【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

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佐々木スレ2-154 佐々木×キョン

2007-04-11 | その他佐々木×キョン

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 00:54:01 ID:oKaDEYx0
『大事な話があるんだ。いつもの駅前に今すぐ来てくれないか。』
夕食でいい感じに腹を満たし、風呂に入って部屋でひと休みしようと思った俺に、突然佐々木からこんな電話がかかってきた。
「明日じゃダメなのか?」
現在時刻9:32。こんな時間から出かけたら親も何か言ってくるだろう、俺は当たり前のごとくそう言った。
『…今日じゃなきゃ、今じゃなきゃだめなんだ。』
「その話ってのは、そんなに大事なのか?」
『ああ。僕の…人生が、かかってる。』
さっきから気づいていたが、心なしか佐々木の声が震えている。
いつも冷静な佐々木からはおよそ考えられなかった。
「そこまで言われたら、行かないと後ろめたくてたまらん。
人生がかかってるってのはどういうことか知らんが、まあ俺もお前の「親友」だ、行こうじゃないか。」
『ありがとう。』
短く言って佐々木は電話を切った。礼節を重んじているであろう佐々木らしからぬ行動だ。
いったいどうしたことか。そもそもこんな時間にいきなり誘ってくる時点でおかしいが、
なんだか切羽詰ったようだった佐々木の声を想うと不安になってきたので、俺は急いで支度をし、駅前へとチャリを全力で進めた。
駅前には、当たり前だがすでに佐々木がいた。適当な場所にチャリを止め、佐々木のもとへ向かう。
佐々木はいつからそこにいたのか、少し疲れた様子だったが、俺に気づくと挨拶をしてきた。
『やあ。すまないな、こんな時間に呼び出して。でも来てくれて嬉しいよ。』
「ああ、まあ、あそこまで言われちゃあな。話ってのがなんなのかも気になるし、暇してたところだ。気にするな。」
『くっくっ、君は本当に優しいな。で、まあ本題だが立ち話もなんだし少しこのあたりでも歩きながらでかまわないか?』
「ああ、別にかまわない。」


155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 00:55:05 ID:oKaDEYx0
駅を離れ、二人で肩を並べ歩く。
『それにしても、夜の街というのはなかなか良いものだな。まだそれほど遅くないから飲食店などもまだ開いているが、
昼間とは違った街の顔を見ることができる。』
「人通りが少ないからいつもは見えないものがよく見えたりするしな。静かで俺は好きだ。」
『僕も好きだよ。昼間の騒がしい街も僕は好きだが、この、街が眠り始めているような感じはなんだか居心地が良い。』
佐々木はいつも通り饒舌だが、なんかこう、何かを誤魔化すために喋ってるような気がしたが、気にせず話を続けた。
「でもまあ、驚いたよ。こんな時間にお前から誘われるなんて予想もできなかった。
それで、話ってのを聞かせてほしい。こんな他愛の無い話をするためにわざわざ読んだんじゃないだろう?」
『もちろんだ。
…キョン、君は覚えているか?僕が恋愛感情は精神病の一種だと言ったのを。』
「ああ、覚えてる。確かハルヒもそんなことを言っていたし、それもあるかもしれないがな。」
「ハルヒ」と言った瞬間佐々木が一瞬ビクッとしたのを俺は見逃さなかった。一体なんなんだ。今日の佐々木はどこかおかしい。
『今でももちろん僕はそうだと思ってる。恋愛なんてくだらない、とまでは言わないが、
いち個人のために自分の一生を変えてしまうなんてとても良いことには思えないし、なによりたったひとりのためにそんなことができるのか、と思う。』
「確かに俺も恋愛なんてしたことないからその意見はおおいにわかる。クサいラブストーリーにはもう飽きたし、くだらないとさえ思うさ。
でも美しいとも思うぞ。誰かに自分の全てを捧げられるなんて素晴らしいと思わないか?」
『そうかい?…まあ、全くわからないわけではないが。それでも、やはり僕は恋愛感情は精神病の一種だと思うよ。
聞いた話によると、ほとんどの人が気づけば意中の人の虜になり、寝ても覚めてもずっと意中の人のことを考えてるそうじゃないか。
これは僕からすれば病気としか思えない。仕事が手につかないとかいう人もいるようだし、これは問題じゃないか?』
「それはわかった。でもいきなりどうした?そのことは「大事な話」ってのに関係あるのか?」
佐々木は何かを隠しているような気がする。推測でしかないが、俺はそう言って核心に近づこうとする。
『…キョン、ここからは黙って聞いてくれ。
実は、僕はある病気にかかっている。それも末期だ。もう治らない。』


156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 00:56:15 ID:oKaDEYx0
「!?何を―――」
『何も言うな。僕の話を最後まで聞いてくれ。―――親友の、お願いだ。』
「あ、ああ…」
『僕がこの病気にかかったのはいつだかわからない。でも、これまでに発病した人もそうだというし、そんなことはどうでもいい。
僕がこの病気にかかっていると気づいたのは…そうだな、1年ぶりに君と会ったあの日だ。』
突然のことで驚いていたが、まさかとは思うが話ってのは…
『正直驚いたよ。女子との付き合いがあまり無かった君が、あんな――魅力的な女性と、休日に待ち合わせまでして会うなんてね。そのうえ3人も。…まあ、古泉君もいたが。
驚いた以上に僕は不安な気持ちにもなった。あれほどに魅力的な女性達と過ごしていて、僕のことなんて忘れてしまわないかと。
涼宮さん達と話して、あの3人とキョンが交際をしている、ということはないとわかった瞬間の僕の安堵は計り知れなかったよ。
でも、不安は消えなかったさ。なにせ彼女たちに比べたら僕なんて、小難しい話ばかりしているし、思えば休日や放課後に君と楽しく遊んだことも無かった。
僕みたいなやつを君が果たして女性として見ているのかどうかも怪しい、いつの間にかそんな気持ちにすらなっていた。
あの時に言った「親友」は虚勢のようなもので、言ってしまえばほとんど見栄を張っていたに過ぎない。
僕は君と「親友」だと言うことで自分自身を保ったんだ。自身のために君の気持ちを知らないままに発言する、これは酷いことかも知れないな。
でも、そこまで頭が回らないほど僕は焦っていた。なぜだかは…ここまで話せば察しのいい君ならもうわかるだろう?
いや、わからない、というのは男として最低だと思うが。』
まいったな。正直、佐々木にここまで想われていたとは露ほども知らなかった。突然のことに驚いた俺は言葉を発することができない。
だが、ここでダンマリを決め込むのは佐々木の言うとおり最低だ。俺の言葉を待つ佐々木は何かにおびえるように震えている…男にはやらねばならない時がある。