次回『バトル・ビヨンド・エポック』シリーズの7作目では、アフリカ大陸東部という、新生代を通じて世界規模で見ても屈指のメガファウナ密度を保持してきた地域において、直近の三エポックそれぞれを代表する最強の大型肉食獣の復元画を、比較的詳細な説明文と併せてご紹介します。
各種の個別紹介を続けます。今回は、鮮新世にアフリカ大陸南部と東部地域を中心に分布していた大型のクマ、「アフリカショートフェイスベア(アグリオテリウム属最大種)」です。
バトル・ビヨンド・エポック其の七で全種を一度にフィーチャーするわけですが、その際にそれぞれの形態や体のサイズを比較吟味してみてください。
バトル・ビヨンド・エポック其の七では、個人的な見解のもとに各種の「能力チャート」ごときものを数値化してみたので、それも併せて記載します。勿論、この能力チャートは学問的根拠を欠く興味本位の戯れ事に等しい試みであって、何らの資料的価値を有するものではありません。ただ、各種の形態要素に関する理解に幾らか与するところは、あるかと思います。
©the Saber Panther(Jagroar) (All rights reserved)
アフリカショートフェイスベア (the African Short-faced bear / Agriotherium africanus)
鮮新世のシロサイ、Ceratotherium praecoxに襲いかかる場面
バトル・ビヨンド・エポック其の七で全種を一度にフィーチャーするわけですが、その際にそれぞれの形態や体のサイズを比較吟味してみてください。
バトル・ビヨンド・エポック其の七では、個人的な見解のもとに各種の「能力チャート」ごときものを数値化してみたので、それも併せて記載します。勿論、この能力チャートは学問的根拠を欠く興味本位の戯れ事に等しい試みであって、何らの資料的価値を有するものではありません。ただ、各種の形態要素に関する理解に幾らか与するところは、あるかと思います。
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アフリカショートフェイスベア (the African Short-faced bear / Agriotherium africanus)
鮮新世のシロサイ、Ceratotherium praecoxに襲いかかる場面
アフリカショートフェイスベア(アグリオテリウム属最大種)について
史上有数の大型クマ科動物。推定体重は優に500kgを超えます(Sorkin, 2006)。中新世後期の頃にヨーロッパに分布していた古風なクマ、インダルクトス属の一部から分化したとみられ、ウルサヴス亜科に分類されていますが、その進化系統については諸説ありいまだに不明瞭な状態です(例えば、祖先たるインダルクトス属自体はパンダ亜科に含まれる場合がある)。
クマ亜科の種類と比べると、比較的に短吻、骨砕き適応の頬歯、前脚が伸長しているなど、驚異的に大柄な体躯と併せて、更新世アメリカ大陸のジャイアントショートフェイスベア群との形質上の類似が色濃い。このため、英語文献においてアグリオテリウム属種も縷々ショートフェイスベア(short faced bear)の通称で表記される例が見受けられます。
アグリオテリウム属種とメガネグマ亜科の種類とでは生息年代、分布、進化系統のいずれにも隔たりがあるとされているにもかかわらず、この類似の度合いは注目に値すると思います。もっとも、メガネグマ亜科のショートフェイスベア群と比べると、アグリオテリウム属種の歯形にはイヌ科的な特徴が残存していたといいます(Kurten, 1968)。
恐らくは摂食生態(feeding ecology)も似通っていたことが考えられますが、頭蓋‐歯形(craniodental)の形態機能や微細歯質咬耗の分析を通じてアグリオテリウム属最大種(Agriotherium africanus 以下、アフリカショートフェイスベアと表記)の摂食生態を調べた研究は複数あり、その主張も雑食性とする仮説(Sorkin, 2006)や、草食の可能性を除外しないまでも、摂食に占める割合は小さかったことを示唆するもの(Wroe et. al., 2013)までまちまちです。
最近では、Stynder et al.(2019)が計6個の下顎第2大臼歯を対象とした微細歯質咬耗の分析結果から、アフリカショートフェイスベアの摂食は主に脊椎動物の肉および骨で占められていたとする結論を出しました。
ただし、クマ科は種類によって食性が多様であることや、イヌ科やネコ科などと比較して、頭蓋‐歯形の形態及び形態機能と、摂食行為(dietary behavior)との関連性が明瞭ではないという特質があるため、この場合も脊椎動物の摂食が主にスカヴェンジングによるのかハンティングによるのか判然としないとのこと(Stynder et al., 2019)。
しかし、この問題についていわば白黒つける必要などないと思います。やはりアメリカ大陸のジャイアントショートフェイスベア群と同様に、アフリカショートフェイスベアもまた、狩猟、クレプトパラサイティズム、時に植物食というように、臨機応変に摂食手段を切り替えていたというのが実態なのではないでしょうか。
とまれ、最後に付け加えると、アフリカショートフェイスベアは類稀な顎の力の持ち主でした。肉食獣の咬筋力の一連の研究で著名なWroe(2013)によると、肉歯類やエンテロドン科種を含まずに食肉類のみに限定した場合、彼が分析に携わった中で咬筋力最強はアフリカショートフェイスベアだったということです。まさしく、鮮新世で最強クラスの肉食獣の座にあった存在でしょう。
とまれ、最後に付け加えると、アフリカショートフェイスベアは類稀な顎の力の持ち主でした。肉食獣の咬筋力の一連の研究で著名なWroe(2013)によると、肉歯類やエンテロドン科種を含まずに食肉類のみに限定した場合、彼が分析に携わった中で咬筋力最強はアフリカショートフェイスベアだったということです。まさしく、鮮新世で最強クラスの肉食獣の座にあった存在でしょう。
イラスト&文責 by ©the Saber Panther(Jagroar) (All rights reserved)
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