ものづくりあれこれ

ものづくりで毎日を楽しもう!

季節の布絵 「かぶのお雛様」

2015年03月15日 17時40分36秒 | デイケアものづくり
     かぶのお雛様です。

3月の壁飾りは、これです。布絵の先生からいただいたもの。
昨年の春も飾りました。今年もまた、引き出しから出してきて、飾っています。布の模様というのは、いいものですね。見ていると、何かしら落ち着いて、ほっとします。

これは、布絵(ぬのえ)という手芸です。古い着物の生地をたくさん集めて、思う形にきれいに切り抜いて、並べてみます。配置が決まったら、布の台紙に貼りつけていきます。始めた頃は、糊で簡単に押さえ、額縁に入れて飾ります。慣れてきたら、糸でアップリケのように縫い付けていきます。以前勤務していたデイケアで、毎月、この手芸をやっていました。

季節ごとにふさわしいテーマを選び、講師の先生が図案をデザインし、部品を用意してくれます。ですから、だれでも気楽に楽しめました。
古い布地がほのぼのとした雰囲気を醸し出し、模様の置き方を変えるだけでオリジナルな作品ができるのです。私は、いつも助手で、先生のお手伝いをしたり、利用者の皆さんが難しいときに援助する役目でした。

完成したときの皆さんの表情はとっても嬉しそうで、満足感に溢れていました。この布絵教室は、とても楽しみな時間でした。
いろんな手芸があるものですね。製作風景を紹介してみましょう。


<布絵教室の様子>

   

まず、いろんな布から、好きな模様を選び、形を整えます。台紙も好きな模様を選べます。

   

形ができたら並べて配置を決めます。目を貼ると、生きているみたいです。

   

配置は、講師がちょっと手を加えて修正すると、絵が生き生きするから不思議でした。センスと言うのは、磨けば磨くほどよくなるんだなといつも感心していました。額縁に入れて完成です。

和紙を使ったちぎり絵はよく見かけますが、布絵は、初めてでした。これから、気に入った布切れがあれば、取っておこうかなと思います。何か作れそうな気がします。
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語りかける仕事

2015年01月23日 01時53分31秒 | デイケアものづくり

初めて編物をしたTさん。ただいま、細編み練習中。練習しながら作品ができていきます。


介護職は、語りかけがとても大切な仕事だなと思います。
デイケアに来られる方は、どなたも病気や怪我で身体が不調になったり、精神的に気弱になっている方が多いのです。どう語りかければ、自然にうちとけて楽しく活動できるだろうかと、いつも意識して仕事に向かっていたのです。私はデイケアのリハビリの方法として、ものづくりを担当しました。編物教室はその一つで、心と体のリハビリをしていくことができるのです。

Tさんは、特に介護は必要のない方でした。ご主人が亡くなられて、家事はお嫁さんに任せ、家に閉じこもりがちで、体重増加による体調不良を起こしていました。ご家族とケアマネジャーのすすめで、ようやくデイケア参加を受け入れました。外へ出ることが苦手な方だったのです。
何もしたくないと、消極的だったTさんですが、他の利用者が一生懸命編物をする様子を見ているうちに、興味を持たれました。それに気づいて、Tさんを編物に誘ってみましたが、「だめよ、一度もやったことが無いんだから。」とやろうとしません。最初は、くさり編みだけやり方を見せて、やってもらいました。すると、上手に編めました。目がそろってきれいに編めていると、何度も声をかけ、次は、細編みを覚えてもらいました。週に一度、細々を編み続けるうちに、「編物をしたのは、人生で初めて。これは楽しいね。ずっとここにきて、私は編物をしたい。」と言ってくれるようになりました。


そして、少しずつ長く編めるようになり、巾着袋が完成しました。その後も、私は死ぬまでここ(デイケア)へきて、編物をしたいと話されていました。ちょっとした語りかけが実を結びました。



Hさんは、2年前からこのマフラーを編んでいます。体調のよい時に、一針ずつ糸をかけてゆっくり編んでいくのです。
Hさんは、パーキンソン症を持っている方で、身体が硬直したり、手が震えて思うように動かないことがあります。細かい作業が出来にくいので、編物は難しいかなと思っていました。でも、Hさんの方から、編物をしてみたいと希望を言われました。作り目は援助し、棒針を支えながら、糸をかけ、編んでいきました。難しいところは、代わって編み、できそうなところは、見守ります。いつのまにか、こんなに長く編めていました。お孫さんに編んであげたいという気持ちが、意欲につながったのでしょう。Hさんとは、編物を通して大の仲良しになりました。


私が介護職をしてみようと思ったのは、53歳の時でした。人に関わる仕事がしたかったのです。

施設長との面接で、「私は、介護の体験がないのにうまく仕事が務まるでしょうか」と不安な気持ちを正直に話しました。すると、「あなたの親が介護が必要になった時、たとえ初めてでも一生懸命世話をするでしょう。誰でも相手のことを思っていれば、介護は出来るのです。」と言われました。その時、この仕事をやってみようと心が決まりました。

介護の技術というものは、体験によりだんだんうまくなります。でも、相手を思って語りかけたり、相手の話を受け止めることは、なかなか難しいことなのです。
たくさんの利用者の方と出会ううちに、いろんな語りかけで、相手が喜んでくれること、いろんな話をしてくれるようになったことが楽しくてたまらなくなりました。
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小さなかわいい人気者ばあちゃん

2015年01月11日 20時57分01秒 | デイケアものづくり


今回は、デイケアに勤務していた頃に出会った女性のお話です。その人は、みなさんから「さえちゃん」と呼ばれていました。私たち介護職は、たとえ利用者と親しくなっても、愛称で呼ばないようにしようという決まりがありました。ちゃんとした名字で呼び、人格を尊重したいからです。でも、この方は、あまりに小さくて可愛いいから、さえちゃんと呼ばせてもらいましょう。昭和6年生まれのおばあちゃんです。認知症の方です。かわいいのですが、一筋ではいかない方でした。

さえちゃんは、毎日のようにきれいでおしゃれな洋服を着て来られました。また、ばっちりきれいにお化粧をして口紅も赤くくっきりと、それがとてもよく似合っていました。ただ、普段から広島弁の口汚い言葉を使います。
洋服を褒めると、「当たり前ようの、うちにゃあ、こがいなのがなんぼうでも(いくつでも、いっぱい)あるんじゃけ。」と返事がかえって来ます。お化粧が上手じゃねと褒めると、「うちのお父さんにべっぴんをみてもらうんです。女子(おなご)はいつもきれいにしとらんにゃの。」とまんざらでも無さそうです。
話を聞いたところによると、さえちゃんは一人娘で、それはそれはご両親に可愛がって育てられたのだそうです。ご近所の方もそれをよく知っています。今では、優しい息子さんご夫婦のお世話になっています。わがままなさえちゃんを、怒りとばすこともなく、息子さんはよく面倒を見ておられて良い方だなと思いました。お嫁さんも、「いつもお世話をかけてすみませんね」と職員に頭を下げる方でした。

デイケアでは、リハビリのため、体操をしたり、工作や手芸、書道などいろんな活動に参加してもらえるよう職員が準備や計画をして望みます。けれど、さえちゃんは、動くのがすきではありません。足が大きく浮腫んで、思うように動かないのです。それでも、みんなが声をかけ体操に誘います。どうしても動かない時は、よいしょよいしょと、座っている椅子ごと移動してしまいます。みなさんの輪の中に入ると、楽しそうに参加していました。

ものづくりの時間になりました。かわいいタオル人形の見本や手工芸の見本が机の上に置いてあります。さえちゃんは、そういうかわいい飾り物が大好き、さっさとポケットに入れたり、鞄に入れて持ってかえろうとします。「それは、材料費を払って、自分で作らないと持ってかえれないことになってますよ。だから一緒に作りましょう。」と説明します。すると、財布を出して、「買(こ)うてかえるんじゃけ、なんぼ?」とゆずりません。少しでも活動に参加してもらおうと、職員も根気よく声をかけますが、「ようやらん。」(つくれないの意味)と彼女はいつもじっと座って他の利用者が活動している様子を見ているばかりでした。

ある時は、気分不良で家に帰ると言って聞いてくれません。玄関前に職員が通せんぼをして、何とか引き止めようと苦労していました。男性職員が引き止めると、わりと聞き分けてくれて、また座席にしかたなく戻ってくれます。そういう効き目のある職員が不在の時は困ってしまいます。ですから、悪いのですがさえちゃんの鞄は、いつも隠されていました。帰りの時間になると、ちゃんと鞄が返って来ているので、さえちゃんはいつも知らずに感心していました。それからまたまた、不機嫌なことがあり、大声でわめいていました。
あるとき名案を思いつきました。さえちゃんの耳元で「いいものがあるんよ、ちょっとこっちへ来てみてね」とのど飴を一つあげました。すると、喜んで帰ることを忘れたのでした。この方法はその後も何度も成功しました。だから、デイケアにはいつもあめ玉が置かれていました。

ものづくりになかなか参加しないさえちゃんでしたが、生け花の時間は大好きで時々参加してくれました。フラワーアレンジメントの時間で特別な生け方はなく、季節の綺麗な花を楽しみながら好きな位置に花をさしていきます。その時だけは、自分の手で花を生けてくれました。私は、できるだけさえちゃんの考えや発想が生きるように声をかけたり援助したのです。

そのさえちゃんが、大好きなご主人が亡くなられてからは、まったく元気を失ってしまいました。お化粧もしなくなったのです。しばらくは、「お父さん(ご主人)は生きとるんじゃ。」と言ってきかないのでした。その姿を見ているとさえちゃんのぽっかりと穴が開いたような寂しさを思い、切なく悲しい気持ちでいっぱいになりました。
デイケアを退職してずいぶん時間がたってしまいました。その後、さえちゃんは、どうしているのかなと思い出します。

老人施設を利用される方で、認知症の方がたくさんおられ、症状もさまざまです。その人の人柄を理解するのは大変です。慣れないうちは、うまく言葉が浮かばず、話題が浮かびません。でも、好きなこと、昔やっていたことや得意だったことなどを上手に聞き出して、一緒に楽しめるようになると、だんだんと相手も心を開いて打ち解けてくれます。同じ話を繰り返し何度でも「そうですね」「よかったですね」と共感するといいのです。この施設でたくさん私は温かいものをみつけました。



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編んでほどいて、また編んで

2014年12月07日 18時26分07秒 | デイケアものづくり

この帽子の見本が大人気でした。

今回の編物教室のお話は、毛糸の帽子を編んだことです。

冬が近づくと、毛糸の帽子が編みたいとの声が聞かれるようになりました。さっそく見本を作ろうと、編物の本を探し、毛糸を選んで見本を作りました。(上記の見本です)

帽子というのが一番編みにくかった気がします。それは、本の通りに編むのは大変で、編み目の数の増減が理解しにくい。また、糸の太さによって大きくなったり小さかったりで、被る人に合わせた大きさに編むというのができないのです。利用者の方が編むときは、一段ずつ、編み目の数を教えてあげて、大きく編めて来たら、頭に載せて目の減らし加減を調整しました。


ある日、酸素吸入をしながらHさんがデイケアものづくりに入られました。若い頃から看護士として全力投球で家を支え、働きとおしてきたしっかりもののHさん。病気で倒れ、意識不明から回復され自宅へ帰るまでにお元気になられたのですが、すっかり気力をなくしていました。こんな体で生きていたくないと悲観するつぶやきがよく聞かれました。
Hさんは、息子思いで、編物が得意だったそうです。息子に編んでやった毛糸の残りを家から持ってこられ、毛糸の帽子を編み始めたのです。



編んでほどいて、また編んで。またまたほどいて、また編む。「前は、いくらでも上手く編めたのに・・・情けない。ダメになった。ダメになった。」そうつぶやきながら、また次の日には、編み始めます。

Hさんは、顔色も青ざめ、笑顔も少ない方でした。しばらく座っていると、腰の痛みに襲われます。休みながら気分を変えて気晴らしに編んでもらっていました。
日が経つにつれて、体調もよくなり、編物を楽しみにされるようになりました。そしてある日、お化粧をしてピンクの洋服を着てこられました。
「わぁ、きれいですよ。洋服も色が良くてとても似合っていますね。」
そうほめると、とっても嬉しそうにされました。それからは、亡くなられたご主人に買ってもらったブラウスだとか、おしゃれな上着など着てこられるようになりました。
髪型が変わったこと、服装の似合うところなど、どんどん見つけてほめます。これは、とっても大事なんです。

そして、とうとう毛糸の帽子が出来上がりました。



編み方がきつくきっちりと仕上げる方のようで、少しでこぼこした出来上がり。松編みの模様も浮き出て、素敵な帽子の完成です。編物教室のメンバーとよもやま話で笑いながら、楽しんで編むことができて本当によかった。

編み物は、一つのきっかけです。リハビリの目標は、失った能力をもう一度取り戻すこと、前と同じまでに戻らなくても、やってみようという意欲を持てることなのです。
できなかったら、援助します。できそうなことは、励まし見守ります。うまくできたら、職員もいっしょに大いに喜びます。そういう楽しい編物教室でした。
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手編みの楽しみ  

2014年12月05日 12時44分49秒 | デイケアものづくり


毛糸の小さな手提げバッグが完成した。ポケット付きの中袋をつけて、夫の孫へ絵本と一緒にプレゼントしてあげたいと思っている。



この手提げ袋のポイントは、持ち手の作り方だ。細長く編んだひもを中表に丸めて筒状に閉じて縫い付けている。平らなひもよりふくらみがあって丈夫で持ちやすい。



素材は、並太でアクリル100%の毛糸を3玉。100円ショップで買ったものだが、糸が固く、編みあがりが丈夫である。段染め毛糸は、編みあがりの模様が変化があって楽しい。ただ、100円ショップの毛糸は、売り切れると同じものが入荷しないことがあるので、多めに買っておくのがいいと思う。


このバッグをデザインしたのは、デイケアで編物教室をやっていたときである。
初めての編物では、くさり編みと細編みは覚えやすい。どういった題材がいいだろうかと考えているうちに、「細編みで繰り返してできるもの」で、「時間をかけなくても作りやすい小さい作品であること」、「日常で使えるもの」がよいと考えた。


デイケア当時、編物見本にしていた手提げバッグ。見本があると意欲が湧く。

エコたわし、小さな財布、眼鏡ケース、巾着、ペンケースなど気楽に取り組めてよかった。はじめのうちは、難しいとかできないからと敬遠されていた方が、少しずつ編んでいくうちに楽しんでできるようになり、編み物はやっぱりいいなと感じた。


◆作品紹介◆


お財布と眼鏡ケース。眼鏡ケースは、今もカバンに入れて使われている。


編物の好きな方で、編んでいるうちにご自分でデザイン。中にスポンジが入っている。可愛いたわし。


編み方が分かって、同じ形でいろんな表情を工夫して、楽しいエコたわしになった。


デイケアでやる編物は、作品を作ることも大切だが、自分でもやれるという意欲や自信を持ってもらえることだ。
毛糸という素材も扱いやすい。コツコツ編んでいけば、確実に成果が見えるので、利用者の皆さんからはとても喜ばれた。



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