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第135話 釣り捨てガンギマリ

2022-06-15 23:31:19 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十五話 

ツイステ合州国が裏切った!
そんな絶望的な知らせを受けても、大学生を中心とする若者達に絶望は無かった。
2年の兵役を終えて復学したばかりだったが、その兵役の様相も近年では一新され、かつてのイジメは鳴りを潜め、近代化した最新鋭のコーライ軍の尖兵たるべき合理的な猛訓練に新兵イジメをしている暇もなくなったのである。
兵役を満期終了し大学の残りの課程を終えたら士官学校に志願し再入隊するという者も少なくなかった。
最新兵器や新しい戦術を駆使する新生コーライ軍はそれだけ若者を惹きつける魅力があったのだ。
若者だけではなく、兵役経験者の中年以上の層にも、昨今のコーライの景気の良さや統一国家の成立などで明るい未来に水を差すツイステやダイシン帝國、ついでに関係ないがモトヒノに対する反抗心(これは通常運転)が有頂天の勢いであった。

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「兵役経験済みの大学生は、准尉待遇とし、郷土防衛軍を編成する。是非、志願を!」

大学のキャンパスに現れたコーライ軍の徴募官がそう述べると、みな何かに取り付かれたように我も我もと志願し、一週間後にはキャンパスはほぼ空になってしまった。

おいらこと、ガン・ギマリも厳しいがチャレンジングで楽しくもあった兵役を終えた後、復学し、残りの二年で学士号を取得したら、士官学校に進むつもりであった。
士官学校を出ても通常は、少尉任官からのスタートであるのに、郷土防衛軍に志願すれば准尉待遇になるという。
情勢を鑑みれば、戦果を上げれば、一つや二つの昇進も狙えるだろう。それから士官学校に進めば、佐官はおろか将官まで狙えるかもしれない。そんな皮算用する余裕すらあった。

ガン・ギマリには軍服が支給された。准尉の標章が誇らしかった。
小隊の指揮官に任命され、早速、部下となる面々との査閲を行った。
郷土防衛隊は、士気や仲間意識を高めるために同郷の者で編成する傾向があった。
並んだ24名の顔を見てみると、顔なじみのチキン屋の親父さん、八百屋や文房具店の店主などの年配者から、まだ徴兵年齢にも達していなさそうな小僧まで実に様々である。
兵役経験者あるいは予備役の下士官であろうオジサン達はまだわかるが、まだガキとしか言えない年少者の存在には少し不安を覚えた。まあ、荷物持ちくらいはさせられるかと割り切ることにした。
この民間人ばかりの雑多な構成の部隊に数少ない正規軍人が配された。歩兵小隊の中に砲兵部隊の前線観測員(FO)が二名。
この二名の指揮系統は変則的で、上位の原隊からの命令が優先されることがあるという話だったが、その本当の意味はよくわからなかった。

この編成の小隊員には突撃銃と呼ばれる最新鋭の自動小銃が配布された。
従来の機関銃並みの発射速度を誇り、歩兵一人一人の戦闘能力を向上させる。
また4本の対戦車ロケット砲が支給された。これは再使用可能な発射装置と、24発の弾頭が配布された。
なんでもマリリン効果とかいう新理論を利用した特殊弾頭だそうで、上手く当たれば戦車も一発で撃破可能だという。
ただ無誘導兵器な為に当てるためには、かなり戦車に肉薄する必要がある。
小銃手はこのロケット砲兵を近づかせる為にいると言っても良かった。

なお、ガン・ギマリ准尉は知らないことだったが、最近のコーライ正規軍の編成では、これに分隊支援火器と迫撃砲手、選抜射手などを加えて構成されていたのだったが、やや高価な分隊支援火器と、訓練が必要な迫撃砲・スナイパーは郷土防衛部隊には省かれた。
それでも最新鋭の武器を任された自分たちは神聖なコーライの郷土を防衛する神兵なのだと信じ切っていた。

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南コーライのとある町に続く街道。
現地の地形を知悉したガン・ギマリ准尉率いる郷土防衛隊の小隊は、ウルソに向けて進軍するツイステ・モトヒノ連合軍の車列に待ち伏せ攻撃を仕掛けた。
砲弾を利用した街道の仕掛け爆弾を起爆し、敵軍に混乱を生じさせた。
とはいえ、仕掛け爆弾で損傷させられたのはせいぜいが二、三台の車両である。
地形を利用し、小銃で弾幕を張りながら、ロケット砲手が接敵する。
あと少し、あと少しで必殺の必中距離まで達する…、そんな思いで強大な装甲車両の部隊にジリジリと攻め入る小隊員。
我慢できずにロケット弾を発射して外し、発車位置が露呈し、再装填の間に戦車の砲撃や機銃で掃討される者もいた。
一人一人、次々に倒れていく小隊員。
生存隊員が半数を切ったところで、規定の射程距離に達し、二人のロケット砲手が戦車に向けて必殺のロケット弾を発射する。
しかし、必殺ではあるが、必中の武器では無い無誘導ロケット弾の一発は外れ、一発は戦車の前面装甲に当たり、なんとか撃破に成功した。
ロケットを発射した時点で集中攻撃を食らい、再使用可能だという携帯ロケット砲の仕様も意味を成さなかった。自殺兵器としか言えない。
あっという間に、郷土防衛隊ガン・ギマリ小隊の生存者は二、三名になった。
果たして、24名の兵士の命で数台の装甲車両の撃破が、軍事的に見合うものであっただろうか。
もちろん、戦車の価格を考えれば、充分な戦果であるという考えもあるが…。

そんな必死の戦闘をやや後方で冷静に見届ける者がいた。
指揮系統を別にする砲兵部隊の前線観測員の二名であった。
彼らは、戦闘には参加せず、郷土防衛隊ガン・ギマリ小隊の攻撃により、敵部隊が20分ほど進軍を停止したのを確認しつつ、敵部隊の位置を本体の砲撃大隊に打魔伝した。
観測射を見届け、修正を送り、効力射を要請する。
無謀とも言える非正規部隊での襲撃の本当の目的は、砲兵のキルゾーンに敵軍をほんの十数分だけでも足止めすることであった。
強力な150mm砲で破壊されるツイステ・モトヒノ連合軍の車両と兵員。
言うなれば、モトヒノの戦国時代にシマツ家が得意とした、釣り野伏と捨て奸を合わせて現代兵器に置き換えたような非人道的な戦術である。

ガン・ギマリ准尉達の周りにも次々に着弾する150mm砲弾。
「なんだ…これは…!!」
「おい!まだ俺らがいるんだぞ!」

ツイステ・モトヒノ連合軍の車列と彼らは運命をともにした。

効力射の着弾を見届けると、遠方から監視していた観測員は撤退した。
彼らはすぐに次の新たな郷土防衛隊の部隊に配属される。
意気軒昂な彼らの運命を知っている前線観測員の心はどんどん死んでいった。

こうした戦術は、ツイステ・モトヒノ連合軍の航空機が航空優勢を確保するまでは猛威を振るったのだった。



1 コメント

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Unknown (チキンサラダ)
2022-06-19 20:51:18
モンロー効果....

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