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寓話の部屋

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第081話 グンマー戦争 Day-1 K-ファイター

2021-10-21 09:16:25 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第八十一話 

主攻のツイステ空軍の管制空域に到着すると、既に第一波同士の戦いは終了していた。

カン・ノヤフオク大尉
「あれー、もう終わってら、遅かったかあ…。F-1戦闘機なんていねえぞ。あ、地面に墜ちてらwww」
と地上の煙を見て嗤う。

「気が済んだでしょう。帰りましょう。」
と司令部に命令違反がバレるのを恐れた部下が窘める。

しかし、地上のグンマー軍の対空監視網にはコーライ空軍部隊の接近は察知されており、有線魔伝装置にて、グンマー空軍基地に迎撃部隊の出撃が要請されていた。
即応能力に優れた、木-106の第二波部隊が40機、接近に合わせて上がってきたのであった。

「ひゃっほう!そうでなくっちゃなあ!」
と喜色を露わにするカン・ノヤフオク大尉。
こうなるとバレずには済まないなと目を覆う良識派の部下…。

「各編隊、訓練通りにビシッと決めろよ!散開!」
のかけ声とともに、増槽を落とすと、4機編成の編隊ごとに分かれるFAE-50戦闘機部隊。
FAE-50は、先にも述べたように純粋な戦闘機として設計されたわけではない。
爆弾やロケットランチャーをたくさん積載するために優れたエンジンパワーを持った攻撃機がベースの間に合わせの戦闘機である。
お世辞にも旋回性能に優れているとは言えない。
ドッグファイトなどやりたくても出来ようはずもなかった。
できるのは素早くダイブして、素早く急上昇するだけという攻撃機上がりの降下・上昇運動性能とプロペラ機としては理論限界に近い最高速度だけが自慢の直線番長である。
この機体で戦闘機動を組み立てるには、性能の制限・特性により、一撃離脱戦術しか無い。だがそれがよかった。
高度な三次元戦闘機動などコーライ人の気質には合わない。
ガーッと行ってガーッと逃げる。そんな単純な戦術はコーライ人にはピッタリだった。
もちろん、ただ突っ込むだけで敵機を墜とせると思うほど、エリートたるコーライ空軍軍人は、おめでたくはない。
四機編成で、1機が囮になり、敵機を引きつけたところをやや上空に待機した残りの三機が波状攻撃をかける。
まあ、三機でかかれば一機くらいの弾は当たるだろうという大雑把な理論であるが正解でもある。
この戦術が猛威を振るったのは、ミサイルの性能向上・普及が成される短い間でしかないが、Lotte戦術と呼ばれ有名になる。
コーライ空軍機は戦隊間で音声通信が可能なのも戦術的には大きい。
この戦術で一番危険なのは、囮役であり、敵の攻撃を引きつけながら、躱し続けられる技量が必要で、必然的に小隊長か先任下士官が務めることになる。
撃墜を成し遂げた部下の僚機には小隊長がチョコパイを奢るのが慣習になっていた。

しかし、カン・ノヤフオク大尉が得意としたのはこの戦術ではなかった。彼は後に語る。
「敵機に上手く当てるコツ?そりゃ、敵機の面積が一番大きくなる角度から攻撃すんのが肝要よ!」
つまりは、上空から逆落としを行い、敵機の直上から見越し射撃でエンジン・コクピットを打ち抜き、ダイブでやり過ごすと再び急上昇し、次の獲物を探す。
まだ相手が大型爆撃機ならともかく、戦闘機相手に、誰にでも出来る技量ではなかった。
Lotte戦術は、凡庸な技量でも確実な戦果を挙げられるように考案した戦術であったが、彼には性に合わなかったのだった。
これに付き合わされる気の毒な僚機はコーライ空軍の最精鋭の3人。この戦争で全員がエースパイロットになる。

木-106の40機、FAE-50の36機が、入り乱れた戦闘が始まった。
面白いようにF-1戦闘機を墜とせた直前の成功体験から、ドッグファイトに持ち込もうとする木-106。
それに一切無視して、突っ込んで一斉射し、弾が外れたら執着せずに、木-106には追従できない速度で急上昇するFAE-50。それが三回。
無駄な射撃が少ない戦術の上に、600発の携行弾薬を搭載するFAE-50の継戦能力は高く、このLotte戦術で木-106は次第に削られていくのであった。
20分もすると木-106の戦闘限界時間が近くなり、撤退の合図とともに去って行った。

「ひーふーみー、損害は4機かあ。なあ、俺は7機食ったぞ。お前らはどーだ?」
と戦闘を満喫したカン・ノヤフオク大尉がつやつやした笑顔で魔動通信機に語りかける。
「それより、どうやって言い訳するのか考えておいてくださいよ…。」
と苦労性の下士官。

結果的には木-106は30機撃墜され、FAE-50は4機失われたが、大勝と言っていい戦果であった。

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「なん…だと…。」

その大戦果の一報を聞いた空軍幕僚。
帰還したコーライ空軍から報告を受けると、驚愕に呆ける。
「なんで、お前らがその空域にいるんだよ!それも大勝って…。」

自慢の最新鋭機部隊があえなく敗北したのに、活躍しないように端っこに追いやっていたはずのコーライ空軍がその敵相手に快勝とは!
二重のショックで打ちのめされるツイステ空軍将校。

だが陸軍出身の多国籍軍総司令官オーノー・シュバルツコフ将軍はそんな些末なことには頓着しなかった。
「すごいじゃないか!これで光明が見えたぞ!(空軍のメンツなど知ったことか!)」
と喜色満面に浮かべる。

「しかし、なぜこれほどまでに差が出たのでしょう…。」
と頭脳派参謀は首を傾げる。
「なにか秘密があるはずだ。戦闘詳報をすぐに挙げさせろ!そして戦術の問題点・改善点を洗い出すんだ。作戦は今も現在進行中だ。急げ!!」

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そんなお偉いさんの指示など必要もなく、帰還したコーライ空軍パイロット達は、既にツイステ空軍・モトヒノ空軍のF-1戦闘機パイロット達に囲まれ、もみくちゃにされていた。
「どうやって、あのすばしっこいダイシン帝國機を墜とせたんだ!?」
「ミサイルは効かないし、くるくる回ってとても機関砲の必中の射撃位置に付けられるとは思えん!」

カン・ノヤフオク大尉が答えた。
「はッ。何言ってんだ。相手の得意な領域で戦ってどうすんだよ。戦争は相手の嫌がることをするのが大事なんだよ。帝國人相手に飛行機カンフーなんかするから墜とされるんだよwww。”殺し合い”なんかするんじゃねえ。一方的に殺せる状況を作るんだ!」
と、機嫌良くしゃべらせるために授業料として渡されたチョコパイ(ツイステ空軍パイロットがPXに走って購入してきた)を両手に持ち、それを飛行機に見立てて、コーライ空軍の必勝のマニューバについて解説した。
その講義により、頭脳明晰なツイステ空軍・モトヒノ空軍のエリートパイロット達は、自分たちの過ちに気がついた。

「そうか、使えない重いミサイルを抱えてドッグファイトなど自殺行為だったんだな…。」
「次の出撃ではミサイルは外していこう!」
「Lotte戦術を真似るにしてもF-1戦闘機の機関砲の120発という弾薬数ではなあ。」
「それは言っても仕方がない…」

カン・ノヤフオク大尉は追い打ちをかけるように更に言う。
「ていうかさあ。墜とせないなら墜とせないでしょうがねえだろ!うちの若いのにも使えねえヤツはいるが俺のマネをしろって無理強いする方が馬鹿なんだよ。使えないなら使えないなりの使い方を考えるのが指揮官だろ。アパムだって弾を持ってくるくらいのことはできるんだぞ(誰だよアパムって…ていうかヤツは結局持ってて無いw)。そもそも、我々の任務は敵の航空脅威を排除することであって、敵機を墜とすことじゃねえんだぞ。どうも相手の乗りモンは継戦能力に問題があるようだ。墜とせないまでも追っ払うだけでも充分、作戦目的は達成できるだろ!墜とされさえしなければ、お前さん達は得意の無尽蔵な物量の補給があんだから、何回でも追っ払いに再出撃して、馬車馬のように働け!」
戦闘中はあれだけ敵機撃墜に血道を上げていたくせに、心に棚を作って偉そうにw。

粗野極まりないカン・ノヤフオク大尉の物言いであったが、戦争の本質を言い当てていることを優秀なツイステ空軍・モトヒノ空軍のエリートパイロット達は即座に理解し、目に希望の光を灯したのだった。

このエピソードの後、すぐさま、「木-106と格闘戦をしてはならない」「木-106と低速域で戦ってはならない」「攻撃を外したら未練など残さず、すぐに逃げろ!」という三つのNeverが、F-1部隊のパイロット達に共有された。
音声通信機による綿密な共同が必要とされるコーライのLotte戦術をすぐに真似られるはずもなかったが、この三つの原則を守るようになっただけでも、木-106とF-1戦闘機のキルレイシオは格段に改善し、なんとか航空優勢を確保することに成功するのだった。



1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (チキンサラダ)
2021-10-22 19:15:59
Rotte 戦術ならぬ Lotte 戦術とは。笑わせて頂きました。
細かなところにも仕込みがあるのが良いですね。
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