Prehistoric Safari
ⓒサーベル・パンサー
-およそ2800万年前、漸新世の中央アジア・・・-
ユーラシア最大のエンテロドン科種で、北米の怪物、ダエオドンsp. に匹敵する体格を誇ったパラエンテロドンsp. (Gabunia, 1964)
と、やや遠方には大型の肉歯類であるヒアエノドンweilini が、パラセラテリウムtransouralicum の死骸の周りに群がっています。
この個体は怪我や病気がもとで死んだものでしょうが、巨大なオスの同僚が、傍を離れようとしません。
その、刹那後…
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ブグティの川辺に潜む悪夢のような存在が、全員を戦慄に陥れる事態に...
:本場面に関するノート:
史上最大の陸生哺乳類はゾウではなくサイであり※、それは漸新世の中央アジア一帯を住処としていた、パラセラテリウム属
(Paraceratherium)の種類である。パラセラテリウム属が含まれるインドリコテリウム亜科(Indricotherinae)は、原始サイの中で著し
い走行性(cursoliality)への特化を遂げていた、ヒラコドンsp. から分化したと見られている。比較的に細く伸長した四肢や、僅かにウマを
彷彿とさせるプロポーションは、祖先から継承したものだ。
パラセラテリウムの最大種はParaceratherium orgosensis で、肉付けを想定した上での肩高は4.8m、体重は16.5t と、それぞ
れ推定されている(Paul, 1997)。本種は巨大化傾向が続いたインドリコテリウム亜科の頂点であり、例えば歯の大きさを比較すると、上
野科博に骨格標本があるParaceratherium transouralicum のそれを、平均的に25%も上回っていた。
(上野の標本は以前紹介した通り、肩高4.5m) 写真ⓒサーベル・パンサー
漸新世は肉歯類の中~大型種が依然として権勢を誇っていた時代であり、畏怖すべき “ハンティング/スカヴェンジング・ホッグ”、エンテロ
ドン科の巨大種(イノシシによく似るが、実際はカバに近縁)も、北半球各地で繁栄していた。
こうした状況下でも、超特大級のサイズを鑑みて、成獣のパラセラテリウムが攻撃の対象になることは考えられなかったであろう。私見で
は、上述の走行性特化の残滓ともいうべき形態は、インドリコテリウム亜科が超大型化を果たしてから以降、機能的には意味をなしてい
なかったのである。
ところが、成獣のパラセラテリウムをも襲い得るのではなかろうかという、唯一の存在が、Protheroの上梓した最新著書('Rhinoceros
Giants: The Paleobiology of Indricotheres', 2013)にて、初めて紹介された。
ブグティの漸新世地層から得られた複数のパラセラテリウム骨格には、クロコダイルの歯型に該当するであろう、大きな咬み跡が認めら
れるという(P.-O. Antoine, pers. comm., 2011)。推定の全長は10~11m。暫定的な学名(Crocodylus bugtiensis)も記されて
いる反面、ほとんど詳細は割愛されているし、本書以外で漸新世の巨ワニについて触れられている文献(論文)を、管理人は知らない。
無論、プロセロ博士は北米の古脊椎動物学界の大御所である。根拠のない記述をすることは考え難いのだが。ブグティワニ(仮名)が実
在したとして、パラセラテリウムの成獣個体を襲撃することは、本当に可能だったのであろうか。
漸新世のアジアは、ご覧のようなメガファウナ間のスペクタクルが常的に展開する、スゴイ場所であったようだ。
※内蒙古のアジアステップマンモス('Zhalainouer Ⅱ&Ⅲ specimen')の実物骨格は、肩高約4.3mであり(Larramendi, 2013)、規
格外とされた骨盤は実物ではなく、石膏による補強部位であることが分かっている。
アナログの絵、文責: ⓒサーベル・パンサー
何か、ブロントサウルスとアパトサウルスの件を彷彿とさせますね。
れた「Paraceratherium」以外の属名は、無効になっ
たわけですね。名称の統一までに紆余曲折あったの
は、主に年齢や性差を度外視したサイズの違いを根拠
に、属レベルでの仕分けを主張する声が根強かったた
めと聞きます。
特に、インドリコテリウムの名称は露出度が高いよう
に思います。無効化したはずの現在でも、愛着を持た
れている方が多いのではないでしょうか?
上述の最大種に限ると、ズンガリオテリウムなる仰々
しい(?)響きのシノニムもあります。どの名称によ
り親しんできたかというのは、ある程度、世代によっ
ても変わってきますかね。
パラセラテリウムには現在4~5種が分類されていて、
いずれも例外なく巨大でした。個人的には、イラスト
クラスの怪物ワニ(推定体重は4~5トン程になるでし
ょうか)であっても、亜成体ならまだしも、健康な成
獣個体を襲うことには、さすがに無理があったのでは
ないかと想像します。