西岡(宮大工)さんは、弟子の
育て方について、「大工は弟子
たちに規矩(きく)木割り
(木の反りを考慮して部材の
寸法の比例を決めていく技術)
を教える。
時代ごとの違いを教えると弟
子の反応が分かれる。物覚え
のいい人は教えた通りに丸暗
記する。実際に見て得心がい
かないと覚えられない人は、
飛鳥のものは、白鳳のものは
どんなものか、自分で確かめ
に行く。そして、なんで時代
によって違うのか疑問を持つ。
丸暗記をしたほうが早くて
世話はないが、それでは
新しいものに向かっていけ
ない。丸暗記には根がない。
根がちゃんとなくては、木が
育たない。しかし根さえしっ
かりしていれば、そこが岩山
だろうと、風の強い所だろう
と、やっていける。
各時代の木割りがなぜ違う
のかを考え極めるにはたいへ
んな時間と労力がいる。
だが、一度それを習得した人
は、後で自分流の木割りが
りができるようになる」。人材
の育て方の神髄だ。
戦後の学校教育や企業内教育
は、外国に追いつき追い越せ
で知識の丸暗記一辺倒だった。
そのほうが、効率が良かった
からだ。手本があった時代には
それで良かったが、これから
の自分で道を切り拓いていく
知恵の勝負の時代には役に
立たない。