
この帽子の見本が大人気でした。
今回の編物教室のお話は、毛糸の帽子を編んだことです。
冬が近づくと、毛糸の帽子が編みたいとの声が聞かれるようになりました。さっそく見本を作ろうと、編物の本を探し、毛糸を選んで見本を作りました。(上記の見本です)
帽子というのが一番編みにくかった気がします。それは、本の通りに編むのは大変で、編み目の数の増減が理解しにくい。また、糸の太さによって大きくなったり小さかったりで、被る人に合わせた大きさに編むというのができないのです。利用者の方が編むときは、一段ずつ、編み目の数を教えてあげて、大きく編めて来たら、頭に載せて目の減らし加減を調整しました。
ある日、酸素吸入をしながらHさんがデイケアものづくりに入られました。若い頃から看護士として全力投球で家を支え、働きとおしてきたしっかりもののHさん。病気で倒れ、意識不明から回復され自宅へ帰るまでにお元気になられたのですが、すっかり気力をなくしていました。こんな体で生きていたくないと悲観するつぶやきがよく聞かれました。
Hさんは、息子思いで、編物が得意だったそうです。息子に編んでやった毛糸の残りを家から持ってこられ、毛糸の帽子を編み始めたのです。

編んでほどいて、また編んで。またまたほどいて、また編む。「前は、いくらでも上手く編めたのに・・・情けない。ダメになった。ダメになった。」そうつぶやきながら、また次の日には、編み始めます。
Hさんは、顔色も青ざめ、笑顔も少ない方でした。しばらく座っていると、腰の痛みに襲われます。休みながら気分を変えて気晴らしに編んでもらっていました。
日が経つにつれて、体調もよくなり、編物を楽しみにされるようになりました。そしてある日、お化粧をしてピンクの洋服を着てこられました。
「わぁ、きれいですよ。洋服も色が良くてとても似合っていますね。」
そうほめると、とっても嬉しそうにされました。それからは、亡くなられたご主人に買ってもらったブラウスだとか、おしゃれな上着など着てこられるようになりました。
髪型が変わったこと、服装の似合うところなど、どんどん見つけてほめます。これは、とっても大事なんです。
そして、とうとう毛糸の帽子が出来上がりました。

編み方がきつくきっちりと仕上げる方のようで、少しでこぼこした出来上がり。松編みの模様も浮き出て、素敵な帽子の完成です。編物教室のメンバーとよもやま話で笑いながら、楽しんで編むことができて本当によかった。
編み物は、一つのきっかけです。リハビリの目標は、失った能力をもう一度取り戻すこと、前と同じまでに戻らなくても、やってみようという意欲を持てることなのです。
できなかったら、援助します。できそうなことは、励まし見守ります。うまくできたら、職員もいっしょに大いに喜びます。そういう楽しい編物教室でした。
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