続・切腹ごっこ

~当ブログは更新を終了しました~

新マンガ日本史39

2011-11-09 | ★レビュー(本)

 週刊新マンガ日本史39号「白虎隊」を買った。新マンガ日本史とは、朝日新聞社発行の分冊百科タイプの週刊誌。日本史上の偉人の物語を1冊につき1人(もしくは1集団)ずつマンガで描いている。マンガの“マンガ日本史”シリーズと合わせて100冊発行されている。

 39号で特集されているのは篠田義三郎ら白虎隊士たちと山本八重。マンガは、「クロノクルセイド」等の作者森山大輔が担当。今どきのキレイな絵柄で、白虎隊の奮戦とその最期が描かれている。戦いのシーンはわりと迫力がある。
 山本八重は、会津藩士の娘で会津若松の鶴ヶ城籠城戦では自ら銃をとって戦い、幕末のジャンヌダルクとも言われる女性。のちに、夫の新島襄とともに同志社大学の前身を創設する。再来年2013年の大河ドラマの主人公。

 あまり期待していたわけではなかったけど、やっぱり切腹・自刃の直接的な画は描かれていない。まともに描いて欲しいけど、まぁ一般的には必ずしも描く必要のない画なんだろう。描かなくても悲劇性は伝わるだろうし。
 マンガ以外の解説やコラムの内容はほぼ知っているものばかりだった。

 最初の“マンガ日本史”シリーズに特集されている50組の偉人の選抜は編集者が行ったんだと思うが、“新マンガ日本史”シリーズの50組は前シリーズの読者らに取ったアンケートの結果が反映されているらしい。白虎隊も、「好きな日本史上の人物」アンケートの結果選抜されたようだ。
 両シリーズで特集されている100組のことを詳しく知っていれば日本史はほとんど網羅できるんじゃないだろうか。もし“新新”マンガ日本史シリーズができるとすれば、けっこうマニアックな人選になってくるかもしれない。
 日蓮、後醍醐天皇、大石内蔵助(赤穂浪士)、正岡子規…、文化人とか近現代の人物がもっといてもいい気がするし。
 最期切腹して果てる人物ばかり50選、100選、調べてみるのも面白いかも。

新マンガ日本史 39号
朝日新聞出版
朝日新聞出版
学習まんが少年少女日本の歴史(23冊セット)
小学館
小学館

「櫻 VOL.2」その弐

2010-07-14 | ★レビュー(本)
 前前回の続き。

 2.切腹を題材にした小説の紹介
 尾中作太郎という人が昭和36年に「白妙」(雑誌?)に発表した「東京女性切腹倶楽部」という作品。

 ―若い娘や未亡人たちが、秘密厳守を前提に集まる倶楽部。毎週1日だけ集まって切腹画を見せ合ったり、切腹フォトを撮り合ったりする。そして会員の中から毎月1人、投票で決まった女性が切腹自殺を遂げる。切腹の場となっている地下室には、今までここで果てていった女性たちの切腹している途中の写真が掲げられている。写真は、セーラー服姿での一文字、和服姿の立ち腹、ブラジャーとパンティ姿の二文字腹など、様々。
 今日は、幸子という18歳の少女が全裸で切腹自殺する。幸子は先月の投票でT字に切腹することが決定し、1ヶ月間の猶予期間を経た後、覚悟が揺らがなかったので予定通り今日切腹することになった。ウイスキーで別れの盃を交わした後、幸子は白鞘の短刀でT字に切腹、最期の瞬間は1枚の写真として残った。

 著者が小学5年の時、仲良しの少女の姉がT字に腹を切って自殺するという事件があったのだという。それ以来、その少女と「お姉さんのように」と下腹を切る遊びをするようになったそうだ。大人になってからその事を思い出したことがこの短編小説を書くきっかけの一つになったのだとか。
 中康氏は、この小説の中では倶楽部の女性たちが切腹する理由について言及されていないことを評価している。

3.論考
 (1)切腹の描写とその用語の解説
 切腹に関する読み物に出てくる単語などの分類と解説。下腹、鳩尾などの腹部の名称。鮮血、細腸などの内臓の名称。切り回す、貫くなど動作の表現。ずぶり、キリキリなど動作の形容。悶える、呻吟など苦痛の表現。悶死、知死期など死の表現。
 (2)大正末期の新聞記事に見る切腹例
 どれぐらいの期間の記事を集めたものか分からないが、切腹という形の自殺方法を選んだ人が多いなという印象。本人は「切腹」と意識せず、ただ錯乱状態の中で刃物を胴体に突き立てただけ、という例もあるだろうけど。
 (3)切腹雑考
 介錯や思い指しなどの論考。文章から、著者は少年(美少年)の切腹が好きなんじゃないかと思えてくる。自分がその部分に特に注目しているだけだろうか?
 (4)アンケート
 切腹に興味ある若い女性にとったアンケート。
 Q.演劇、TVドラマ、映画、文芸で切腹について感動した例は?また史上の人物は?などというアンケートが16問ほど。
 応えとしては…、A.白虎隊の少年たちの切腹場面は感動的。(大学18歳) A.昭和60年12月30日31日の忠臣蔵浅野内匠頭の切腹。切腹ののち、青い画面に白い桜が大きく映り散ってゆくのが象徴的できれい。(高校17歳)などなど。この冊子が発行されたのが1986年らしいので、この時期の高校生ということは現在の40歳ぐらいということか。
 
 いろんな企画があって読み物として面白かった。退屈せずに一気に最後まで読めてしまった。

スカル&ボーンズ―秘密クラブは権力への通路
Alexandra Robbins,太田 龍
成甲書房
NHK「その時歴史が動いた」コミック版 忠臣蔵編 (ホーム社漫画文庫)
NHK「その時歴史が動いた」取材班,谷口 敬,ながい のりあき,小川 おさむ
ホーム社

「櫻 VOL.2」

2010-07-10 | ★レビュー(本)
引き続き、以前に戴いた書籍群の中から「櫻 VOL.2」(1986年発行)を紹介する。

 これは切腹研究の大家、中康弘通氏が切腹の歴史・文芸・芸能の研究伝承を意図して発刊されたそうだ。VOL.1は手元にない。
 内容は、1.中康氏の創作した短編小説、2.その他作者の作品紹介、3.切腹の描写と用語の解説、4.アンケート、5.あとがき、となっている。

 1.短編小説「冷たい夜」
 17歳の若原咲子は、慰問公演で宝塚歌劇の少女たちが演じた「少年白虎隊」の切腹の場面が忘れられずにいた。もしアメリカ軍と本土決戦になり最期の時が来たら、自分もあの少女たちのようにお腹を切りたいと思っていた。
 咲子は軍需工場の監督官である若い陸軍将校の家に住み込み、家事の手伝いをすることになった。咲子はすぐにでも自分の体は独身の中尉に奪われるものと思っていたが、そんな気配は全くなかった。やがて終戦になり、ただ一夜だけ中尉は咲子を抱き、早朝には褌一枚だけの裸身で切腹して果てていた。あとには咲子宛ての遺書と通帳と短刀が遺された。
 戦時中に父母も兄も行方知れずとなり、身寄りが無くなった咲子は兄の友人と結婚したが、ほどなくして夫は闇市のいざこざから腹を刺されてあっけなく死んだ。自分と関係した男が二人とも腹を刺して死んだことに何か因縁めいたものを咲子は感じた。
 色街で働き始めた咲子は、30歳になる前に中尉が遺してくれた短刀で切腹すると決めていた。咲子は、ある兄妹の切腹に立ち会ったという男と出会う。胸を患った兄は余命幾ばくもなく、妹が進駐軍相手に体を売って生活をしてしたが、二人で死ぬと決めたという。冬の満月の夜、河川敷で、先に兄が、続いて妹が腹を切り、二人とも介錯もなく逝った。友人である男は最後までそれを見守った。
 咲子はこの男に自分の最期に立ち会って欲しいと思い、数年前に兄妹が切腹した河川敷で、切腹した日付の日に自分も切腹して死ぬと告げた。
 当日の夜、男は約束の場所に現れなかったが咲子は気にしていなかった。咲子は白虎隊を演じた少女たち、そして監督官の中尉のことを思い出していた。「監督官どの、お側へ参ります」白いブラウスをたくしあげ、短刀を左下腹に押し込んだ。血がずらした下着に飛ぶ。腹を切りたいから死ぬという思いを貫き、咲子はその人生で一番充実した瞬間を通り過ぎた。
 最期を見届けるはずだった男は、約束の場所に急ぐ途中バイク事故に遭い人事不省で病院に運ばれていた。


 …ちなみに男が死んだという記述はない。この物語の真髄は最後の「死にたいから腹を切るのではなく、腹を切りたいから死ぬ…云々」という一文に尽きると思う。なぜなのか理由は分からないが切腹に魅入られた女性が、自分の夢である切腹を実行に移す。将来を悲観したのではなく、生きることに何の未練もなく、ただ切腹したい、と。擬似的なものではなく本物の。
 現代の宝塚歌劇で白虎隊をテーマにした演目をやることはあるんだろうか?忠臣蔵をやってるのをTVで見たことはあるけど。もしやってるんなら見に行ってみたいな。

続きは次回の記事で。

TAKARAZUKA REVUE 2010
宝塚ムック
阪急コミュニケーションズ
短刀9寸(黒塗り)
岐阜県関市
岐阜県関市

「日本お伽噺 白虎隊」

2010-07-06 | ★レビュー(本)

 前回に続き、3年前に戴いた書籍の中の一冊を紹介する。

 11年前に亡くなったうちのお祖父ちゃんはたしか明治42年生まれだった。この冊子はお祖父ちゃんが生まれるさらに8年前に発行されたということになる。凄く貴重な物なんじゃないだろうか。うちには江戸時代からある蔵みたいなもんはないので、この本より古い物って他にあんまり無いだろう。
 藁半紙みたいな薄いページをめくるとパリパリ音がして、昔うちにあった「子供文学全集」っていう分厚くて古い本と同じ匂いがする。

 “諸君!諸君が初めて國民軍に成るのは、十七歳の時ですが眞個(ほんと)に兵籍に入れられるのは、満廿一歳の時でありましやう。
 其処でこの白虎隊の、勇壮活発なる少年達が、己に兵式の進退に通じて、初陣の功名を為た揚句、あの飯盛山の頂邊で、勇ましい最後を遂げたのは、實に何歳の時でありましたらう?”
 (↑当時の難しい漢字が見当たらないので現在の漢字で表記してる部分もあります)

 …という書き出しで始まる白虎隊の読み物。字の大きさや文章の簡単さ、漢字全てに仮名が振ってあることを考えると小学校低学年向けの冊子だと思われる。
 大政奉還や鳥羽伏見の戦い、上野の彰義隊の話を経て会津戦争へ。鶴ヶ城が一ヶ月の籠城に耐えたこと、白虎隊の少年たちが勇ましく戦い立派な最期を遂げたことが、難しい単語を使わず簡単な文章で書かれている。戦いの場面の文章はテンポが良く、声に出して読むと講談調になりそうな感じだ。

 発行年の明治34年とは、20世紀最初の年。昭和天皇が生まれた年で、与謝野晶子が「みだれ髪」を発表した年。ノーベル賞が創設され、ABO式血液型が発見された年でもあるそうだ。血液型による性格判断は少なくともこの年より以前にはなかったのだ。
 この頃には白虎隊の逸話は一般に知られていて、賊軍という扱いも無くなっているようだ。逆に若年ながら大人以上の働きをしたと誉め讃えられている。
 文章中、飯盛山で自刃したのがなぜか19人となっている。蘇生した飯沼貞吉(文章中では改名後の貞雄となっている)も数に入っているので、誰か1人名前が抜け落ちているようだ。19人の名前が書いてあるので調べてみると、津田捨蔵の名前が無かった。自刃した者としてまだ認識されていなかったのだろうか。

 冊子の後半は兎の親子と白鷺を擬人化した文字通りのお伽噺が掲載されている。

幕末烈士伝チョコ BOX (食玩)
バンダイ
バンダイ
幕末・明治美人帖 (新人物文庫)
ポーラ研究所
新人物往来社

「武士道無惨伝」

2010-07-03 | ★レビュー(本)
 嗚呼、いつの間にか7月だ。今年がもう半分過ぎてしまった。

 「武士道無惨伝」(平田弘史)という漫画を読んだ。以前、プレゼントされた「切腹」や「白虎隊」に関係する書籍のうちの一冊だ(
一覧はこちら⇒)。著者平田弘史については説明する必要もないと思う。本物の戦国時代・江戸時代はこんなんだったんじゃないだろうか、と思えるほど実写時代劇よりも重厚で迫力のある絵を描く御仁。
 このハードカバーの本の表紙には上半身もろ肌脱ぎになった壮年の武士が両手で掴んだ大刀で立腹を切っている姿が描かれている(凄い表紙^^;)。
 9話の短編が収録されており、どの話も武士の生きざま(というか死にざま)の凄まじさを感じさせる。そして必ずと言っていいほど腹を切る場面がある。少年が切腹する場面のある話も3話あるが、その中の一つのあらすじを紹介する。

「悲愴の父」
 病床の若君鶴千代の傍に仕える市之丞は、「若君が他界あそばされたならば追い腹を切る覚悟」と父新九郎に告げる。新九郎は一計を案じ、市之丞が心労から発狂したことにして、抵抗する息子を無理矢理座敷牢に閉じ込める。
 「市之丞、発狂」の報告に不審を抱いた家老松倉民部は、篠宮小四郎に確かめてくるように命じる。切れ者の小四郎は新九郎の嘘を即刻見抜き、新九郎は老いてから授かった一粒だねを失いたくないと白状する。小四郎は新九郎に同情し、市之丞は確かに発狂していたと報告。さらに、鶴千代が十四歳の若さで他界すると、「追い腹無用である」と藩主右京太夫に宣言させる。
 しかしそれを快く思わない家老松倉民部はその触れを握り潰す。そのせいで追い腹を切る者が出てしまう。小四郎は自ら馬を走らせて「追い腹無用!」と各家を触れて回るが、臆病者呼ばわりされるばかりで追い腹を切る者が続出。鶴千代に仕えた息子に無理矢理腹を切らせる父親まで現れる。
 そんな中、市之丞発狂は嘘ではないかと新九郎への風当たりは強くなる。新九郎は小四郎に伴われて藩主右京太夫に全てを打ち明けるが、右京太夫は新九郎を責めることはなかった。新九郎が家に帰ると市之丞が座敷牢を抜け出し刀を振り回す騒ぎを起こしていた。「市之丞発狂は真であった」という噂が広まり、新九郎を責める者はいなくなる。
 追い腹騒動は鎮静化し、新九郎、市之丞父子に静かな日々が訪れたのだが…、市之丞はいつか鶴千代が来てくれると信じ庭を掃き続ける。


 物語はまさに“無惨”といった感じだ。市之丞は鶴千代に会えぬ苦しみにとうとう精神を病んでしまった。
 この話には前髪を落とす前の少年の切腹が二場面描かれている。この少年の髪型は
角前髪と呼ばれるものなんだろうか?この髪形の生首というのは、すぐに「=少年」と断定できるだけに凄惨さを増幅させる。
 介錯を受けて転がる小さな首や、倒れた華奢な体が何とも言えず萌える。

※戴いた切腹・白虎隊関係の書籍の一覧を掲載した記事「切腹100年史」は、
☆プロフィールのカテゴリーに移動しました。

武士道無惨伝 (キングシリーズ 漫画スーパーワイド)
平田 弘史
小池書院
インスタント若衆カツラ
丸惣
丸惣

デビルマン(原作)

2010-03-28 | ★レビュー(本)
永井豪の「デビルマン」を読んだ。
テレビアニメ版は見たことがない。原作とテレビ版は内容がぜんぜん違うようだが、原作や原作に忠実なOVAを見た後ではこれ以外のものは想像できない。

※以下ネタバレを含みます。


 デビルマンが誕生してから、何回かのデーモンたちの戦いを描いた前半(という区切り方がもともとあるわけじゃないんだけど)。前半は、主人公らしい主人公が人間を守るため悪役たちと戦う…という感じ。
 そして世界が終末に向かう後半。個々にデビルマンを襲っていたデーモンたちが、魔王ゼノンの命令のもと計画的に人類全体を襲い始める。そして人類はパニックに陥り、たった20年で全滅してしまう。こうなるだろう、またはこうはならないだろうと思っていたことが色々裏切られて面白い。

 デーモンたちとは何者なのか? 人類とは異質なデーモンが、どうやって人類の「恐怖心」という弱点を知ったのか? なせデーモンたちの攻撃が始まる前に不動明はデビルマンという存在になったのか?
 そういったことが、最後に明かされていく。

 不動明をデーモンと合体させデビルマンを誕生させた飛鳥了という人間は、実はデーモンたちの大ボス「サタン」が転生(?)した姿だった。物語の冒頭デビルマンを誕生させた段階では、了は自分がサタンであるということを自覚していない。この段階では学者である父の遺産をもとに、復活しつつあるデーモンたちに人類が対抗する手段を真剣に探っている。
 物語の後半、人類への総攻撃が始まった時には、了はデビルマンに勝ち目のない戦いを避けさせ、その力を温存させようとする。了はまだ自覚していなかったが、それは来るべき人類反抗の時のためではなく、デビルマン自体を生き残らせるためだった。
 人類が疑心暗鬼になり同士討ちで大混乱に陥る中、了は自分が危惧していたとおりに物事が進んでいくことに違和感を覚える。その了のもとへ、デーモンたちからの迎えの使者が来る。了(サタン)は、偽の記憶を自らに埋め込み人類の弱点を知るために人間として暮らしていたことを思い出す。そしてサタンとして覚醒する。
 サタンが了という人間として暮らす中でデーモンに対して抱く恐怖・危惧することを、配下である魔王ゼノンが読みとり、その恐怖を具現化させる形でデーモンたちを動かす。そうやってデーモンたちの人類への攻撃は行われてきたのだ。
 ではなぜサタン(了)は、デーモンに楯突く存在であるデビルマンをわざわざ誕生させてしまったのか?それは「人類をデーモンの攻撃から守るため」という了の意志ではなく、不動明という人間を人類絶滅後もただ一人生き残らせたいというサタンの意志であった。サタンはなぜ不動明を生き残らせようとしたかというと…彼を愛してしまったからである、というオチ(?)がつくのだが。

 サタンは不動明を愛しており、ともに生きていきたいと思っているのだが、明は人類を(ガールフレンドである牧村美樹を)滅ぼしたサタンを許すことはできず、二人は戦うことになる。
 壮絶な戦いの末、海に浮かぶ小さな岩の上で(もしかしたら地球の陸地はそこ以外は破壊しつくされたのかもしれない)二人が横たわっている。サタンは、かつて神がデーモンを滅ぼそうとしたように、デーモンが人類を滅ぼしてしまったことを謝る。瀕死の重傷を負っていた明は、それに応えることなく永劫のねむりについた。


 サタン(了)が不動明を愛しているということを頭の隅に置きながら読んでみると、ムフフwと思えるところがいくつかある。了の、明に対する台詞も違ってみえる。デビルマンの物語自体が壮大な三角関係の話だったんじゃないかと思えたり…。
 特に「新デビルマン」の5話分は、いやにBLちっくなシーンが多い。

デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫
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「シドニアの騎士」

2010-03-06 | ★レビュー(本)

 「シドニアの騎士」(弐瓶勉)、読んだ。前に読んだ「BLAME!」と比べると線がだいぶスッキリしてる。

※以下、多少ネタバレ含みます。

 ―遠い未来、正体不明で“対話不能”の敵との戦いを続ける人類。地球はすでに亡く、超巨大宇宙船で脱出した人類(の一部)はロボット兵器に乗り唯一の必勝武器を使って敵である宇宙生物と戦う。特異体質の主人公♂はいきなりパイロットに抜擢されるが、敵の撃破に成功する。

 敵の宇宙生物(?)はすぐ変体するし、取り込んだモノの見た目や能力をコピーするし、かなりの強敵らしく人類側の犠牲は大きい。パイロットに選ばれた若者たち(男女混合)はサクサク死んでいく。
 正体不明の敵の強大さとか人類の切羽詰まった感じとか、若いパイロットが戦闘に駆り出される感じは「
トップをねらえ!」を思い出した。
 ストーリーの中でキャラクターが死ぬ前に生き生きしてるほど、アッサリ死んだときに萌える。アッサリっていうのは、何か大きなものの犠牲になったりドラマチックな別れのシーンがあったりするんじゃなく、突発的な事故のように悲鳴を上げるヒマもなく…という感じで。致死的なダメージを受けた後、そのままの状態で長く悶え苦しむっていうシチューションも好きだ。

 主人公たちの名前は和風だ。でも現代よくあるような名前は少ない。他の人間と比べると特異体質な主人公だが、主人公以外も光合成ができたり男女以外の性だったりクローンだったりする。男でも女でもなく見た目も中性的な人が身近にいたら、自分はどう対応するだろう?なんとなく、その特徴だけで好きになってしまいそうだ。

 主人公たちは対話不能の相手といつか対話できるようになるんだろうか。

シドニアの騎士 1 (アフタヌーンKC)
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☆賀正☆

2010-01-01 | ★レビュー(本)

 新年あけましておめでとうございます!
 今年もよろしくです☆

 大晦日からなんとなく風邪っぽい状態が続いてて、口内炎もなかなか治らなくて、御節も雑煮も美味しく食べられないというテンション下がる年始だけど。今年も自分にとって、皆々様にとって、全世界にとってイイ年になりますように。

 年末に買った「モンスターハンターイラストレーションズ」がイイ買い物だった。このブログのアフィリエイトで1500円ちょっとのギフト権がもらえたから、それを使って安く購入できた。初作のモンハン無印からPSP用ソフトのモンハンP2Gまでの設定画集。カラーとモノクロの2冊セット。
 ゲームが作られ始める以前の世界観のイラストとか、まだ正式名称がない段階のモンスターのイラストがかっこいい。たくさんの候補の中からゲームに登場するモンスターや装備が選ばれたんだな~ これ見てると、ゲームやってる途中にもっと細部を見ないともったいないと思えてくる。モンスターって、倒した後倒れて動かなくなった時ぐらいしかじっくり見る機会ってないもんな。
 「フロンティア」と「3」以外の全シリーズのモンスターや装備画や、ゲームに使われなかったイラスト等々を載せてるから一つ一つに割くページ数は少なめ。装備画は全部載ってるわけじゃないようだ。他の画集も欲しくなってきた。

 今年は年賀絵のイイネタが思い浮かばなくて公開できるものがないけど…。今年は来年以上にイラストを描ける年にしたいな。

モンスターハンターイラストレーションズ (カプコンオフィシャルブックス)
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ハンター大全―モンスターハンター (Enterbrain mook)
王立古生物書士隊
エンターブレイン
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「衣服のシワ上達ガイド」

2009-12-01 | ★レビュー(本)
「マンガ作画資料 写真と図説でわかる衣服のシワ上達ガイド」という本の感想。

 この本は主に、女子と男子の制服(ブレザー・セーラー服・学ラン・セーター・スラックス・スカート等)のシワのでき方を解説している。ワイシャツ・ジャケット等を着て色んな姿勢をした時に、素材によってどこにどんなシワができ、シルエットがどう変わり、その中のどの線を選んで描けばそれっぽく見えるのか。モデルの写真と、それに重ねて描かれたイラスト用の線を使って解説する。
 広い意味で言えば制服の描き方なのだが、解説しているのはシワについてだけだ。衣服はシワの集合体で、シワを上手く描ければ線画段階の衣服はそれっぽく見える、ということなのかもしれない。

 ワイシャツに関してはこの本に描かれている内容の半分くらいのことはできているんじゃないかと思う。「好きこそモノの~」というか何というか、何枚もワイシャツ姿を描いてきただけのことはある(と思う)。ただやっぱりあんまり描いたことのない姿勢でできるシワは、リアルに描けてなかった気もする。腕を振り上げても袖口が下がってなかったり、膝を折ってもスラックスのスソが上がってなかったり、見返してみるとその他にもリアルじゃないところは多々あった。
 ジャケット姿やセーター姿はほとんど描いたことがないので、知らないこと気がつかなかったことばかりだった。シャツとはシワのでき方もシルエットの変化も全然違う。これらの写真も多いので、これから描く際には参考にできそうだ。

 全体の3割ぐらいはTシャツやパーカー、デニム等のカジュアルな服の解説になっている。欲を言えばもっと多様な姿勢やアングルの写真が欲しかった。載っている写真をもとにして応用すればいいのかもしれないけど。

 制服の写真が主だったのは嬉しかったが、ワイシャツフェチの個人的意見としては、もうちょっとそそられるセクシーなワイシャツ姿を撮って欲しかったな~という気もする。本来の目的からは多少逸れるかもしれないけど。そういえば胸元を肌蹴たような写真はなかったな… 腹に刃物を突き立てた時にできるシワを解説したページも欲しかった。

写真と図解でわかる 衣服のシワ上達ガイド (マンガ作画資料)
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ボークス
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士魂燃ゆ

2009-08-08 | ★レビュー(本)

 「白虎隊 漫画」で検索かけたら「会津白虎隊異聞 士魂燃ゆ(作・司敬 画・杉浦要之介)日本文芸社2004年発行」というマンガが見つかった。「僅か十五~十七歳で飯盛山に散った白虎隊の少年たち。しかし、そんな白虎戦士たちにも青春があった。いつの時代も変わらぬ青春が―」という文句に惹かれ、内容が分からないままAmazonで購入。

 白虎隊市中二番隊(上級武士の子弟からなる隊)の教導・篠田儀三郎を主人公に、白虎隊士の少年時代から自刃・会津戦争終結までを描いている。
 このマンガには実在の白虎隊士の他に、坂権之介という青年が登場する。白虎隊の少年たちより年長だが、何かにつけて儀三郎たちに難癖をつけてくる。しかし会津戦争が始まると朱雀隊に配属された坂は、白虎隊と協力して新政府軍と戦うことになる。戦いの中、坂と儀三郎たちははぐれ、儀三郎は自刃の地飯盛山中腹へと向かってしまう‥。
 白虎隊士の少年時代の逸話は、その人の義理堅さや勇気を称えるような話が多い。しかしこのマンガのような、若気の至り的な決闘や意地の張り合いみたいなことも色恋話も数多くあったんだろうと思えてくる。
 ‥もしかしたら隊士同士の淡い恋とか、三角関係とか、精子の飛ばしあいっことか、チ○ポの擦り合いとか、乱交合戦とか、楠木正行・正時兄弟を真似た切腹ごっことか‥、いろんな青春があったのかもしれない。

※画像はgooブログの要請により削除しました。

 絵柄は成人
誌っぽい感じ。白虎隊の少年たちの体が逞し過ぎる気もするが、こういうの嫌いじゃない。自刃シーンはもろ肌を脱いでキレイに割れた腹筋に刀を突き刺す、という画が多い。横一文字に切り裂いているような画はない。腹に刀を突き刺す瞬間、「おきよっ!」「さらばおみよ!!」と恋人の名前を叫んでいるのが青春しててイイ。小さくではあるが、介錯されて胴体と首が離れた画も描かれている。

 白虎隊の漫画ってときどき描かれてるようだ。この漫画も5年前だから2007年のテレ朝版「白虎隊」とは無関係だろうし。どういうきっかけで描かれたんだろう?
 白虎隊の漫画を全部揃えたいな。できれば自刃シーンを描いた絵とかイラストなんかも集めたい。

士魂燃ゆ (ニチブンコミックス)
杉浦 要之介
日本文芸社
会津という神話―“二つの戦後”をめぐる“死者の政治学” (MINERVA人文・社会科学叢書)
田中 悟
ミネルヴァ書房

SC-1グランプリ

2009-07-08 | ★レビュー(本)
 前回の記事で紹介した「コミック乱ツインズ 戦国武将列伝 2009年6月号」の“SC-1グランプリ”。第一回のテーマは「切腹」。
 以下↓ネタばれと感想を。

 EntryNo.1「切腹」
 関ヶ原‥一人の敵将の介錯をした男。自分の首をくれてやるかわりに敵将が男に誓わせた約定とは‥。敵将は大谷刑部吉継の腹心湯浅五助隆貞である。男は湯浅五助の首を大手柄として褒められるが、未だ見つからない大谷刑部の首のありかについては知らぬ存ぜぬを貫きとおす。男が湯浅五助の首と引き換えに誓った約定とは「大谷刑部の首を一目に晒さぬこと」であった。
 大谷刑部はハンセン病を患っていたと言われており、生前も頭巾で顔を隠していたという。大河ドラマ等で、関ヶ原の合戦の場面で白い頭巾で目以外を隠してる人がいたら、それは多分大谷刑部。

 EntryNo.2「切腹 ~はらきり女将~」
 近頃評判のはらきり女将。借財を返すかわりに自分が腹を切るからそれで済ませろと店先で凄む困った人。今日もいつもの調子で白装束の前を寛げ短刀をちらつかせて凄んでいると‥、「女人の身ながらその意気や良し!」と一人の侍が介錯を申し出て女将に詰め寄る。女将は平謝りしてすごすごと退散してしまう。喜んだ店の主人は侍にいくらかの礼金を渡す。―しかし、実は‥(あとは想像してみて下さい)。

 EntryNo.3「切腹 ~松五郎日記~」
 物凄い面体の男(というかキャラクター)、殿様の御前で脇差にて見事搔っ捌くという。ずりょ!どびしゅ!ガガガギギギ‥と搔っ捌いたのは男の腹ではなく、一匹の鯛でしたっ!というオチ。
 
 EntryNo.4「切腹」
 他藩の治水普請(工事)から久しぶりに江戸に戻ってきた侍は、夜泣き蕎麦の屋台で美女に出会う。侍はこんなに美味い蕎麦は食ったことがないと喜び同輩にも勧めると言うが、自分は明日大事な仕事をやり遂げなくてはいけないから来れないという。切腹に立ち会うのだという‥。実は切腹するのは、この男自身。普請において多くの犠牲者を出した責めを負い詰め腹を切った。


 そそられるような切腹描写はなかったものの、アイディアは4つとも他に同じようなものが無くて面白かった。No.1のマンガはこういう逸話がもともとあるようだ。男は藤堂高刑といって、十五年後大阪夏の陣で討ち死にする。No.2は女切腹シーンが拝めるかと思ったけど、臍や乳首すら見えず仕舞いだった。No.3は‥シリーズものなのかな?? No.4、切腹前夜の侍の明るさと潔さが哀しい。上手い蕎麦を喰い、美女に出会うというシチュエーションは、作者の最後の晩餐的な理想の1シーンなのかもしれない。

戦国武将列伝 2009年 06月号 [雑誌]
リイド社
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大谷刑部戦記〈1〉関ヶ原に義神立つ! (歴史群像新書)
竹中 亮
学習研究社

自刃のシルエット

2009-05-04 | ★レビュー(本)
 書店で日本史学習漫画を見かけたので何冊が見てみた。もちろんお目当ては切腹の描写。しかし満足できるような画はなかった。やはり子供向けなせいか、直接的な画は避けているような感じ。切腹の描写以外ではわりと血飛沫が上がったりしてるんだけど‥なんでだろ??

 ポプラ社の「コミック版日本の歴史」シリーズの「明治維新 歴史を変えた日本の戦い」の巻で、白虎隊の自刃が描かれてないか探した。しかし肝心のコマは自刃する数人の隊士たちが黒いシルエットで表現されていた。直前のコマには城が煙炎に包まれたのを見て慟哭する少年たちの顔がちゃんと描かれていただけに残念だった。絵柄もしっかりしていて好みだったのに。
 他にも、信長・秀吉・家康、西郷隆盛等々切腹シーンがいくらでも出てきそうな巻があったけど、まともに描かれているものはなかった。やっぱりあんまり残酷なシーンは嫌がられるのか、流血シーンを自主規制する方向に向かっているのかもしれない。

 自分が小学生の頃読んだ、小学館版学習マンガ日本の歴史には版を重ねても見開きのページに描かれた白虎隊自刃のコマは残っていた。あれぐらいのやさしい表現なら切腹シーンを描いても構わないと思うんだけどな~

 自分の中に、「もともと流血をテーマにしてない流血絵萌え」みたいな要素があるんだと思う。流血要素の少ないマンガにときどき描かれる流血シーン。例としては↑の日本史学習マンガみたいな感じ。流血をテーマにしたり、(一部を除いて)大半の読者がグロシーンを期待して読むわけじゃないけど、流血表現を避けては通れない、斬首も切腹も合戦もどうしても描かなければいけない状況で描かれるマジメな流血シーンに妙にそそられるのだ。
 切腹フェチでもない男子がふざけて切腹のマネをするの見かけた時のような、そんな萌えに通じるものがあると思う。

明治維新―歴史を変えた日本の戦い (コミック版日本の歴史)
すぎた とおる,中島 健志,加来 耕三
ポプラ社
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集英社

血染めの白昼夢

2009-01-17 | ★レビュー(本)
「血染めの白昼夢」

 王政復古の大号令が下ったのが慶応三年(1867年)。その100年前から幕府の足元を脅かすような事件が東西で起こっていた。幕府はその度首謀者を捕え流罪や死罪に処したが、倒幕の小さな芽が潰えることはなかった。
 桃井寿三郎(号は菁峯)と、その内弟子池内志津摩(号は菁華)も京都奉行所配下の同心につけ狙われる身であった。逃亡生活の末、二人は菁峯の内弟子の一人早瀬源次郎の家に身を寄せた。二人は、「同志たちが次々に捕えられ処刑されている今、同志への義を貫き、天朝様に政を取り戻すことができなかったことをお詫びするために、明朝御所の門前で二人揃って腹を切る」と源次郎に打ち明ける。源次郎は自分も二人の供をしたいと申し出る。菁峯は、君には追手もかかっていないしまだ若いから自分たちの志を継いでほしいと止めるが、源次郎はなおも食い下がる。
 当年四十八の菁峯は二十四の志津摩と衆道の仲であった。さらに志津摩と十九の源次郎も同じく衆道の仲であった。二人きりで逃亡し、今また二人きりで切腹して果てようとする菁峯と志津摩に、源次郎は嫉妬に近い感情を抱いていた。「ひとり残されるご母堂のことを思いなさい」と説く菁峯だったが、源次郎は母の同意を取り付けてくる。それならばと菁峯も、源次郎も供にゆくことを承知する。
 三人になったので切腹の順序を考えなければならない。菁峯がまず切腹し、続いて志津摩と源次郎が切腹し刺し違える。二人が絶命したのを見届けたのち、菁峯が自らとどめを刺す。そう決めて三人は、体が汗に濡れるまで何度も切腹の稽古をした。その後、若い二人のことを考えて二人とは別の部屋で休むことにした菁峯だったが、隣室の契りが交わされる気配に血が騒ぐ。堪えきれず、声をかけると二人は快く菁峯を受け入れた。死を目前にした三つ巴の交わりがいかなる狂態を演じたかは読者の想像力に委ねたい(―と書かれている)。
 早朝と呼ぶにもまだ早すぎる時刻、三人は起き出し準備を整えた。と、源次郎がただならぬ叫び声を上げる。母が自害して果てていたのだ。最期になって息子の心が乱れぬように、との母心だった。

 途中町方に出くわしたりして遠回りをし、御所の門前に着いたのは早朝の物売りたちが往来にちらほらし始める頃であった。三人の切腹の準備に、自然周囲の目が集まる。
 どうやら、本気のようだ。数十人に膨れ上がった見物人は、男ぶりもいい三人が、芝居ではなく本当に腹を切り割く姿を期待して異様な熱気に包まれた。騒ぎを聞きつけ同心が駆け付けたが、三人の気迫に気圧され名前を聞くことぐらいしかできない。しかし、「それがしは河内ノ国の住人、楠木左衛門尉正成」「同じく弟、正季」「同じく正行」とあっさりかわされる始末。
 いつしかざわめきは静まり、この場のすべての人間の眼は一点に集まっていた。菁峯は鎧通しの切っ先を左脇腹に突き刺し、ググッと右脇腹まで引き回した。疵口が大きく口を開け、鮮やかな小腸がぶくぶくはみ出す。志津摩と源次郎は膝を突き合わせるまでにじり寄り、同時に切っ先を己の腹に突き立てた。噴き出す血が相手の胸や腹にバシャバシャと掛かる。腹を存分に切り終えた二人は震える手で脇差を握り、陶酔の色が浮かぶ瞳で見つめ合ったまま左乳の下を刺し違えた。二人の最期を見届けた菁峯は己の喉を掻き切り、重なり合って倒れ伏した二人に抱きついて突っ伏した。
 「死んだか」同心が十手の先で菁峯の大腸をつつくと、「まだ死なん!」と菁峯がガバと跳ね起きた。菁峯は再び突っ伏して動かなくなったが、同心は腰を抜かしてひっくり返ったまま手足をバタバタさせている。それを見て群衆から、その場には似つかわしくないような笑い声が沸き起こった。ゲラゲラというその馬鹿笑いは人間というものの不気味さを感じさせ、またそれより多くの意味が含まれているようにも思われた。


 短い話なのでサラッと書くつもりが、思いがけず長くなってしまった。最後の段落は切腹フェチの視点で見ると重要ではないが、物語の終わりとして面白かったのであんまり省略せずに書いてみた。
 前回の「
愛の切腹」に出てきた下郎のように、見物する群衆の描写に共感できる部分が多かった。逞しく生々しい体の男たちが繰り広げる血の惨劇を期待して集まり、いざ始まってみると胃の内容物が自然に込み上げてきてしまう者もいる。そして最後は、血みどろの死体を前にしても、同心の醜態に声を上げて笑う。実際こういう状況に出くわしたことがないのでリアルなのかどうか自分には言えないが、いかにも人間ぽいというか何というか、そんな気がした。
 物語が始まってすぐ三人が切腹することが決まり(話の中では以前から決まっていたし)、三人の行動が全て切腹に向けての物なのも、そそられるシチュエーションだった。切腹の稽古を汗だくになるまでしてしまう気持ちもよく理解できる。

戴いた書籍の中で、これまでに読んだものとレビュー記事へのリンクは
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20代・4位△(14p) イラスト・81位△(150p)

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「愛の切腹」

2009-01-11 | ★レビュー(本)
以前譲り受けた書籍の中の一冊「美男三世相 愛の切腹」と「血染めの白日夢」を読んだ。


「美男三世相 愛の切腹」

 一介の浪人から身を立てるため、十六歳の磯貝勝弥は眉目秀麗な容姿を生かし大名皆川丹波守義堯の稚児小姓になった。見事義堯の寵愛を一身に受けることに成功した勝弥であったが、他の稚児小姓や一般の家臣の新参者への風当たりは強かった。唯一、速水滝之進という若い武士だけは無口ながら何かと勝弥のことを気にかけてくれた。
 しかし三年が過ぎた頃、勝弥は新しく召し抱えられた十五歳の稚児小姓糟谷千之丞に義堯の寵愛第一の座を奪われる。千之丞の美しさは数多居る他の稚児小姓たちとは比べるまでもなかった。勝弥は元服し、名を源八と改めて一般の家臣として引き続き義堯に仕えることを許された。

 間もなくして、宿直を命ぜられた晩に源八は義堯の寝所へ呼び出される。そこで義堯に、千之丞と交わることを要求される。主君の命に背くわけにはいかず、源八は義堯が眺める前で千之丞と交わった。その一夜のことをきっかけに、源八の胸には千之丞への初めての恋心が芽生える。それは千之丞の方も同じであり、二人は主君の目を盗んで密通を繰り返した。寵愛を受ける主君を出し抜いての不義密通は大罪である。この次は無いかも知れぬという思いが二人の恋を燃え上がらせたが、とうとう源八と千之丞の関係は目付岩田主膳の知るところとなる。
 二人の処分は斬罪となるところ二人揃っての切腹を許された。しかしそれは褌一枚しか身につけぬ姿で行わなければならなかった。主膳は以前源八に言い寄ったことがあったが、源八はそれを拒絶した。それを根に持っていた主膳は、義堯に源八と千之丞を交わらせることを進言し、二人を恋仲にして不義密通させその罪を裁く企てを立てたのだった。

 主君義堯や主膳ら皆川家の家臣が居並び皆一様に好奇の目を向ける中、源八と千之丞は褌一枚の姿で庭先へ引き出された。衆道を貫き通し美しいまま念者とともに腹を切って死ねるのは、源八千之丞双方にとって本望であった。源八は、かつては寵愛した者たちが無惨に腹を切って死ぬ光景に期待を膨らませる主君義堯と、二人を謀略にかけて不義密通の罪に貶めた主膳を語気を荒げて糾弾した。
 源八は、己のするようにせよと千之丞に言い、褌の横帯の下に短刀の刃を突き立てた。常は横帯の上に突き立てるものだがと周囲がいぶかしむ中、千之丞も同様に腹に突き立て、二人は同時に横一文字に腹を搔っ捌いた。すると縦帯が上下に裂け、二人の股間に屹立したものが露わになった。割られた腹からは血と臓腑が溢れ出て二人のものを赤い天狗の鼻のように濡らした。雄々しくそそり立つ男根は纏わりつく腸管の重さに耐えているばかりでなくその硬さを増し、ついに若いうめき声とともに同時に濃い精を放った。源八は見たかと義堯と主膳を睨みつける。
 この光景を見て義堯は小姓に支えられてよろよろと奥へ引っ込み、辺りは騒然となった。千之丞の介錯人は一刀で白く細い首を刎ねることができたが、源八の介錯人の手元は二度狂った。突け突けと狂ったようにどなる主膳の声に後押しされた家臣たちの手により源八の骸は無残なものになった。

 しばらくのち、不義不忠を訴える紙片とともに主膳が変わり果てた姿で発見される。その紙片にあった署名の主、速水滝之進は源八と千之丞の亡骸が葬られた塚の前で、もろ肌脱いで腹を切った姿で見つかった。その腹は「菱に二つ引き」という磯貝家の家紋の形に切り開かれ、死に顔は美しく幸せそうなものであった。


 男性切腹フェチの自分にとって、義堯や主膳にも、源八や千之丞にも感情移入できる物語だった。美少年と美青年の二人そろっての凄絶な切腹の光景も眺めてみたいとも思ったし、自分の美しい恋人とともに腹を切りたいとも思った。
 源八千之丞が切腹した後、その場を片付ける下郎二人が会話する場面がある。「芝居で何回も見た腹切りよりも、やっぱり本物の切腹はすげぇ」とか「気持ち良さそうにすっ飛ばす二人を見て、自分もたまらなくなって出しちまった」とか、「こんないい若衆としっぽり濡れてみたかった」とか、この二人にも共感できる部分が多かった。
 最近の記事に比べると凄く硬派な記事を書いているように感じる‥w

 次回は「血染めの白日夢」の感想を書こうと思う。

★今回の記事を読んで、天晴れ衆道切腹!という
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20代・9位▼(10p) イラスト・118位▼(100p)

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DQゲームブック

2008-08-31 | ★レビュー(本)

前回は思いがけずたくさんの方にコメントしていただき色々考えさせられることもあって、本当に嬉しかったです。ありがとうございます!

 というわけで、前回とは全く関係がないけど‥
 先日pixivで、「ゲームブック版のドラクエⅡムーンブルク王女“ナナ”」というイラストをたまたま見かけた。あ~そういえばゲームブックではナナっていう名前だったな~‥と、ドラクエのゲームブック大好きだった16年前当時の思い出が蘇った。
 最初に買ったのはドラクエⅢのゲームブックで、これが一番好きだった。
wikiによると、なぜかⅢ版が一番初めに作られたらしい。ドラクエ以外のネタがちらほら出てくる、主人公と女魔法使いと男僧侶との掛け合い漫才みたいな会話が面白かった。女魔法使いと男僧侶の挿絵が鳥山明のキャラデザインとかなり違ってた。↑の画像の通り、女魔法使いは金髪ツンツンで盗賊っぽい服装。男僧侶は帽子+黒ヒゲではなく金髪碧眼の美少年(妄想)。話もオリジナル要素が多かったことに後になって気づいた。
 その後に出たⅡ、Ⅰ、Ⅳ、Ⅴまでは持ってた。Ⅱは途中で、
漫画を読み進めていくタイプのゲームブックになっているページがあった。他にも主人公と一時別行動をとるサマルトリア王子を動かして物語を進める部分があったり。Ⅱが一番オリジナル要素が多かったかも。ゲームに忠実でサラッと遊べて、挿絵もキレイだったのはⅣかな。
 ドラクエのゲームブックにハマってから、まだ発売されてなかったドラクエⅤのゲームブックを自作しようとしてたな。幼年時代すら完成させることはできなかったけど‥orz ドラクエの外伝みたいなゲームブックも作ったっけ。魔法とかモンスターはモロパクリでシナリオはほぼオリジナルだった。

 今作るなら、宇宙に舞台を移したSF白虎隊の出陣から自刃に至るまでをゲームブックにしたいな。最期は討ち死にしたり、自刃したり、蘇生したり、逃亡したり、助けられたり、捕虜になって凌辱されたり。自刃の中でも十文字腹がベリーベストエンド。最期のシーンは漫画タイプにしたい。

★今回の記事を読んで、「あ~‥あったな、そういうの」という人は↓↓をクリックして下さいな@

   
20代・2位☆(18p) イラスト・87
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