あれが本物なのかどうか、今でもどちらとも確信が持てない。
ちょうど１年ほど前、ネットで知り合った男性の部屋のパソコンでそれを見た。
その映像は、１０畳ほどの殺風景な部屋に白いビキニだけ着けた男の人が正座しているところから始まる。年齢は２０代後半、髪は黒くて短め。体は大柄ではないがそれなりに鍛えているような感じ。厚い胸板とうっすら割れた腹筋が印象的だった。暗い部屋に置かれた強い照明のせいで肌は白く見えた。その人は緊張しているようだった。
ひと昔前の８ミリビデオで撮ったような映像は、男の人の真正面と、左斜め前、手持ちらしい動くカメラの３つの映像を編集してあった。
やがて、黒い服黒い覆面の男が正座した男の人の前に白木の小刀のようなものを置く。男の人は軽くおじぎし、抜き身の小刀を手に執り、両手で逆手に持った。一度みぞおちにあてがうような仕草をするが、すぐにやめ小刀を握ったまましばらく動かなくなった。目を閉じたり、体全体で深い呼吸をしたりしながら気持ちを落ち着かせているようだった。
そうやって５分ぐらい経った後、誰に向かってともなくうなづくと、唐突に小刀をみぞおちに突き立てた。男の人は少しだけ呻いたが表情はそれほど苦しそうではない。両手で握った小刀で下へ下へ押し切っていく。歯を食いしばり肩で大きく息をしながらゆっくりと腹を縦に裂いていく。部屋には男の人の息遣いだけが反響している。
最初出てくる血の量は少なかったが、ちょっとしてから突然大量の血が噴出し、下腹や薄いビキニを濡らし床にも溢れた。男の人はうなだれたようになり、手が止まってしまった。すぐに２人の男が出てきて両側から男の人を支える。かすかに何か呟き、意識はあるようだったが、小刀を握る手に力は失くなっている。向かって左側にいる男が、臍の辺りに突き立ったままの小刀を片手で握り力いっぱい押し下げた。男の人が短く声をあげ、体が一回波打つ。すると股間まで開いた裂けめから、ピンクか紫色の腸らしきものがぷりぷり出てきた。
その後しばらく男の人は両脇を抱えられ、頭を横に傾けたまま口をパクパクさせ虚空を見つめていたが、やがて少しも動かなくなった。手持ちのカメラが近づき、床にできた血溜りや股間にたまった内臓、裂かれた腹、動かない蒼白な顔を写したあと映像は切れた。
