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重心座標表現の意味(その1)

2008年09月06日 | 考察


「ベクトルによる重心座標表現」の意味> (その1) 2008.09.06(土)

☆  「ベクトル AB」を (→AB)で表し、「ベクトル a」を(→a)、
また「零 ベクトル」を(→0)で表すことにする。また下の添字を使うものは前後の文章で区別
できるときは、An(Aのn番目)と表し、区別したほ方が分かりやすいときはA_nなどとする。
また両方を自在に使うものとする。mを自然数として、E^mで「m次元ユークリッド空間」を表す
ものとする。E^3で「3次元ユークリッド空間」という具合である。

さて、既に△ABCの「垂心H」「外心O」の「ベクトルによる重心座標表現」を与えた。

このとき、「ベクトルの内積」を使った表示が「基本」であった。その「証明」を
与える前に、「ベクトルによる重心座標表現」とはどういうものかを述べておこう。
ここで使うのは、位相幾何学でのいわゆる「単体」についてのものである。

m,nを自然数として m≧nとする。E^n内の(n+1)個の点A_0,A_1,A_2,・・・,A_nをとる。
A_0,A_1,A_2,・・・,A_nを頂点とする「n次元単体」を|A0,A1,A2,・・・,An|で
表すことにする。さらに|A0,A1,A2,・・・,An|⊂E^n⊂E^m とする。E^m内の
かってな点Pをとり固定し、これを「基準点P」と呼ぶことにする。
このとき E^n内の任意の点Tに対し(n+1)個の実数 λ0,λ1,λ2,・・・,λnで、
 λ0+λ1+λ2+・・・+λn=1 ・・・(1.1.1) となるものが「一意的に」定まり、
(→PT)=λ0(→PA_0)+λ1(→PA_1)+λ2(→PA_2)+・・・+λn(→PA_n) ・・・(1.1.2)
と表される。これはよく知られている。大事なことは、

「E^n内の点Tによって一意的にきまる、このλ0,λ1,λ2,・・・,λnが
 条件(1.1.1)により、E^m内の基準点Pの位置によらず、Pと異なるE^m内の基準点Qに
  対しても「同じ」λ0,λ1,λ2,・・・,λnによって
(→QT)=λ0(→QA_0)+λ1(→QA_1)+λ2(→QA_2)+・・・+λn(→QA_n) ・・・(1.1.3)
   と表される」ということである。

これが一般の「n次元単体」についての「ベクトルによる重心座標表現」の意味である。 
 一般の「n次元単体」に対してこの「ベクトルによる重心座標表現」を説明すると
繁雑になるので、以下 n=3で説明しよう。他の場合も同様である。
n=3のときで考える。m≧3とし、E^mをm次元ユークリッド空間,A0,A1,A2,A3は
E^3の4点とする。「3次元単体」 |A0,A1,A2,A3|で考えることになるが、
A0=A,A1=B,A2=C,A3=Dとおき、「3次元単体」の|A,B,C,D|で議論する。
  |A,B,C,D|⊂E^3⊂E^m である。
「単体」についてほんの少しだけふり省ってみよう。
[定義1.1]
  4点A,B,C,Dが「一般の位置にある」
 ⇔(def) 「ベクトル(→AB),(→AC),(→AD)が一次独立」
 この定義は次の[補題1.2]から well-defind であることが分かる。

[補題1.2]
  ベクトル (→AB),(→AC),(→AD)が一次独立 ・・・(1.2.1)
 ⇔ ベクトル(→BA),(→BC),(→BD)が一次独立  ・・・(1.2.2)
⇔ ベクトル(→CA),(→CB),(→CD)が一次独立  ・・・(1.2.3)
⇔ ベクトル(→DA),(→DB),(→DC)が一次独立  ・・・(1.2.4)
「証明」
 (1.2.1)であるとする。このとき、(1.2.2)を示せば十分である。
そこで、今 α(→BA)+β(→BC)+γ(→BD)=(→0) ・・・(1.2.5)としよう。
(→BA)=ー(→AB),(→BC)=(→AC)ー(→AB)などにより、(1.2.5)は、
ー(α+β+γ)(→AB)+β(→AC)+γ(→AD)=(→0) となる。ここで、
 (→AB),(→AC),(→AD)が一次独立だから、
 ー(α+β+γ)=0,β=0,γ=0 よって α=β=γ=0 となる。
  (証明終わり)
よって、「3次元単体」の|A,B,C,D| ⇔ 四面体ABCD となる。
[補題1.3]
 mは自然数,m≧3としE^3を3次元ユークリッド空間、E^3⊂E^mであるとする。
 PをE^m内の任意の点、A,B,C,DはE^3内の4点で、
 (→AB),(→AC),(→AD)が一次独立であるとする。そのとき次のことが成立する。
 「もし 実数κ(カッパ),λ,μ,ν があって、
  κ+λ+μ+ν=0 かつ κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD)=(→0) 」
⇒ 「実は κ=λ=μ=ν=0   ・・・(1.3.1)」 
「証明」
  κ+λ+μ+ν=0 より κ=ー(λ+μ+ν) これを 
  κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD)=(→0)に代入して、
  λ{(→PB)ー(→PA)}+μ{(→PC)-(→PA)}+ν{(→PD)ー(→PA)}=(→0)
すなわち λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD)=(→0) となる。
 (→AB),(→AC),(→AD)は一次独立だから λ=μ=ν=0 よって また、
 κ=ー(λ+μ+ν)=0 となり証明された。
 (証明終わり)
[命題1.4]
 
P,A,B,C,Dは[補題1.3]のとおりとする。
このとき、  「κ1+λ1+μ1+ν1=κ2+λ2+μ2+ν2 」
    かつ
「κ1(→PA)+λ1(→PB)+μ1(→PC)+ν1(→PD)=κ2(→PA)+λ2(→PB)+μ2(→PC)+ν2(→PD)」
⇒ κ1=κ2,λ1=λ2,μ1=μ2,ν1=ν2
  ここに,κ1,λ1,μ1,ν1; κ2,λ2,μ2,ν2は実数とする。

「証明」
 上の第1,第2式はそれぞれ 
 (κ1-κ2)+(λ1-λ2)+(μ1-μ2)+(ν1-ν2)=0 かつ
 (κ1-κ2)(→PA)+(λ1-λ2)(→PB)+(μ1-μ2)(→PC)+(ν1-ν2)(→PD)=(→0) 
 となるから [補題1.3]から κ1-κ2=0,λ1-λ2=0,μ1-μ2=0,ν1-ν2=0
 すなわち κ1=κ2,λ1=λ2,μ1=μ2,ν1=ν2
 (証明終わり)
この[命題1.4]から 次の[命題1.5]がでることは明らかである。
[命題1.5]
  κ1+λ1+μ1+ν1=1 , κ2+λ2+μ2+ν2=1 かつ 
 κ1(→PA)+λ1(→PB)+μ1(→PC)+ν1(→PD)=κ2(→PA)+λ2(→PB)+μ2(→PC)+ν2(→PD)
 ⇒ κ1=κ2,λ1=λ2,μ1=μ2,ν1=ν2
◎ このようにして T∈E^3 ,P∈E^3 として 、まず 点Pを固定して点Tを
  κ+λ+μ+ν=1 ,(→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) と表現したときの
「表現の一意性」が証明された。しかし、これは「基準点P」の取りかたに依存しているかも
 しれない。ここで、「κ+λ+μ+ν=1」という条件を
「まだ本質的に使用してない」ことに注意しておく。
・・・(その2)に続く・・・


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