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子タコのキューちゃん物語・番外編【南へー2】

2011年08月02日 | 童話
ある波の高い夜のことでした。

夕方から降り始めた雨は、夜になって段々強くなって行きました。

キューちゃんとクロちゃんは、非難するために小さい島を見つけて、

その近くで朝を待つことにしました。

でも、雨は強さを増し、まるで台風のような風も出てきました。

クロちゃんは、疲れたのかすぐに眠ったけれど、キューちゃんは

台風が怖くてなかなか眠ることが出来ませんでした。


すると、突然、ゴーッと言う大きな音がしたかと思うと、

強い風と共に、大きな波がザブーンと二人を飲み込んでしまいました。

「うわーっ!クロちゃん・・・。」

キューちゃんは、叫ぼうとしたけれど、波に飲まれて声を出すことが

出来ません。

キュ-ちゃんは、暗い暗い海の底に沈んで行ってしまいました。

クロちゃんは眠ったまま気付きません。

キューちゃんは、波に押し流されて、どんどん遠くへ行ってしまいました。


嵐が治まって、キューちゃんが気付いたのは、次の日の朝の事でした。

昇る朝日で海がキラキラと輝き、その眩しい光でキューちゃんは

目を覚ましました。

「ここはどこ?クロちゃん、クロちゃん・・・。」

キューちゃんは、クロちゃんの姿を探しましたが、どこにも見当たりません。

仕方が無いので、一人で波の上をプカプカと浮いていました。

だけど、広い広い海の上で、たった一人でポツンといると、淋しくて淋しくて

涙が出てきます。


キューちゃんがしばらく浮いていると、たくさんのカモメさんが

キューちゃんの上を飛んで行こうとしていました。

「あれ?君は明石の海で、貨物船の後ろをクジラ君と一緒に泳いでいた

ペラペラ君じゃないか。どうしてここに一人でいるんだい?」と

一羽のカモメさんがキューちゃんに声をかけました。

「カモメさん、僕は友達のクロちゃんとはぐれてしまったんだよ、うわーん・・・。」

キューちゃんは泣きながらカモメさんに言いました。

「よし。それなら、みんなでクジラ君を探してあげるよ、心配しないで。」

そう言うとカモメさん達は猛スピードで飛んで行きました。


太陽が、キューちゃんの真上に来た頃、遠くで高い高い噴水が上がりました。

そう、クロちゃんが塩を吹き上げて合図をしたのです。

「あ、あれはクロちゃんだ!クロちゃーん!」

クロちゃんがキューちゃんに気付き、やってきました。

「良かった!きゅーちゃん、大丈夫だったんだね。」

「うん。でも、すごーく淋しかったよ。」

またキューちゃんは、クロちゃんの背中にぴったりと貼りついて

クロちゃんと一緒に南へと向かいました。


<続く>







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