ある歌舞伎役者は、「言葉と
いうものはカミソリの刃の
ようなものがございますね。
使い方を誤ると自分を傷つ
けたりすることさえあるの
ですから」語る。
ある人は、中学一年生のとき、
音楽教師が何気なく言った
「調子のはずれた、間の抜けた
歌だね」という言葉で、一生歌
を歌わなくなった。
小さいときはいつも母親から
「おまえは不器用だから」と
言われ続けて育ったある人は、
大人になっても釘一本打てず、
ネジまわしも使えず、靴ひも
も満足に結べない。
言葉は口の端から出たとたん
に飛び散ってしまうはかない
ものと思われがちだが、
それがひとたび人の心の隙間
に入り込むと、そこに根を張
って、人の一生を左右するほ
どの恐ろしい力を発揮するこ
とがあります。
古代の人々は、言語に霊が宿
っていて、その霊が宿ってい
て、その霊が人間に働きかけ
ると信じていたが、それは
この言葉の恐ろしさをよく
知っていたからです。
特に小さい頃に親や先生から
受ける言葉のボディブローの
破壊力は大きいものです。私
たちも、この使い方を謝らない
よう、よくよく肝に銘じておか
なければなりません。