もう先週のことになってしまいましたが、映画祭で見たインパクトの強かったものをいくつかご紹介したいと思います。
「食の未来」
デボラ・クーンズ・ガルシア監督 2004年作品
これは、2004年3月、アメリカ、カリフォルニア州で上映され、メンドシーノ郡での遺伝子組み換え作物の栽培禁止法案を通貨させる原動力となった映画だそうです。
農薬は、第二次世界大戦中に開発された神経ガスや化学兵器を農業に応用したものでした。
ベトナム戦争で使われた枯葉剤も農薬として使用されてきました。
その農薬を製造、販売してきたM社。
遺伝子組み替えのことに少しでも触れたことのある方は、この会社の名前に見覚えがあるでしょう。
除草剤として撒かれる農薬。でも、作物は枯らすことはできません。それで、農薬に強い作物の種を作りました。
もちろん、遺伝子組み替えの種です。
さらにM社のトウモロコシは、虫がつかないように遺伝子操作をしました。
すると、トウモロコシのどの部分を虫が食べても、虫は死ぬようになりました。
もちろん、これは人間も家畜も食べるためのトウモロコシです。
大規模農業が多いアメリカの農業。
その中で、自宅採取の種を大切に保存し使ってきた農場が、この会社に訴えられました。
なぜなら、M社の種を勝手に栽培したから、と言う理由です。
身に覚えのない農夫は裁判で反論しました。
所が、DNA鑑定をすると明らかにM社のものが混入していたというのです。
トラックがM社の種を運搬中に、こぼれ落ちた種が風に乗って彼の農場に舞い降り、
芽を出し育ち始めました。
これまで、自然界の植物などに特許をとることは許されて来ませんでした。
しかし、ある時期から作物の遺伝子組み替えについての特許が許されてから、微生物に至るまで数多くの自然界に存在するものを操作し、特許をとっているために、特許侵害として一農夫は訴えられたのです。
勝手に人の農場に種を落しておきながら、賠償を求められているのは農夫達。
大企業に勝てるのでしょうか?
遺伝子組み替えの怖いのは、その種からは次の世代の種を採ることが出来ません。
常にそのM社から種を買わないと、作物を作ることができないのです。
これを、「自殺種子」というのです。
今、日本では遺伝子組み替えの米が販売の許可を待っています。
なんと、花粉症にきく、というふれこみだそうです。
いかにも、今の日本人が飛び付きそうなキャッチフレーズではありませんか?
その米を食べ始めて、果たして日本人にどんな影響があるでしょう?
それは、まだ誰も分からない。
遺伝子操作についての実体を調査しようとしている、大学、研究者は軒並み、研究費をとめられたり、大学を追われたり、圧力は大きい様です。でも、彼等は訴えています。
ラットの実験で、数々の副作用が見られると。
アメリカの農業は、殆どが大企業の経営、しかも数社という独占企業が占めています。
機械化し農薬を大量に使用して食糧を作っています。
日本は、大豆や小麦、その他様々な素材をこの国から輸入しています。
なんせ自給率20数%というひどい状況なのですから。
日本だけではなく、世界中にこの食糧や種がばらまかれています。
飢餓を救うといい、救援するといい、安くアフリカやアジアその他の国々へ送り込まれます。
もともと、豊かな農業国だった国々が自分達の畑を離れ、安い食糧を買うようになります。
電気製品を買うため、子供の教育のため、といい出稼ぎをしなくてはならなくなります。
そういう、悪循環を引き起こすためにも、利用されています。
食糧を独占出来るということ、これは何を意味するでしょう?
そんな中、アメリカ国内ですら、小規模な家族経営の有機農業家たちが増えて来たといいます。
日本にももちろん、自家採取の種を大切に保存しながら農業を行っている農家があります。
消費者である私達には、何ができるでしょう?
選ぶこと。
この映画の最後の場面は、大きな苺を頬張る小さな男の子が映し出されます。
でも、その苺、実は畑で大量の農薬を撒かれているものなのです。
決めるのはあなたです。
ちなみに、日本の店舗で食品の表示に「遺伝子組み換えでない」と書かれているものでも、実は数%の混入は認められている、という話しをきいたことがあります。
店先で、質問すること。
これは大丈夫ですか?と聞いてみること。
これも、販売側に認識を深めてもらうために大切なことかもしれません。
このDVDを使って、上映会をしようと目論んでいます。
詳しいことが決りましたら、お知らせいたします。
「食の未来」
http://www.thefutureoffood.com/credits.htm
日本語版製作
日本有機農業研究会
T&F 046-276-1064