仙台POSSE(NPO法人POSSE仙台支部)活動報告

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「要介護認定者が急増」~現場に参加して見えた仮設の現状~

2012-09-21 12:49:24 | 記事
八月から仙台POSSEでお世話になっています。私は仙台ポッセの三大事業である、就労支援、就学支援、送迎支援の中で主に送迎支援のお手伝いをさせて頂いています。

先日、河北新報に東北三県で要介護認定を受けている人が増加しているという記事が載りました。その原因に震災による避難生活や、仮設住宅での生活が挙げられています。

焦点/要介護認定者が急増/自力生活に不安、拍車

 東日本大震災後、要介護認定を受ける人の増加は県内でも顕著だ。震災に伴う生活環境の変化などで、自力生活への不安が影響したとみられる。被災後、体を動かす機会が減ったことも要因とされ、専門家は「冬にかけて状況が深刻化する恐れがある」と警鐘を鳴らす。

◎運動不足も一因/心身の健康対策急務

 県内で2011年度に「要支援」「要介護」の認定を受けた65歳以上の高齢者は、9万399人(ことし3月末現在)。65歳以上人口に占める認定率は17.4%で、前年度に比べ1.1ポイント上昇し、人数も6449人増えた。
 県内の認定者数と認定率の推移はグラフの通り。高齢化の影響で認定率は年々上昇傾向にあるが、07~10年度までの4年間は0.2~0.4ポイント程度で推移した。増加数も1800~2900人だった。
 県によると、自力で日常生活ができる「要支援1~2」、入浴といった部分的な介助が必要な「要介護1」など、軽度の認定が震災後に増えているという。

<沿岸部で顕著に>
 津波被害が甚大だった沿岸部は、増加傾向がはっきりと表れた。亘理町の認定率は20.3%で、前年度比2.9ポイント増に跳ね上がり、県の増加率の2.6倍に達した。石巻市(18.4%)は2.8ポイント増、気仙沼市(17.3%)も2.3ポイント増で、いずれも2倍を超えた。
 気仙沼市の担当者は「震災で家族が犠牲になったり、自宅を失って隣近所とのつながりが絶たれたりしたことで、自力での生活が難しくなった人が増えている」と説明する。
 沿岸部に比べ、震災被害が少なかった内陸部にも増加率が跳ね上がった自治体がある。ここ数年、0.1ポイント程度の増加だった大崎市や白石市でも、11年度は約1ポイント増と10倍に急伸した。

<触れ合い求めて>
 白石市の担当者は「震災を経験し、1人暮らしの生活に不安を感じる人が増えている。外部の人と触れ合う機会を訪問介護や施設への短期入所に求め、申請するケースが目立つ」と分析する。
 一方、被災者の健康調査に取り組む辻一郎東北大大学院医学系研究科教授(公衆衛生学)は、被災した高齢者の行動の変化を要因に挙げる。辻教授は「民間借り上げを含む仮設住宅に住む高齢者は地域から孤立し、閉じこもりがちだ。うつや認知症の進行、歩行困難などの体調変化が顕著になっている」と話す。
 外出が減り体重が増える高齢者も増加。第1次産業に従事し、仕事を失った高齢者は体を動かす機会が極端に減っているという。
 辻教授は「高齢者が外出しやすい環境づくりが重要。仕事を再開して体を動かすことも介護予防になる。福祉政策だけではなく、総合的な対策が早急に必要だ」と危機感を募らせている。


河北新報(2012年08月17日)

 上の河北新報の記事は要介護認定の観点から、仮設住宅での実際の暮らしの一端を照らし出したものだといえます。たしかに、送迎事業をしていても、仮設住宅での移動の不便さから外出を控えるようになり、筋肉や体力が衰え、障害を悪化させている人と出会います。震災から一年と半年が経とうとしているいま、仮設住宅に住み続けている人は震災以前から社会的に弱者であった人達に偏りつつあります。そうした人達に対して、どのような支援をこれから行っていくべきなのか、POSSEとして何が出来るのかを私なりに書いてみたいと思います。
 その前に、仮設住宅での暮らしとはどのようなものなのか、そこで暮らす事にどんな困難があり得るのか、この二つを書きたいと思います。

【仮設住宅での暮らし】
 仮設住宅の暮らしは仮設住宅が建てられている地区によって、色々な形があります。例えば、被災する前のコミュニティやご近所の関係が、仮設住宅に移った後も維持されているような仮設住宅団地があれば、バラバラの場所から一つの仮設住宅団地へ人が移り住んできたところもあります。ご近所の関係が残っている団地であれば住民同士が支え合って行く事で、仮設住宅での暮らしでもなんとかやっていけますが、団地の人間関係がバラバラな仮設住宅では、仮設での生活はストレスの多いものになっているだろうことが予想されます。

 住宅そのものの劣悪さも仮設の暮らしを考える上で重要です。私が送迎に参加した三週間の間に、風通しが悪く日中は暑くて家にいられないという声や、平坦な屋根のせいで家に熱がこもり部屋が蒸して寝られないといった声が聞かれました。生活をする人にとって安全で安心であるはずの自分の家が、本来の機能を果たせていないのが仮設住宅です。

 仮設住宅団地の立地条件も重要な要素です。仮設住宅団地は町の中の至るところに点在して建てられています。工業団地の一角に建てられている団地も珍しくありません。そうした仮設住宅では近くにスーパーが無かったり、病院までの交通の便が悪かったりと健康に関わる問題に対処しなくてはなりません。仮設住宅には高齢者が住んでいる事が多いのですが、長時間外で活動するだけの体力が無いということで、待ち時間を考えて使わなくては行けない公共交通機関よりも、POSSEの送迎バスを利用しています。POSSE以外に送迎を行っている団体を見た事が無く、POSSEの送迎事業が無くなったら利用者の方はどうなるかと考えると、とても暗い気持ちになります。

【仮設で暮らす困難】
 仮設で暮らす困難について、送迎事業と要介護認定の増加に引きつけて考えると、外出が出来る人に格差が生じつつあるということでしょう。
 先ほども書きましたが、仮設住宅での暮らしは交通の便がとても悪いです。市内の工業地帯に仮設住宅がぽつんと建てられていて、お年寄りにとっては買い物や病院に行くことすらハードルが高い状況です。思いのほか病院の診察で時間がかかったり、早めに買い物が終わってしまった場合はバス時間まで待たずにタクシーを利用せざるを得ない事もあり得ます。しかし、被災によって財産を失い、いまなお仮設に住み続けている人の中で、誰もがタクシーを利用出来る訳ではありません。結果、家計の余裕の無い人は外出を控え、生活必需品が足りなくても我慢するようになり、心身の健康を崩して行きます。小さなハードルが越えられず、それによって目に見えない不利が蓄積していくという環境に常にさらされているのが、仮設住宅で暮らす困難であると言えます。

 では、仮設住宅にはどのような支援を行って行くべきなのか。

 <共助>と<公助>という考えがあります。共助とは地域共同体によって助けあう事、公助とは公的機関によって提供される援助の事を指します。仮設に対する支援では、<共助>に重きが置かれがちではないかと思います。例えば、仮設住宅支援では孤独死を防止するための見回り支援が行われていますが、仮設に住む方への声かけや相談事業だけでは、仮設住宅の住民への生活支援にどうしても限界があります。同じように、POSSEの送迎事業も人員不足などで様々な課題を抱えています。

 そのため、今後も住民に対する安定して、かつ包括的な生活支援を行うためには国の制度支援が必要不可欠であると思います。例えば、送迎バスサービスを全ての仮設で充実させる事や、仮設に住む要介護認定を受けた人へのサービスの強化等は、今ある制度の形を少し変える事で取り組めるので、すぐにでも取りかかれるのではないかと思います。

 公助と共助のバランスを安定させるために、POSSEがやるべき事は送迎事業の経験を蓄積して、仮設住宅が抱える問題を可視化させる事ではないかと思います。今回は河北新報の記事によって、要介護認定の増加が仮設の問題として社会に可視化されました。ジェネラルソーシャルワーカーを目指すPOSSEもこれから社会に対して問題を可視化して行かなければなりません。これからどんどん社会へ発信して行きましょう。
 今回はブログの更新をさせて頂きました。POSSEの皆さんにはこの場を借りて感謝の意を示したいと思います。ありがとうございます。(北海道大学 修士二年)

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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。

NPO法人POSSE仙台支部
法人代表:今野晴貴
所在地:宮城県仙台市青葉区本町1-14-20 キクタビル6階
TEL:022-266-7630
Email:sendai@npoposse.jp
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