マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

自主管理の癌と第3者管理の闇にどう立ち向かうか?

2016-11-15 08:49:41 | 随想
マンションの乗っ取り? 寄生虫が巧妙に癌化した事例も
自主管理での事例
●ある相談所の担当日に2件の相談があったが、どちらも共通していたのは、管理会社も見放すマンション。築年数の高い20数戸の郊外の格安物件を悪徳不動産屋が購入し、区分所有者となった後、誠実だが素人で何が悪いのかも良く分からない高齢者が、他に人がいないからと理事長を務め、長年努力を続けてきた中で、これに新たに区分所有者となった不動産屋が、何かと文句を付け、退任に追い込み、自分が理事長に就任、通帳と印鑑を預かり、管理業務に係る事業の全て自社系列に発注する等、遣りたい放題をやっている事例だ。
1件目などは、不動産屋が嫌がらせを続け1年間に理事長が3人も辞退に追い込まれた時点で、「そんなことを言うならあんたがやれ」といわれた言質を方にとり理事長に就任、2戸目を買い取った部屋に舎弟と呼ぶ人間を住まわせ、舎弟は役員でもないが、理事会その他で理事長のやり方に批判的言動を吐く者を、陰に陽に実力で威嚇するまでに事態は大きくなっていた。退任した3名の元理事長が、警察にも相談したがマンション内部問題だからと相手にしてくれなかった。何とかならないかと相談に来ていた。
マンション管理は法律と管理規約を基準にした自律自治の組織であり、自主管理の状況では、管理会社が悪いというわけにもいかず、組合の皆様が自ら組合運営を民主化し、法と規約に照らして、目的に反する行為や集団の利益を害するものを排除して、済みやすい住環境とマンションの財産価値を守る義務を負うことになっている。区分所有者の皆さんが力を合わせて、自分たちのマンションを何とか管理する責任が在るのですから、相談者の悩み、問題意識が、組合内で多数の支持が得られるように、多数派への継続的な努力を続けてくださいというしかない状況でした。

●不動産業者Aが建て販売した⒛数戸のマンションの1階に自分の店を構えて、その組合員でもあるAが管理(形態としては自主管理)を続けていた。当然原始規約もAが作成、A有利の問題を抱えたもので、理事会も形骸化され、実質A不動産の個人管理の状況下にある中で、本人が死亡、サラリーマンの息子が相続をした。不動産業は閉鎖、その後もAの使用人であるB嬢(Aの内縁関係者)が管理費を集め、5年間、管理行為が放棄されていた。雨漏り事件が発生して管理はどうなっているのか、収めたお金はどうなっているのか?ということで相談に来られた。
 A本人存命中から、関連工事は全てマンションを建てたC工務店〈その後倒産して、当時の役員数名が同じ社屋を使って別会社Mを作り〉が受注していた。
 販売当時の事情もあり、Mの社員数名がマンションを購入、区分所有者となっている中、雨漏り事件発覚後、息子が(ある意味自然ではあるが)Mに雨漏り事件の対応を初め、管理行為の相談を持ち掛け、工務店M主導で、改めて総会を開きM社長が理事長に就任、Mの社員や縁者を役員として選出、理事会や総会の会場はM社の会議室を使う状況が始まった。Bは早々に退職させられ、田舎に帰した、その間の会計報告も、「書類が無い、解らない」との報告が続き、相談者が追及する中で、息子を「50万円の返却だけで免罪する」総会決議が賛成多数で可決。自主管理の壁の中で、Mの利権が守られる状況が続いている。

●800戸もある大きな団地管理組合で、多くの住民が「団地は専門家の人達が頑張っているのだから良い管理が行われている」と多くの人達が思い、「専門家集団による素晴らしい管理」が続いていると、地元でも有名となり、行政での評判も良く、マスコミも随所で取り上げるようになったところの住民から「気になること」の相談を受けてびっくりした事例があります。
そこでは管理組合と自治会、区分所有者でもあるマンション関係の専門家集団(設計コンサル、管理技術者、建築施工業者等)の作ったNPO法人が互いの役員を繰り返し交代する中で、うまく連携して、区分所有者のために「素晴らしい管理が行われている」というのです。
しかし、持参した総会資料などの内容をよく見ると、信じられない驚きの事実が浮かび上がってきました。
組合とは別人格であるはずのNPO法人の事業報告と事業計画が名称もそのままに、そっくり管理組合総会の議案として上程審議され、管理組合総会でNPO法人の事業計画が可決承認されたとして、個別事業の他団体への委託契約行為の議決もなしに、組合の諸事業のほとんどをその法人に委託し、法人が発注元として、管理業務が実行されている。その法人は当然のこととして委託料を受け取るほか、管理組合からの補助金まで受けているというのです。
見方を変えれば、組合が直接実施すればよいものを、管理会社でもない特定のグループに委託料を払って事業を委託し、その受託先が元受となり利益を得ているばかりか、事業費をピンハネして下請けに仕事を回す仕組みが出来上がっていることにもなります。しかもそれぞれの役員が同じ団体の関係者ということになると、利益相反関係にあることにもなります。
一生懸命やってくれる専門家集団だからということで多くの住民の支持を得て、しかし専門家だからこその巧妙な利権構造が作り上げられ、寄生虫としての利益搾取が成長して癌となり、事実上の乗っ取り、若しくはそれに近い構造が完成している疑いが極めて大きいのです。

第3者(外部)管理の事例
●2016年2月17日、11億円の横領で、石打のマンションの元理事長が逮捕された事件がありました。マンション管理新聞(2015年12月5日号)によると、築25年、2棟549戸のタワーマンションで、管理組合法人の元理事長が総額11億7800万円を着服、横領し、着服期間は16年にも及んだというのです。
 この元理事長は、公認会計士、大手監査法人の代表社員であり、専門家中の専門家として管理組合監事に就任し、当時の組合管理者でもあった管理会社による3億円の横領を解明した実績を基に、理事長に就任した人物でした。
専門家としての経歴や、組合での横領解明の実績からも、彼は組合のために良くやってくれる人と信頼されるには十分なものでした。逮捕後に明らかになったことは、16年間、理事や組合員の誰もが通帳を確認しなかったこと。
 16年経って会計処理がおかしいと、理事が通帳の公開を要求、領額が発覚したのです。専門家だからこそ、偽装工作も巧妙で、発覚が遅れた典型的な事例です。
「専門家だから安心できる」ことではなく、常に複数の人間が関与する監視体制の下で、区分所有法や適正化法及び管理規約の厳守の中で、公開性の確保、説明責任の実行を求めることは欠かせません。

●築30年、48戸のマンション、デベロッパーP社が外部管理者とし就任、規約に管理者名の明記、理事会を置かずに、又、総会議長は管理者若しくは管理者の指定する者と規定されている。その子会社Dが管理委託を受託しており、杜撰な管理(下請け丸投げ、不透明会計、積立金取り崩し、専有部分の電気代を管理費で支払うなど)が続き、組合員や相談者である管理士の請求に対して個人情報保護を理由に、組合員の名簿の開示を拒否する状況の中で、1年余をかけて、管理会社変更、規約改正、管理者解任の困難な戦いを勝ち取った報告を聞きました。第3者管理の恐ろしさをつぶさに明らかにした報告でした。

○これらの寄生虫や癌との闘いは、日頃から正しい規約を整備しそれに基づいて、組合や理事会の活動を、公開の原則、説明責任をいつでも果たせる質の高いものに成長させること、理事長や管理会社任せにしないで、理事長を中心とした集団で、自らのマンションの管理運営を執り行う姿勢と覚悟を持ち、必要な知識の学習に努める。また区分所有者間のコミュニテイの醸成につとめることが、闇の動きに光を当てることになるのではないでしょうか!?