寓話の部屋

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第140話 終わりの始まり

2022-07-19 11:17:29 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百四十話 終わりの始まり

大コーライ連邦によるモトヒノへの武力侵攻への懲罰という名目で始まったこの戦争。
ウルソが陥落すれば、城下の誓いでムーン政権を倒し、傀儡国家を作るという目論見は両国とも外された形になった。

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「まさか首都を放棄して逃げ出すとは、あの男のGKBなみのしぶとさを甘く見ていたわね…。首都にいるのならば隠れ家の庭にある地下穴に潜んでいようと見つけ出してやるものを…。それでどこに逃げたの?」
と忌々しげに下問するフラリー・クリトリン大統領だった。

「えー、残された資料によりますと、西海岸に要塞都市を建造し、そちらに政府機能や軍指令機能を移したようです。」

「なんでカンパネラ(ツイステの中央情報機関)は、その情報を掴んでいなかったのよッ!」

「それが、南北統一の混乱と未曾有のコーライ経済の好景気により、奇想天外な建造計画が濫立し、その怪情報の山の中に埋もれてしまっていたようなのです。なにしろ、中には、コーライ半島からトンネルを掘ってモトヒノまで攻め込む計画なんて情報までありましたもので…。」
「ちなみに、今まで相手をしていたコーライ軍は召集兵がほとんどの単なる肉壁だったという話です。ウルソからその西海岸の要塞都市間に強固な防衛線を張っており、、正規軍の2/3は未だ温存され、そちらに配備されていると…。」
苦しげに答えるカンパネラ長官・軍情報部長官だった。

「オーケイ、整理しましょう。コーライ半島の下半分は獲った。残り火と言うには少しやっかいな勢力が残っている。しかし、忘れてはいけないのは、あくまでコーライ侵攻は、ダイシン帝國との対決のための手段であって目的ではないということよッ!本当の敵はコーライ半島の上半分を獲っている国聯軍を詐称するダイシン帝國と不愉快な仲間達なの!!」

「それは承知の上ですが、無視するには残存勢力は、やや大きな戦力でもあり、放置して上コーライに侵攻を始めたとたんに背後を突かれては補給線を遮断されるなどの大打撃を受けかねません。」
と軍高官が念を押す。
「我が軍は、二国間戦争を二つ、地域紛争を一つ同時に行える戦力の保持を目標にしていましたが、ダイシン帝國を相手にするというには、それらの全ての戦力を合わせても決して絶対的な優勢を維持できるというわけではありません。まずはコーライ残党の掃討を行った上で戦力の再評価を行ってダイシン帝國との対決をすべきです。」

「それは正論ではあるわね…。?!良いアイディアを思いついたわ!そうよ、もともと、この戦争はモトヒノの報復という名目だったのだから、彼らにトドメを刺させれば良いのよ!」

「なるほど!モトヒノ軍は外征能力・継戦能力には問題がありましたが、運搬・補給などを我が軍が充分に援助すれば練度的には残敵掃討くらいはやり遂げるでしょう。彼らも溜飲が下がるというもの!なにせいぜい、燃料・弾薬くらいは奢ってやりましょうwww。」

「我ながら天才的なアイディアだわ。さっそくあの小娘に魔伝話しなきゃ…。」

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一方、その頃、ペイキンの禁裏では同じ事態についての朝議が開かれていた。

「なるほど。ムーンとあの豚は手とを手を取って、尻尾を巻いて逃げ出したか。ある意味感心アル…www」
と、マオ皇帝。

「今は、ウルソの街を二分して栄輝たる我が帝國軍と、夷狄(ツイステ・モトヒノ有志連合)軍が対峙しておりますが、このあとの方針としましては?西海岸に逃げた奴原どもを駆逐なさいますか?」
拱手して尋ねる宰相。

「…。よい。放っておけアル…。」

「へ?よろしいので?」

「そもそもコーライへの懲罰戦争の目的は、夷狄どもとの避け得ない決戦の最前線を我が国の国土から少しでも遠ざけることであり、既にその目的は充分に達しているアル。残り滓のコーライ人など鶏肋にも値しないアル。」
ないのかアルのかハッキリしろ…。
「もうコーライのことはどうでも良い。これからが本当の地獄の戦争の始まりアル…。」

もはや、読者も覚えていないだろう文化省の士大夫カン(康)・チォウ(秋)クァイが空気を読まず、口を開く。

「私めがプロデュースし、モトヒノ・ツイステに浸透した我が国の伝統と革新がクロスオーバーしたD(ダイシン)-ポップグループ、女子四十八楽坊に反戦ソングを歌わせます!歌の力で我が国に攻め入らんとする夷狄どもの戦意を挫くのです!なに任せください!ガハハ」

そういえばコイツは粛正リストに入っていたな…とマオは心の中の備忘録を読み返し、このステージに至っては、もう用済みだなと粛正を命じるのであった。


第139話 ウルソ陥落

2022-07-07 09:41:06 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十九話 

ダイシン帝國コーライ侵攻軍(国聯軍w)とツイステ・モトヒノ連合軍の微妙な緊張感が漂う中、ウルソを防衛するコーライ軍との熾烈な戦いが始まった。
市街地を盾にしたウルソ側の抵抗は熾烈であり、この首都だけは両軍とも政治的に、大規模砲撃・爆撃によって更地にするわけにもいかず、ビルひとつ、市街区ひとつの攻防に多大な出血を強いられた。

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その戦いが一段落したばかりの、とある戦線での一場面。

「大尉、敵兵の掃討が終了しました。」
「ご苦労!」

下士官の報告を受け、中隊長は大規模商用ビルから敵兵の死体を搬出する戦場掃除を命じた。

「なんだこれは?!」
「敵兵は老人と女子供ばかりではないか!」
「職業軍人らしいのはほんの数人しかいませんっ!」
「腕章に郷土防衛隊とか書いてありますぜ」
コーライ語を解する下士官が言う。

「つまりは、その辺の一般市民が銃を取って、あれだけ死に物狂いの戦闘を行ったていうのか?!」
「爆弾抱えて戦闘装甲車や戦車に突撃とかゾッとしましたわい」
「発射すると位置が暴露するので自殺兵器としか言えない対戦車ロケット弾をビルの高所から撃ってくるのも脅威でした。居場所がわかってしまえば、戦車主砲や、選抜射手の狙撃、重機の集中砲火で排除は可能でしたが、それが倒しても倒しても次々に現れましたからねえ。」

キルレイシオから言えば、10倍以上であったが、訓練された職業軍人1人と市民兵10人では、道徳的にはともかく、戦場の冷たい方程式では、割に合っていないとしか言えない。派遣軍の人数とウルソ市の人口の数を考えてもゾッとする話である。

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同じような会話はダイシン帝國コーライ侵攻軍(国聯軍w)の側でも交わされていた。

「アイヤ、コーライ人がこんな勇敢だとは聞いてなかったアル…。」
「パーパから聞いた話では、コーライ戦争の時は、すぐに逃げ出すので、ダイシン帝國から義勇兵で参加した帝國人軍事顧問が銃を撃って督戦しないとまともな軍事行動も出来なかったと言っていたアルよ!」
「大軍で攻め込む人芥戦術は我が国の専売特許だった筈アル。それがすっかりお株を奪われた感があるアル。」
「なあに人口なら我が国も負けていないアル。補充兵は、魔列車で、いくらでも届くアル!」
「おや、また新たな補充兵が到着したアルね」
「また戦死した兵士から、銃器を回収して、新兵に配るお仕事が始まるアル…。地味にアレ、心に来るアルヨ…」

ダイシン帝國軍はそれほど、軍備が逼迫しているわけでもなかったが、かといって無駄を許すほど緩くなく、再利用できるものは厳しく、回収を義務づけられていた。 銃が壊れるまでの平均時間より、新兵が死ぬまでの平均時間の方がはるかに短いという統計をダイシン帝國の軍学者が論文で発表し、それが現場に取り入れられたのだが現場の兵の心情まではまったく考慮されていなかった。

「いくら動員数を稼ぎたいからと言って、派遣した兵士の半分しか、銃をよこさないのはさすがにどうかと思うアル。」
「重砲に最近はロケット砲重視で歩兵装備はケチるのが我が軍の伝統ネ。」
「レーションも数こそ不足は無いけど、賞味期限が2年前ヨ…。現地の食物には嫌がらせかトウガラシが塗してあって死線省出身者以外には徴発も厳しいアル。それも農村地域はまだしも都市部のウルソでは徴発できる食物そのものが無いアル。」

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そんなかんだで少しずつ、市街区域を占領していく両軍。
衝突を避けるべく、互いに慎重に作戦範囲を絞っていた結果、攻撃には精彩を欠くことにもなり、市街戦は三週間にも及ぶ長期間になった。
その結果、最終局面では、ダイシン帝國コーライ侵攻軍(国聯軍w)が国会議事堂、ツイステ・モトヒノ連合軍が大統領官邸・赤瓦台を、ほぼ同時に攻め落とすという結果になった。
最重要拠点であり、防衛部隊も数・質ともに精鋭が残っていたようで、ほぼ丸一日の激闘の末、議事堂の屋根にはダイシン帝國国旗、赤瓦の上には整条旗(ツイステの国旗)が掲げられたのであった。

そして両軍とも同じような悲鳴を上げることになる。

「兵隊しかいないじゃないか!?ムーンは?キムボールは?政府高官・軍指揮官は?!」

そう、ウルソの街そのものががらんどうの”無政府”状態だったのである。
ついでに言えば、戦後統治のために、あえて手つかずだったコーライ王宮にも確認の部隊を送ると、もぬけのカラであることが確認された。
奇跡的にウルソからの軍・政府中枢機能の大脱出は秘匿に成功していたのであった。
口の軽いコーライ人も我先に逃げ出すための時には邪魔されないように口をつぐんでいたのだ。
残置部隊の必死の抵抗は、こここそが天王山であると、両侵攻軍に信じさせることが出来るだけのものがあった。

特殊部隊の選抜試験で、数十kmの行軍のゴールで「あのトラックに乗り込め」と言われて、いざ乗り込もうとするとトラックが走り出し、「どうした追いかけないのか?www」と心を折ろうとするものがあるが、両軍の心情はまさにこの状態であった。
特殊部隊の試験では、実際にはトラックは追加で数km走るだけだったのだが、この場合、まったくゴールは見えない…。


第138話 ハンカンの誓い

2022-07-06 18:08:39 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十八話 

北コーライを進軍するための大軍の戦略級極大魔法による不毛地帯の「渡河」に成功したダイシン帝國軍の南進が本格的に始まった。
コーライ半島南からはツイステ・モトヒノ連合軍に侵攻され、ガラ空きの北コーライの国土など、戦略級極大魔法さえなければ無人の野を征くが如き快進撃であると楽観的な予想であった。
しかし、旧北コーライには、対ダイシン帝國の侵攻に備えた作戦計画が何十年も前から練られており、実際にダイシン帝國軍の進軍路の橋や高規格道路は爆破され、ドラゴントゥースなどの阻害、砲撃陣地などの事前整備など、「おもてなし」への準備は万全であったのである。
そもそも、虎の子の埋設型戦略級極大魔法による防衛線が、ダイシン帝國国境に敷設されていたのが、旧北コーライが宗主国という建前で親ダイシン帝國のスタンスを取っていながら、国防上、南より警戒していたのはそのダイシン帝國であったということの証左であった。

ムーンの無謀なモトヒノ侵攻作戦に北の戦力を供出せよという命令にも、キムボール・ジョンソン将軍は危機感を覚え、練度の低い部隊を派遣し、精鋭部隊は北に残すという英断を行っていた。
人格的にはムーンに心酔しても、こと軍事に関しては盲信できないという理性的な判断が残っていたのである。
北コーライは、いくら先軍政治を行っていても、旧式装備、貧しい経済状況による弾薬備蓄の少なさなど致命的な弱点があり、悩みの種であったが、大コーライ連邦への合併により、最新装備への転換、弾薬備蓄の改善など、そのポテンシャルを最大限に発揮できる条件が揃い、旧北コーライ軍人の戦意は最高潮に高まっていたのである。

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ダイシン帝國コーライ侵攻軍(国聯軍w)の仮設司令部

「第109戦車大隊・第321自動車化狙撃大隊、敵の砲撃により壊滅しました!」
「なんだとぉ?!敵はどんな大部隊だったんだ?!」
「いえそれが、敵部隊を見ることなく、大口径の砲兵部隊の観測射撃で一方的にやられたようです。」
「なんで、移動する高機動部隊が砲兵如きにやられるんだ?」
「どうやら、前線観測員が至る所に潜んでおり、ある程度の精度は犠牲にして大量の砲撃を比較的広範囲にばら撒くことでカバーしているようです。」
「そんな、無茶責めで、弾薬が持つわけが無かろう!前線観測員の掃除も徹底させろ!」

しかし、北コーライの特殊部隊から抽出され訓練された前線観測員は、開戦前から構築され、念入りに隠蔽されていた前線観測所を転々とし、なかなか足を掴ませない。
こうした戦術により、ダイシン帝國軍の南進は、遅滞戦闘に完全に翻弄されていた。

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一方、挺身的な足止め・砲撃により、甚大な被害を受けていたツイステ・モトヒノ連合軍は、当初、外聞・国際法を気にして、民間施設への攻撃を控えていたために、捨てガンギマリ戦術により大被害を被っていた。
吹っ切れたツイステ・モトヒノ連合軍は、旧来の事前砲撃・空爆を徹底することで更地にして、前線観測員をミンチにした後に進軍する戦術に回帰した。
これにより、なんとか進軍速度を取り戻した彼らは、一路、コーライの首都ウルソに向かって進軍を再開したのだった。

空戦においても南方において接収した民間空港を改修した仮設空軍基地を次々に建造し、本土やモトヒノから呼び寄せた機体により、もはやコーライとの空軍戦力比は1:3レベルにまで達している。
国力を考えれば、その程度なのがむしろコーライは健闘しているが、さすが今世界の航空機発祥の地である。

戦車機甲戦は、戦車の性能では互角であったが、いかんせん無尽蔵かと思われる、ツイステ・モトヒノ連合軍の戦力補充に押しつぶされ、後半では航空優勢をも取られ、次々に、コーライの機甲師団は壊滅していった。

そうして、本来、だまし討ちにより、華麗にウルソを急襲し、外科的攻撃により、最小限の被害と混乱で、コーライを掌握するという構想は崩壊したものの、結局、いつもの泥臭い戦争でなんとかするというツイステの必勝パターンになるのであった。

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ダイシン帝國コーライ侵攻軍(国聯軍w)の南進、ツイステ・モトヒノ連合軍の北進というレースは、距離的には五分五分、南コーライは天然の阻害となるべき大小の都市がある分、進軍には不利という条件の差はあったが、そのファクターにより、奇しくも、コーライの首都ウルソに到達したのは、ほぼ同時のことであった。
実はこのタイミングは決して奇跡などではなく、コーライ軍の撤退戦術が「そうなる」ように綿密に計算したことにも関係していたのだった・・・。

開戦前に予想された楽観論が覆され、散々な目に遭った両軍は、ウルソの母なる川であるハンカンという一級河川で邂逅することになった。
ダイシン帝國とツイステ合州国(お引きにモトヒノもいるよ!)。
その国家形成の経緯から、不倶戴天の敵として、相克の運命を持つ両国が、名目上、モトヒノに対する侵略戦争への懲罰という同じ名目で、この地でついに相まみえたのであった。

軍使の連絡将校がハンカンの橋で出会う。

「我が国聯治安維持軍には法的な裏付けがあるアル!ここまでご苦労だったが、あとはこちらに任せて帰るがいいアル。」
とにべも無いダイシン帝國軍人。

「実際、この戦争は我が国の正当な報復であり、他国の干渉は、受けませんというのが我が国の立場です。あと”ガキの使いじゃねえんだぞ。ここまでにどれだけの血を流したと思ってんだ。コーライはウチのシマだ。そっちこそとっとと帰れ!”とツイステの将軍が言っております…。」
とガキの使いのようなことを言う貧乏くじを引かされたモトヒノ軍人www。

この世界では、歴史的な抱擁もキスも無かったのであるw。

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こうして、両軍はウルソ占領に向けて再びレースを再開するのであった。
交戦こそ控えていたが、互いに最大限に警戒しながら…。


第137話 燃え燃え大戦略

2022-06-23 13:19:42 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十七話 

ダイシン帝國・コーライ国境付近、戦略級極大魔法の爆心地から数kmの場所。
ダイシン帝國の苦力が、最後の軌条のボルトを締め付ける。

「万歳!」
「とうとう完成したアル!」

そう、魔導機械の使用できない不毛地帯を踏破する臨時鉄道路線を、様々なコーライ側の妨害による甚大な被害・次々と補充される苦力の死体を積み上げながらも、ついに、ほぼ人力のみで完成させたのでアル。

兵員、戦車や自走砲を満載した充魔式列車が、次々に到着する。

「南の方ではツイステ・モトヒノ連合軍が足踏みしているようアル。これで我が軍も進軍が再開できるアル!」

疲労困憊の苦力たちと違い、待機を強いられていた軍人達の士気は高い。
戦略級極大魔法の爆発に巻き込まれた第一梯団、友邦国からかき集めた第二梯団にも少しはいたダイシン帝國軍の兵員は軍首脳の粋な計らいにより、北方で木を数えるだけのやさしいお仕事で傷を癒やしている為、各地より抽出された第三梯団の士気の低下は無いのでアル。ないのかアルのかハッキリしろw。

予定調和的に北コーライが秘蔵していた戦略級極大魔法で壊滅したり、想定外のエルフ災害で壊滅したりしたダイシン帝國軍であるが、戦力予備の豊富さではツイステ軍にも優るにも劣らない。
彼らの快進撃はこれから始まるのである!

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コーライ式釣り野伏・捨て奸戦術により、大被害を受けたツイステ・モトヒノ連合軍。
その人命を軽視しすぎた恐るべき戦術に恐怖を覚えないでも無かったが、それでひるむほど惰弱でも無かった。
まず、「何があっても車列を止めるな!」という対応を取ることにした。
仕掛け爆弾・対戦車ロケット砲による被害が出ても、車列を止めて、砲兵の餌食になる大被害を鑑みれば、多少の損失には目を瞑るしか無かった。
そして、経済的に発展している南コーライの都市は、コンクリートジャングルであり、伏兵を配しやすい難所である。
最初は、仮にも同盟国であったコーライを華麗な外科手術的な攻撃でキレイに降伏させようという欲目があったが、これを大いに逆手に取られた。
反省したツイステ・モトヒノ連合軍は、進軍先の都市を予備砲撃・爆撃で、徹底的に耕すことを原則とした。いつものツイステ軍のパターンであるw。
なお、民間人の被害は見なかったことにした。なあにコーライの都市では基本的に建築物を新築する際には半地下の防空壕設置が法令で決まっているので、きっと大丈夫さw。
最初は、コーライ半島最南端の都市、プーサン周辺しか支配地域が無かったのが、じわりじわりと拡大していき、大部隊を展開する余地・縦深と、次々に陸揚げされる後続部隊によって大攻勢をかけるだけの戦力が整ってきた。
仮設の空軍基地や接収したプーサンの民間空港に軍用機の整備施設を敷設するなど、空軍力も充実させた。
五分五分だった空戦も、4:6、3:7と次第に勝てるようになっていったのである。
いくら今世界航空機発祥の地であるコーライ空軍の機体やパイロットが優秀でも櫛の歯が欠けていくように損耗していく。
ことパイロットの損耗は容易に補えるものではなかった。
歴戦のエースも新人パイロットのお守りをして被弾し、戦死したりして大空に散っていく。
対して、ツイステ軍は、それほど突出したエースパイロットが目立つわけでは無かったが、それなりの水準のパイロットを大量生産することには長けていた。
コーライのエースパイロットにより、4機落とされようが、5機目が差し違えるかのような戦闘で相打ちし、削っていくのである。そして、すぐに8機の補充が届くというw。

北から南から首都ウルソに向けて、両軍が快進撃を始めた。

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「お父様、どこに行くのですか?」

慌ただしい夜逃げの準備の最中、とあるコーライ貴族の令嬢が父親に尋ねる。
父親の伯爵が、答える。

「なに、新しい首都に移るだけだよ。ウルソは、ちょっとあぶないからね。こんなこともあろうかとムーン大統領やキムボール将軍が、防衛能力に優れた新都市を建造していたんだ。我々の様な貴種はいちはやく移動して、国防に寄与しないといけない義務があるんだ。いいね。」

実際、ウルソという都市は、まったく防衛に向かない。歴史的に何度も焼け落ちたし、先だってのコーライ戦争でもあっという間に陥落した。
性懲りも無く再建したが、南北対立の期間では、38度線からさほど距離の無いウルソは、北のロケット・長距離砲だけであっという間に火の海になる立地であった。
幸い、ムーンの転生チート能力「夜郎自大」のおかげで、平和的に南北問題は解決したが、軍事学的な素養の高いキムボール・ジョンソン将軍は、防衛力の低い首都に危機感を覚えた。
遷都を決定し、軍事的にも強固な都市計画を練り、建築を開始した。ムーンはあまり関心無く、ハンコを押したw。
新首都にはコーライ半島のほぼ中央、西側の港湾都市が選ばれた。
湾岸要塞で防衛しやすい遠浅の内海(艦船は浚渫した水道を知らない限り、港にはたどり着けない)、豊富な魔力供給を可能にする太い龍脈、そして巨大な岩から出来ている山脈が近くにあるのも軍事的に有利だった。
莫大な予算を要する事業であったが、昨今の絶好調のコーライ経済にとってはむしろ内需拡大の好材料にしかならず、工事は比較的順調に進んでいたが、まさかこんな早くに建設途中なのに実際に使用する羽目になるとはさすがのキムボール・ジョンソン将軍も予想していなかった。
そのため、まだ王宮とその周囲の富裕層の住む貴族街程度しか建設は終わっておらず、ウルソの町から新首都に移り住めるのは選ばれた少数の民だけだったのである。
ウルソのほとんどの民は取り残されたが、ムーンの転生チート能力「夜郎自大」のおかげでこれほど絶望的な状況下でも郷土防衛隊への志願者は引きも切らないほどであった。
魔法抵抗力の高い貴族層は、さすがに危機感を覚えて家財も放り出して逃げようとしている次第である。

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その新首都の郊外に位置する岩山。ジャイアン山。
巨大な岩石が鎮座する山体の地下を掘り抜いて、要塞が築かれていた。
キムボール・ジョンソンは大いに気に入り、「狼の砦」と名付けた。
政府機能・軍指揮所をまるごと飲み込んでも余裕のある巨大要塞。
密かに王宮・政府機能・軍令部を「狼の砦」に移し始めていた。
ウルソとは太い通信回線を確保し、ウルソから指揮しているように見せかける念の入りようであった。

「ここなら、どんな大軍相手にでも持ちこたえられるのねん!巨大な一枚岩で核兵器や戦略級極大魔法でも耐えられる防御力、豊富な魔力供給、30年籠城しても耐えられるだけの食料備蓄!」
とフンスと鼻息を荒くするジョンソン。

「いやあ、壮観ですねえ。地下にこんなちょっとした都市のような施設を作り上げるなんてコーライの科学は世界一ィィッ!!」
とおどけるマルペ君。

「なにかイヤな感じがする名前ニダ…。もっとマシな名前はなかったニダか?」
浮かない顔をするムーンであった。知識は無くても勘は良い彼である…。


第136話 狼たちの墓標

2022-06-21 16:44:47 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十六話 

だまし討ちにて、一気にコーライ政府中枢を外科的切除し、ツイステ合州国主体で対ダイシン帝國攻略体制を構築するという構想は、最初から躓いた。
これはコーライの防諜の能力と言うよりはダイシン帝國の長い手による巧妙な工作の結実であったのだが、コーライもツイステも気がついていなかったw。

ツイステ・モトヒノ連合軍は、コーライ南端の町プーサンとその周辺こそ確保できたが、大部隊の展開を行う前に衝突が発生し、橋頭堡を防衛しつつ、海路にてモトヒノから逐次、陸揚げするしか無かった。
航空戦力においても、本来外征が本業のツイステ合州国海軍こそ、空母が必要だったのだが、今世界では、コーライしか建造に成功していなかった。
プーサン近郊に仮設飛行場を建築してモトヒノから航空機部隊を次々に呼び寄せたが、その運用能力には制限があり、今世界ではかなり充実しているコーライ空軍のホームグラウンドで、量でも質でも圧倒することは出来なかった。
ツイステの必勝方程式である「圧倒的な航空優勢」の無いツイステ陸軍は死兵とも言える郷土防衛軍の度重なる襲撃に、そして、コーライが誇り、外国に大々的に売り込もうとした、毎分9発の発射速度を誇る最新鋭高性能150mm自走砲K-999の部隊によるアウトレンジでいいようにやられていた。

「クソッ、コーライ兵なんてのはコーライ戦争の時には自国民の保護もほっぽり出して逃げ出してウルソの街に民間人を置いて後退するときに橋を爆破して、後は俺らに丸投げする腰抜けどもじゃ無かったのかよ!!」
そんな呪詛も一般兵には流布していた。

こうして、コーライの南方戦線はコーライ国民、ツイステ・モトヒノ軍人双方に多大な被害を与えながら、一進一退の膠着状態に陥ったのだった。

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一方、ダイシン帝國とは言えば、北コーライでの防衛線に敷設された戦略究極大魔法による、魔導機械が使用不可になる不毛地帯が大河のように進軍路を横切り、足止めを食らっていた。
しかし、そんなコーライの瀬戸際戦術は、当然の如く、開戦前の想定の範疇であり、対策も十全に練られていたのである。
いわば現代版の魔力「死の渡河」作戦は研究済みであり、黙々と、戦略究極大魔法により魔力供給の絶えた地帯に、鉄道軌道を建築し始めた。
その線路を用いて、充魔式軍用列車を運行し、大量の戦闘車両や兵員をピストン輸送で送り込むという腹である。
コーライとて、座してそれを見ていたわけもなく、妨害すべく攻撃部隊を派遣はしたのだが、なにしろ魔導機械が使えないと特殊なフィールドである。
ダイシン帝國は、この魔法の使えない特殊フィールドに対応する、おそるべき手段を取っていた。
なんと、魔力を使わないウマ車や人海戦術による苦力の大量動員である。
重い鋳鉄の軌道を何十人もの工夫が担ぎ、それを大量の歩兵が警護する。
コーライの派遣する歩兵部隊は蹴散らされ、砲兵や高空からの航空攻撃での爆撃も命中率が低いとはいえ、被害を受けてもすぐさま苦力が補充される。
幅10数kmの不毛地帯を「渡河」するための軍用鉄道路線は着々と敷設されていくのだった。
人道を顧みないことではダイシン帝國とて、今世界では随一の国なのである。

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重苦しい雰囲気に包まれているコーライ大統領官邸赤瓦台。
軍高官が戦況を報告する。

「南コーライでは、幸い、ツイステ・モトヒノ連合軍の卑劣な策略が早々に露呈したことで、義勇兵を編成し、北方から人員だけ呼び戻した砲兵部隊に、工場の新品の輸出用兵器を使用させることで遅滞戦闘に成功しております。航空戦でも”ホームゲーム”の利があり、質でも運用条件でも我が軍に利があり、数を生かせていない敵軍をなんとか押さえ込んでいます。」

「ほへー、さすがですねえ…。」
と感心するマルペ・ヨンジューン大統領補佐官。

「しかし、いくら兵器・弾薬の輸出用の予備がたまたま、たくさんあったとしても、相手はキ○ガイ戦争国家ツイステなのねん。平気でこっちの弾薬が尽きるまで、延々とおかわりをすることは目に見えているのねん。ニョクマム戦争みたいにサンクチュアリ(ゲリラ戦術に必須の後背地)やダイシン帝國のバックアップは我が国には無いのねん。ジリ貧になっていくのは目に見えているのねん!」
こと軍事に関してはまともな見識を持つキムボール・ジョンソン将軍である。
「しかも、北方ではダイシン帝國がおそるべき人海戦術で、鉄道を敷設しているとか。これが打通したあかつきには、第三弾の国聯平和維持軍が大量にやってくるのねん!」

「あらやだ、この国、詰んでる」
誰だ、このオカマ?www

「(ウリは、ただ生まれ変わったこの世界で、遅れた文明を進歩させて、この国を世界三大強国にして、ただ平和に暮らしたかっただけなのにどうしてこうなったニダ…)」
ゲ○ドウポーズで腕を組み下を向く、ムーン・ジェガン。
彼の転生チート特典の異能、「事大主義」は、彼の属する国の運命に大国を巻き込むという不可抗力の運命改変能力である。しかし、ねじ曲げた運命が必ずしもプラスに働くわけではないというとんでもない厄ネタ異能なのであった。

「とりあえず、このウルソの街は、防備も何もあったモノじゃないのねん。大コーライ連邦の新首都として建築中だったところは未だ30%程度しか完成していないけれど、近くの巨大な岩山の地下に要塞を優先的に作って8割方完成しているのねん。”狼の砦”と呼んでいるこの指揮所ならどんな空爆にも耐えられるし、指揮管制能力も既に実用段階になっているのねん。政府機能をとにかく移すのが最優先なのねん!」

放心しているムーンは、黙って頷くのであった。