだ桜が咲いているのがわかりますでしょうか?そして2枚目はその滝へ向かう沿道の土手に咲く、エゾエンゴサクという野の花です。

で、今回は桂沢湖まで下りて三笠に行く手前で、夕張に抜けました。札幌に行くのでしたら三笠から札幌はすぐですから夕張に行く選択肢はありませんが、千歳空港に向かうのに桂沢湖から夕張まで行く道を走るのも悪くありません。このルートも、こんなに交通量が少ないのにこんなに良い道があるんだ?と思ってしまう快適なルートです。しかも夕張ICから千歳東ICまでは、通常で900円の高速料金。さらに千歳東ICから千歳空港まで専用の準高速道路が出来ていて、9kmを千歳空港までこれまた整備された自動車専用道路を走ることができます。
そんな快適なルートを利用して、千歳まで15分の休憩を1回取って、美瑛からジャスト3時間でした。美瑛にいらっしゃるのに旭川空港の利便性は抜群ですが(クルマで20分以内です)、千歳の便数の多さも見逃せませんよね。

愛知県に戻ると狭くて交通量の多い道ばかりが印象に残りますが、北海道は本当に道路事情に恵まれているなぁと実感します。もちろん道路のための土地買収も含めて、やりやすいという点は断然あることと思いますが・・・。
率直なところ、北海道に高速道路網が必要かと言うと、僕個人はそうでもないなぁと感じるひとりです。国道はとても幅広く綺麗に整備されていて、信号も少ないです。

ところで・・・、今回初めて長距離の移動に1眼レフではなくてミラーレスのパナソニックGF2を連れて行きました。何ともコンパクトで、携帯性の良さに脱帽でした。14mm(50mm換算で28mm)の少し広角な単焦点(もちろん薄くて携行性ヨシ!)のレンズ1本でしたが、撮影旅行に出かけるのでなければ、ほぼすべてのシチュエーションで不満なく用途に間に合うと感じます。けっこう寄れますしね、この14mmは。ちょっとこだわってレンズを1本余分に持っていくとなると、1眼とのフットワークには更なる差が出ます。マイクロ4/3のあらゆる面でのコンパクトさが、すごくありがたかったです。もっとも同時に感じたのは、ファインダーが欲しい!と言うこと。ファインダーってコンサバティヴなものなのかもしれませんが、フレーミングにおいてはこれ以上のものって無いように感じました。