Set me free!!!

storytellerです。本当に短い物語を書いたり、思い出話や日常の諸々について綴ります。

『天路』リービ英雄

2024-05-09 08:20:30 | 読書

母国の大陸(アメリカ)を離れ島国(日本)に移住した作家が、中国の友人に誘われて、「大西部」へと旅に出かける。ブルーバードを延々走らせ、中国語を漢話と呼ぶ人達が暮らす地へと。蔵文を話す蔵民。チベットだ。

作家である「かれ」は、母親を亡くした悲しみが癒えないまま、旅を続ける。友人が「天路」と呼ぶ、チベット高原の道を行く。

思うように言葉が通じないもどかしさ。それでも、日本語と中国語と、教科書で少しだけ覚えたチベット語を混ぜながら、手ぶり身振りで蔵民と話をする「かれ」。

紀行文のような詳細な描写が旅情をそそる。思いがけず憧れのチベットを著者と共に旅することができて、わたしは嬉しくなった。

五体投地を繰り返す信者たちの姿が目に映る。標高4000メートルに近い土地で高山病に苦しむ。大きな寺院を訪れ、信者たちと一緒にマニ車を廻す。誰も訪れない寺院で活仏に会い、亡き母の話をする。行く先々での「かれ」の言動を、わたしはそばで見守る。息をひそめて。

光の描写が多いのも、印象に残っている。チベットの強烈な光だけでなく、旅の途中で思い出す日本のやわらかな光や、「かれ」が幼い頃住んでいた亜熱帯の島(台湾)の強い光。

谷間の上に太陽の光が差し、薄緑の草地が色を変えて、宮殿の黄金の床を想わせるように照り輝いていた。(129ページ)

それにしても。母語でない日本語で小説を書くというのは、どんな作業だろう。わたしには想像もつかない。アメリカで生まれ、少年時代は台湾・香港で過ごし、40歳近くになって日本に定住した著者。言語感覚が非常に優れている人なのだろう。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ponkd7171)
2024-05-10 20:55:12
storytellerさーん
今晩は^ - ^
チベットの乾いた空気を感じました〜
情景描写が素敵な作家さんなのでしょうね🖋️
一緒に旅しているかのように感じられる文章って本当にワクワクしますね♪
何だか私にも映像が〜笑
乾いた山の上に色とりどりのある旗が風に揺れ〜エンジ色の袈裟の修行僧にバター茶を振る舞われる☕️
あ〜惹かれます〜
ご紹介いただきありがとうございます😊
今、私はなかなか読書が出来ず〜早く人間になりた〜いならぬ、もう少し時間が欲し〜い!頭働かずですみません!
storytellerさんはとっても知的なお方だなあ〜と今、改めて思う〜ひいこでありました💓🥰
返信する
乾いた空気 (storyteller)
2024-05-10 21:30:43
ああ、ひいこさま、とても嬉しいです。
読んでもいない小説が映像となって見えてくる。
凄すぎます!そうなんです、乾いた空気、高山、色とりどりの旗、修行僧。
ああ、なんという想像力!
おそらく、ひいこさんがいらしたことのあるネパールに
共通するものがあるでしょうね。

ひいこさんはフルタイム勤務だからお忙しいのも当然!
ブログ更新がしばらく無いので、ご多忙なのだろうな、と
思いつつ、寂しい気持ちもしています。
決して急かさずプレッシャーをかけず、でも次なる記事を心待ちにしているわたしなのでした!

コメントありがとうございました♪
返信する

コメントを投稿