マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

等価交換方式マンションの闇と怪、その実例

2019-06-09 23:26:05 | 随想
区分所有法第19条で、マンション管理の共用部分の負担及び利益収取について定められている
「規約に別段の定めがない限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」

しかし等価交換により建設販売されたマンションの多くでは、この法律さえ守らない、
不公平な別段の定めをして、何も知らない新規購入者に署名押印させた売買契約時の同意を
元に、あなた方も認めた管理費を規約通り支払っている、悪いことはしていないという。

多くのマンションで、不公平に気付いた管理組合が裁判を闘い、勝利判決を重ねる中で
国交省も、区分所有法を改正第30条を新規に導入、負担は公平でなければならない。
「負担は区分所有者の利害の衡平が図られるように定めなければならない」とされた。

ところが、目覚めない組合というか、不公平に立ち上がり是正を求めない管理組合が
まだまだ多く残されている、
特に管理会社が子会社である場合は、その不都合を組合に悟られないように、親会社を忖度する動きが続くことになる。

一部の識者が不公平に気付き、その是正を求める動きに対して、管理会社が、組合内に会社支持分派を作り、
権力闘争よろしく、誹謗中傷まで組織して、その排除に掛かることがある。
不公平の是正を求める闘いは、管理会社の変更以上に、闘いになる、リーダーの些細な不正、
不都合を見つけると、その失脚を図る露骨な行為に出ることもある。

幾つか体験した、等価交換マンションの闇と怪についていかにまとめて一文を公表する。

等価交換方式マンションの闇・怪   
マンション管理関係者なら等価交換方式の闇については幅広く知られていることで、多くの著書にも、
その不適切な事実を見ることができるが、現実にその不適切な事実を正して、所有者に公平な負担を担わせる
改革には大変な努力と時間を要するもので、既得権益者の妨害をはねのけ、粘り強く交渉若しくは訴訟を含めて
戦わなければ実現しない事柄の一つとなっている。
 区分所有法第19条には、マンション管理に関わる負担は、各所有者の専有面積割合で公平に負担することに
なっており、収益も同様に面積割合で収取することとなっている。
●第19条:各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から
生じる利益を収取する。
 ところが、等価交換方式マンションでは、地主、建設ゼネコン、販売に関わる不動産販売会社、その子会社
若しくは系列下の管理会社の3~4者が、共通の利益に群がることから闇・怪が生まれ、力を付けていくこと
になる。 極論すれば、平成12年のマンション管理適正化の推進に関する法律はマンション管理をめぐる闇と怪
の克服を目指して提案されたとさえ思われるほど、その13年の施行以前は、マンション管理は「不動産の闇の中」
であった。
 マンション管理適正化法で、社会的資産でもあるマンションの管理について、区分所有者と共に、国、地方自治体
の責務が規定されるとともに、業者の責任と規制が定められ、管理業者は登録制となり、
業者側の専門家・管理業務主任者の配置義務と、管理組合側の専門家としてマンション管理士制度が誕生した。
マンション管理士がこの闇を照らす光となるかとの期待の下で、ある専門紙に「マンション管理士は
月光仮面たりうるか」とのコラム記事が掲載された。

">民法第253条:各共有者はその持ち分に応じ管理の費用を払いその他共有物の負担に任ず。

 区分所有法は昭和37年に成立しており、その後の必要な改正が重ねられてきたが、負担の公平を定める
第19条の規定は、民法の規定を受けて、区分所有法にも当初から規定(14条)されていたが、現実の闇とは
大きく乖離しており、特に等価交換方式マンションに関連して多くの公平を求める訴訟が提起され、
不公平の是正を求める判決が重ねられる中で、区分所有法が改正され、第30条が制定され、
規約で第19条に定める「別段の定め」をするとしても、「区分所有者間の利害の衡平が図られるように
定めなければならない」とされた。

第30条3項:規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは付属施設につき、これらの形状、面積、
位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、
区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない

しかし現実は、区分所有者若しくは管理組合が、自らの不公平負担の事実を認識し、法と規約を駆使して、
既得権益者と対峙、粘り強い交渉や訴訟無くしては、なかなか改善・解決できない問題として、
闇は続き怪がうごめいている。
 その権益を守る力は極めて大きく、容易なことでは解決しない。管理組合の一致団結した取り組みと
専門家の助力が不可欠である。その困難さに直面した、某マンション管理組合の理事長は、
自らの不動産関係のキャリアを生かした是正を求める闘いの中で、
「大資本による区分所有者の搾取だ、マンションに巣くう癌だ」と断言して闘い、成果を上げた事例もある。

 闇が生まれる背景には
制度的には、マンション販売の現実は、①青田販売、建物ができる前に販売すること、
②適正化法に基づく国交大臣の「管理適正化指針」で、購入者の留意すべき点として、買う前に
「マンション管理の重要性を十分認識し、売買契約だけでなく、管理規約、使用細則、管理委託契約、
長期修繕計画等管理に関する事項に十分に留意する必要がある」と指摘しても、
購入者として、法と規約を研究の上で事実を理解して購入する人は極めてまれであり、
多くが販売会社の言われるままに書類に署名押印するシステムとなっている。
③ゼネコン若しくは販売関係者が管理会社を決め、販売側若しくはそこの依頼を受けた管理会社が、
元地主若しくは販売側の意向を盛り込んで作成した規約案を、販売にあたり、各購入者に個別に署名押印をさせて、
規約を全員が認めて成立した(あなたも認めた責任もある)とする。
④この規約の定めに多くの不公平が公然・非公然に含まれているために、また、その後の管理で、
管理組合若しくは区分所有者が、それに気付く、あるいは気付いて組合として、組織的にその是正を求めるまでに、
例えば、後述するように、30年間で1億円を超える膨大な不公平負担が存在することとなる。
また、不公平とは別物ではあるが販売戦略から、「安い買い物」との印象付けから、
不適切に管理費や修繕積立金を低く抑えて販売、購入後に、事実に気付いて、想定外の新たな負担を背負わされる
結果となる場合も多くのマンションで見られる事実です。
それゆえ、多くの管理士が相談を受けた場合は、管理組合成立総会若しくは第1回総会の時点で、
管理規約及び管理費等の負担の衡平を見直す作業をお勧めしている。
この時点でできれば専門家を含めて見直しをすることで早期に闇を発見し、
被害を少なくして解決する糸口となることが多いのも事実です。

闇の具体的事例を見てみよう(守秘義務関連で一定のデフォルメ実施)
Aマンション: 400戸、地上40階、地下2階、築20年、分譲会社は公的性格を持つ某公団
であり管理会社も同グループの管理会社。
商業施設と住宅が3対7の面積比率で存在し、分譲会社が商業施設の85%を保有する。
管理組合は施設(商業)管理組合、住宅管理組合、全体管理組合で構成されているが、大面積を保有する分譲
会社が、自社に優位な規約を作成、分譲時に全員の同意を得たとして、不公平な規約に基づく管理運営を行ってきた。
この間判明した主なものは以下の通り。
① 商業施設の内、数戸の管理費・修繕積立金収納を設定していない。
② 区分所有者でない占有者に管理費を直接納付させる。
③ 総会決議事項なのに、理事会で規約細則の作成・変更ができる。
④ 全体共用部分の公告看板料が年間1千数百万円の収益を得ているが、これを全額収取しておきながら、
修繕費用は7:3で住宅居住者に負担させてきた。

住民の闘いの結果、公団は所有面積を民間別会社に売却、管理会社も撤退、管委託契約の解除を通告してきた。
持ち主が代わっても規約が変わらなければ、不公平の実態は克服できない。
まして利益追求を目的とする民間会社がオーナーとなれば、闘いはこれから、さらに厳しくなるかも?

Bマンション: 住戸170戸、地上14階、築35年、私鉄大手が駅ビルとして開発販売したもので、
駅通路がマンション内を通過する構造で、住戸の他に店舗と市公共施設があり、床面積40%を売り主の
大企業が所有(1オーナーとしてテナントを入れ商業施設として使用)、その一部を公共施設に売却、
市出張所が併設されている。
原始規約は、すでに存在した区分所有法の概念から見てもおかしなもので、
①売買契約書に記載された承認事項25条、②マンション管理規約19条、③マンション管理組合規約22条
の3部構成で、組合員個々人が(区分所有者として自ら管理するのでなく)管理組合に管理を委託し、
管理組合は売り主の100%子会社に管理を委託するとして、ビル管理会社(私鉄所有ビルの全てを一括管理し
てきたビル管理会社で、適正化法施行により大臣登録、13年から社名変更しマンション管理会社としてスター
ト)が規約に明記されており、
1棟の建物だが、規約には敷地に関する規定はなく、管理組合は住戸のみで構成され(住戸単棟型)、
店舗部分及び市施設の区分所有者は組合構成員として明記されていないが、議決権は面積割合40%の議決権
を持つことが規定されており、また、管理費等を定める規約別表には、売り主等の負担する管理費は面積割合
とは程遠い極めて少額(10数%相当)であり、修繕積立金の金額欄は空白となっていた。
過去の大規模改修工事費用は、その都度の覚書により、面積割合相当分を1括払いで負担してきたと言うが
、期限の利益及び利息分は組合にはないとの扱いであった。

管理規約の改正は4分の3以上の賛成が必要で、4分の1以上の議決権を保有すると、自社の意向で規約の改正を
阻止できる。不公平を恒常化できる権力を持つことになる。
このマンションでは、不公平の是正を求める規約改正も善管注意義務違反を繰り返す管理会社の変更も、
売り主の私鉄大企業が同意しない限りできない縛りがかかっており、極めて不公平な状況下で、
住戸はまさに支配下に置かれていた。

日頃から2つの神話(①鉄道会社が東電から安く一括購入した安い電力を提供している。②駅ビルという利便性の
高い素晴らしいマンションに住んでいる。③売り主から恩恵を受けている、
③駅利用のため、少々の不都合は我慢してほしい。売買契約で承認した)が流布されており。
居住者個人にとっても、理事会でも、これを仕切る管理会社フロントとフルタイム管理人の発言が支配的となり、
管理組合と理事会がしっかり自立せず、自律もできず管理会社の提案を長期にわたって丸のみしてきた歴史と
経過がある。

ある時点で心ある役員が不正に気付いて是正しようにも、プロ集団の大企業と素人の情報・力量の差もあり、
多くの組合員にある「これまでそうしてきた。管理会社がマンションを管理している」との認識(マインド
コントロール)の克服から始めなければならない大きなハンデー下の出発を余儀無くされた。
 築35年が経過するが、100%子会社の管理会社は、親会社に不都合なことは報告せず、
その間、何度も法律改正、標準管理規約の改正などが続き、現行規約には無効な規定が数多く残されていたが、
自社に都合の悪い情報を管理組合にも与えず、売り主大企業のやりたい放題を管理組合に飲ませてきた。

その事例は数知れないが主なものをあげると、例えば
① 全体外壁への公告看板料金は住民の承認事項で、無料、組合に管理権なし。
② マンション総合保険も売り主子会社の保険会社が担当し、住宅部分だけが対象で、店舗部分は別途、
     大企業の保有する他の物件と一括付保されている。共用部分の保険付保と専有部分の付保の違いを理解
しないか? 隠している。
③ 店舗内外の躯体に関わる改造工事を組合への一片の通知で済ませた。
④ テナント変更やそれに伴う専有部分の修繕等は組合に関係なしと野放し。
⑤ 管理委託契約書の変更も一変の通知、覚書のみで行ってきた。
⑥ 大規模改修工事を管理会社が請け負ってきたが外壁面積を大幅に増やして工事費を釣り上げ、
     不当利益を上げた事実が3回目の大規模計画中に判明。
⑦ 店舗のテナントの変更に伴い電気設備増設、容量等の変更が無断で行われた。
⑧ 全体共用部分の電気代を住宅部分に負担させたほか、テナント変更で無断増設され、増えた電気代を
     そのまま住宅部にかぶせてきた。
⑨ 店舗一部共用部分の負担も全体共用扱いで住宅部分にかぶせられている。
⑩ 携帯電話基地局の収入を面積割合で収取してきた。
⑪ その他共用設備の維持管理費の持ち分割合が決められていたが、面積割合に無関係に決められ、
     その割合の十分な検討がなされないまま、覚書により改定されるなど、
     管理組合は管理会社の言うままに同意してきた。

マンション管理士の助言を得て、「マンションは管理会社が管理している」との認識の克服と
「1棟の建物は一つのマンションであり、一部住宅だけがマンション管理組合」という刷り込みの克服から
闘いが始まった。

35年間放置されて無効の規定を多く含む規約の見直し、直近の標準管理規約、複合型マンション管理規約を基に、
管理規約改正作業にかかる中で、不公平是正を実現するための粘り強い調査と過去の資料の拾い出しによる事実
確認を基に、子会社の不手際、不正行為の追求など、大企業相手の交渉が進められた。
2年係の粘り強い交渉の結果、
①電気代負担の不公平を解消、住宅部の負担額が年額100万円減額(事実上の増収)、
②管理費等は面積割合相当額とするとして管理費は月額25万円から100万円に、
 修繕積立金も区分所有者同様に毎月110万円余を収める合意が成立、管理費等総額で月額210万円余
 (年額2520万円余)に増額、結果として年2200万円余の増収となった。
  電気代と管理費等だけの不公平是正により年額2300万円余の成果(増収)を上げた結果となった。

しかし、現時点から将来に及ぶ不公平負担の是正には合意し、規約改正も管理費等の別表を規約事項とせず
細則に移行する(これで管理費等の値上げに関して4分の1の縛りがとれる)ことも認めるが、
当初からの不公平を是正する不足分相当額1億円超える額の遡及請求については認めない。
自分たちは「不正行為はしていない。組合と合意の上でこれまで支払ってきた。上場企業として決算済みを
遡及して訂正できない」等と主張し、交渉の議題とすること自体に同意をしないという態度を取り続けている。
私鉄大手企業相手に裁判をするか否かの判断が組合に残されている。

Cマンション: 住戸33戸、店舗1戸、地上12階、地下1階、駅前のマンション1階は販売主の
不動産店舗となっており、売り出し後、駐車場と駐輪場の一部が無断で店舗拡幅の店舗敷地に取り込まれ、
改造工事完了後に住民が入居したためだれも気付かなかった結果、20年にわたり、不当専有部分の管理費
を納めず、共用部分として、固定資産税を住民負担させていたことが判明した。

規約改正の助言・指導の依頼を受けた管理士が、規約改正の調査過程で面積と管理費の不整合に気付き、
建築確認書、建物竣工図等の詳細調査の結果、売り出し後の改造、変更登記などの不正が発覚。
 裁判も辞さない姿勢のもと、粘り強い交渉の結果、構造を元通りに戻すこと、登記も基に戻すこと、
管理費等の未納分及び遅延損害金の支払い、和解金の支払いとして、現金支払いの他、
駐輪場及び駐車場2台分の所有権を引き渡し、賃貸契約で不動産会社が賃料を払うことで合意、和解した。
結果、本来共用部分である駐車場・駐輪場の引き渡しの他、不動産会社所有の駐車場2台分も引き渡すこ
ととなり、現金換算で約4500万円相当の損害賠償を獲得した。

*登記の変更を伴う結果、地方税の課税問題として市役所固定資産税課と登記所の見解が異なり、完全解決までには、
管理組合の法人化が不可欠となったために、法人化して共用部分の課税を一本化して支払うことで合意が得られた。

Dマンション: 戸数15戸、内1階店舗(駐車場1含む)、築21年、駅から2分の交差点に立つマンション、1階店舗が売り主の不動産会社店舗として使用されてきたが、途中から店舗を売却、
区分所有者が変更になるに及んで、適正な割合で管理費等が払われていないことが管理会社フロントにより発見
された。これまで駐車場と店舗内のモデルハウスは共用部分であると居住者は聞かされてきたのに売却された。
駐車場を巡り管理費及びモデルハウスの管理費は払われていないのではと、適正な管理費支払いを求める管理
組合と、新所有者間で話し合いがつかず、管理費改定決議には規約違反取り消し訴訟が提起された。

標準管理規約第37条第7項:変更が一部組合員の権利に特別の影響を及ぼすときは、その承諾を得なければな
らない、この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

さらに新所有者のもとに、市役所から広告条例違反なので正式に届出るようにとの通知が届き、無許可の広告等の
設置、使用料の支払い事実なしの事実が浮上した中で、マンション管理士が呼ばれた。

管理士が必要な経過や文書等を調査してみると、モデルハウスは店舗面積に含まれ、駐車場は独立してそれぞれ登記
されており当初から専有部分とされていたが、なぜか原始規約で10年間にわたって規約別表の管理費等一覧から
店舗と駐車場が隠されており、10年後の規約改正時点で管理会社の提示により竣工図面からモデルハウスを除いた
店舗面積と管理費等の額が一覧表に明記された。
専有部分の面積をごまかして管理費等の支払いを不当に安くしているのではとの疑惑となり、
管理士による、調査事実に基づく話し合いのもと、提訴は取り下げられ、将来にわたっての管理費等は面積割合で
負担することで合意し、管理費の是正にも同意して管理規約改正が全会一致で承認された。

しかし、旧所有者である不動産会社と売却以前の管理費の不公平の是正、
併せて看板等の無断設置及び共用部分使用料の支払いを求めて、すでに区分所有者でなく、
賃借人として店舗を営業している旧売り主との間で交渉が始められた。
交渉過程で、不動産会社の担当部長は、「自社の顧問弁護士と相談の上、管理費を決めたので問題はない」と
陳論を展開、管理費を管理組合が決めること、面積割合で負担する基本すら認識しない発言を繰り返し、
暗礁に乗り上げていたが、部長が退職(更迭?)、新任の部長との交渉では1回で、解決金として80万円余を払い、
看板設置の共用部分使用料を毎月支払うことで合意して決着した。


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