友人に「あなたって恋愛体質ね」と言われた。そうなんだろうか。わたしはただ男の人にときめいて、一緒に濃密な時間を過ごしたいだけ。
若い頃から彼女はたくさん恋をした。傷つけたり傷つけられたり、危ない橋を渡ったり、沼に落ちそうになったり、つきまとわれる恐怖を味わったり。
それでも懲りずに恋をし続け、結婚後も夫に気づかれないように道ならぬ恋を楽しんだ。そして、離婚。
子ども達もそれぞれに自立し、一人暮らしになった彼女は、離婚後も恋をした。
でもある日、ふっと気持ちが冷めた。「わたしって何やってるのかしら、ばかみたい。」
男なしでは生きていけない女みたいに思えて、自分が情けなくなった。そして決心する。
もう恋愛は終わり。十分すぎるくらい堪能したから。でも、染色体の異なる生き物の面白さは知っているから、これからも男性とは関わっていきたい。
そして、SNSにこんな記事を投稿した。
「男友達を募集します。恋愛感情抜きで、性的な関係も持たず、純粋に異性との友情を築きたいと思う人のみを求めています。既婚者でも、奥様に誤解されない自信のある方ならOKです。ご連絡お待ちしています。」
投稿した日に早速数人の男性から連絡がきた。翌日もまた数人、その次の日もまた数人、というように、1週間もたたないうちに10人以上の男性が彼女の記事に興味を示してくれた。
そこで、彼女は面接を実施する。直接会って本人の意思を確認するためだ。
実際会ってみると、友達といってもセフレのつもりで応募してきた人や、友達から恋人へ発展することを願っている人もいて、半数以上の人が彼女の条件に合わず、断ることになった。
そうやって一か月くらい面接を続け、この人なら安心して友情を築ける、と思える10人が確定した。そこで彼女は自分の記事を削除する。これ以上は探す必要がないから。
それから彼女の人生は大きく変わった。女友達との時間はもちろん大切、でもそれと同じくらい、男友達と一緒に過ごす時間も貴重だ。なにしろ、経歴、価値観、思考パターン、趣味嗜好がそれぞれに異なり、会うたびに彼女は刺激を受けてわくわくする。それは性的なときめきではなく、人間として魅力的な人と話をするときに得られる気分の高揚。
彼女の友人はみんな口をそろえて、「いいわねえ、あなたすごく楽しそう。若返って見えるわ。」と言う。
そりゃそうだ。料理の得意な男友達は、彼女の食べたいものをさらっと作ってくれる。ドライブ好きな男友達は、彼女の行きたいところへどこへでもつれていってくれる。山歩きの好きな男友達とは、時々山登りを楽しむ。読書の好きな男友達とは、読後感を話し合ったり、おすすめの本を紹介し合う。
本当に、それだけ。決して体の関係を求められることはない。プラトニックラブもない。大切な友達だから、お互いの意思を尊重し、信頼関係を損なわないよう気を付ける。
自分が変われたことがとても嬉しい。自信もついたし、以前のように感情の嵐に翻弄されることが少なくなった。残り少ない人生だもの、良い思い出を作って最期を飾りたい。
彼女は、10人の男友達に毎日感謝しながら眠りにつく。