月刊オダサガ増刊号

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リケジョのスタッフ 42 新歓コンパのフライング

2014-05-08 16:30:00 | リケジョのスタッフ
リケジョのスタッフ 42

 入学式のあったその夜、稲穂大学周辺の居酒屋はごった返していた。早速、新入生歓迎コンパが始まったのだ。入部を決めたのは一部の新入生だけであるが、その新入部員達に逃げられないように早目に親しくなっておく必要があるという上級生の配慮?である。

 奈津と香代が示し合わせたおかげでスキー部とバレー部は同じ居酒屋で第1回新歓コンパを行った。他にもいろんな部活が入り乱れて飲み会を開催しており、ほとんど稲穂大生の貸し切り状態となっていた。

 トイレから帰ってきた香代が俺に耳打ちした。「ねえねえ、大変、上のフロアにバスケット部がいるわよ」
「ふうん」

 それが大変である理由が俺にはさっぱり分からなかったが香代はお構いなしに続けた。「奈津先輩に言った方がいいわよね」
「なにを?」
「だから、バスケ部が上にいるって」
「なんのために?」
「高本蓉子がいるのよ」
「それ誰?」
「もう、裕樹くん、酔うの早過ぎ。奈津先輩のライバルじゃない、バスケ部の高本蓉子っていったら」
「ライバル?奈津はスキー部じゃないか」
「中学時代の話よ」

 奈津の中学時代の話か、全く憶えていないぞ。聞いたっけ?

「ちょっと留守にするから、新入生の面倒、よろしく、裕樹くん」香代はそう言い残すと、バレーボール部のシマから姿を消した。

 面倒を見ろと言われても困るが仕方ない、俺はとりあえず、新入生ひとりひとりにビールをついで回った。

 さて、裕樹くんに新入生を押しつけた私、山森香代は、スキー部のシマに行き、奈津先輩にバスケット部の件を告げた。「奈津先輩、上にいますよ、高本蓉子」
「ふうん」奈津先輩は関心なさげであった。「香代ちゃん、それをわざわざ伝えにきたわけ?」
「いえ、そういうつもりでは。出過ぎた真似をしましたか?すみません」
「ははは、冗談よ。私も気付いていたわよ、バスケ部が上にいること」
「ですよね、奈津先輩のアンテナの鋭さ、半端じゃないですから」
「お世辞はいいからさ、付き合ってくれる?」
「は、はい。って、どこに?」
「バスケ部に喧嘩売りに行くの」
「喧嘩ですか?」
「ぶっつぶしてやるって、土足で体育館にあがるの」
「え?それって」
「きゃはは、嘘。そんな漫画みたいなこと、しないわよ」

 そう言いながらも、奈津先輩は席を立ち、スタスタと階段に行き、フロアを昇っていった。私もせっせとそれにくっついていった。

「いたいた」奈津先輩は嬉しそうにバスケ部のいる座敷を見た。

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