音楽・人間・心の歌
わたしは「音楽」という概念を説明するのに、それは「人間」という概念に共通していると話をしています。
この地球にはおびただしい数の人間が生きていますが、同じ人間はどこにもいません。あなたは世界中にただひとりのあなたですし、わたしも同じです。「人間」は常に具体的な誰かであり「人間そのもの」は存在しないのです。身体の特徴や住む場所や習慣、宗教の違い、さまざまな違いをもった人たち全部をひっくるめて「人間」とよんでいる訳です。
音楽もまた、同じように具体的なものであって「音楽そのもの」は存在しません。それは、一人の作曲家が作ったものか、ある共同体が、その長い歴史の積み重ねから作ったものか、さまざまなリズム、旋律、それを演奏する楽器。
それは、風や雲や鳥や獣、あるいは月や星や太陽から教わったものかもしれない。多種多様な音楽は、人間が作り育ててきたものです。
したがってキリスト教会に流れるミサ曲も、イスラムのモスクに流れるコーランの歌声も、神の音楽などではなく人間が作った人間の音楽なのです。ですから、音楽を大切にすること、人間を大切にすることは、ほとんど同意語のように思えてなりません。
音楽を愛する心、人間を愛する心、生命を慈しむ心の歌を一人一人違う人たちが、手と心を繋ぎあって、歌い続けようではありませんか。
あなたも一緒に。
2001年 第一混声合唱団演奏会パンフレットより
合唱団の練習の指揮をする岡田先生。撮影年はわかりません。