雑賀孫市(まごーん)の中の人ブログ

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ネット展示してみる〜藪内歩兵中尉『精神史話 祖国の旧山河』

2020年10月07日 10時14分14秒 | 収集品
 お久しぶりです。まごーんです。1ヶ月、間が空いてしまいました。
 今回は、奈良県に所在する、奈良大学の創設者である藪内敬治郎(1886〜1977)先生(以下、敬称略)に関するものです。






こちらが今回紹介する藪内が著した『精神史話 祖国の旧山河』(大正2年)です。

 藪内は、郡山中学校(現在の郡山高等学校)を経て陸軍士官学校第19期生を卒業しました。
同期には今村均大将らがいました。
 京都歩兵38連隊や奈良歩兵第53連隊へ配属された藪内は、部隊内の教育を担当していたようです(『学祖 藪内敬治郎先生』)。
 
 上記の冊子はこの頃に部隊内や、奈良市で行われた奈良に関する歴史講話をまとめたものです。「連隊」というのは地域密着型なので、郷土史という観点から効果を見込んだのでしょう。ところどころに「皇軍」と関連付けているところから、兵隊に対しては、自軍と郷土奈良との関連を意識させ、地元住民にはその逆で郷土と日本軍を意識させていったのではないか、と思っています。
(講話からみた郷土と連隊の関連がある論考はまだ捜索中ですので、妄想でしかありませんが)

 この本は非売品で私家本に近いものですが、藪内が1人で書いて終わり、というわけではなく当時奈良帝室博物館学芸員を務めていた水木要太郎氏が校閲を担当しており、しっかりしたものであるといえます。
 非売品ということで藪内が近しいものに配布したと前書きに記されているのですが、大正期の陸軍軍人である、上原勇作元帥大将の蔵書にもあり、上層部にも届いていたことが推測されます(山崎有恒編「都城市立図書館所蔵『上原文庫』調査報告書」立命館大学文学部日本史学専攻山崎研究室、2009年、45-46頁)。
 
 以上が、『精神史話 祖国の旧山河』です。藪内の著作としては、この1冊のみしか確認できません。藪内は学校教育者として講話など何回も行ってはいますが、紙史料もほとんど確認されていないのが現状です。
ですので本書は、藪内の考えを覗くうえで貴重です。

 藪内の史料として、年賀状や色紙、若い頃の写真などが残っていることが『故藪内敬治郎先生を偲びて』で確認できます。
 とくに写真は子孫の方が所蔵しておられると思われますが、現在その行方はわかっておりません。

 もし藪内敬治郎先生のご子孫についてご存知の方おられましたら、こちらのブログに御一報いただきたいと存じます。よろしくお願い致します。

参考文献
森川正則監修担当・大久保瑞彦展示担当『学祖 藪内敬治郎先生』奈良大学図書館、2018年。
山崎有恒編「都城市立図書館所蔵『上原文庫』調査報告書」立命館大学文学部日本史学専攻山崎研究室、2009年