寓話の部屋

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第131話 フットーしそうだよぉ!

2022-06-01 12:26:27 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十一話 沸点

コーライ半島南端のコーライ海運の要衝であるプーヤン港に次々と陸揚げされるツイステ合州国海兵隊を中心とした先遣部隊と、大洋戦争後初めてコーライ半島の地に足を付けたモトヒノ軍。
それらを憎々しげに眺める集団がいた。
良心的コーライ市民平和主義者達である。

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良心的コーライ市民平和主義者と呼ばれる市民団体は、コーライ戦争直後の南コーライ軍政下で発生した。
反戦活動や民主化を求める活動をしていた彼らであるが、9割方は、当時の北コーライの工作員の活動の影響を受け、南コーライと在コーライツイステ軍の国防活動を妨害するためにありとあらゆる手段を取っていた。
デモや集会は当然として、基地周囲に人の輪を作る。フェンスに南京錠をかける。ツイステ大統領の像を作って毀損する。ツイステ国旗を歯で食い破る。唐辛子や排泄物をまく…などよくもまあ思いつくなということをしまくり、南コーライの公安関係者を悩ませていた。
ムーンによる北コーライとの「電撃結婚」により、北コーライ工作員のハンドラーは仕事を失った。
ノーサイドの精神で、北コーライの南での工作活動は不問にされることが密かに決まっていたので、というかあまりにも南に浸透しすぎていて、彼らを全員パージすると南コーライの社会が機能不全に陥るからという現実的な理由もあったw。
しかし、本職の工作員は我が身が生き延びたことに安心して割り切って身を引くことが出来ても、なまじ本気で活動していた市民団体メンバーは残り、むしろ「北コーライとの戦争が無くなったので、ツイステ合衆国軍は聖なるコーライの地から出て行け」と気勢を上げることとなった。
そこに目を付けたのがダイシン帝國である。北コーライの工作員が組織していた市民団体を「居抜き」で引き継いだ。
今までは北コーライのショボい工作予算の活動費では市民のカンパなどで細々と活動するしかなかったのが、ダイシン帝國諜報機関の豊富な資金援助で一変した。
パートタイムの市民活動家は、もはやその活動だけで生計を営むことが可能になり、アマチュア市民活動家から、意識の高い「プロ」市民活動家に華麗に転身するものが続出した。
活動は一気に尖鋭化し、反ツイステ活動のみならず、反モトヒノ活動までその活動範囲を広げた。
例えば、近年の魔導集積回路の進歩により、対ダイシン帝國の最新式のSIGINT(魔動波情報収集活動)施設をコーライに新設するというダイシン帝國にはイヤな動きを掣肘しようと団体を動かし、施設を不便な郊外の潰れた球技場に追いやり、その施設に通じる街道を24時間365日、プロ市民が勝手に検問を設けて消耗する部品や人員のための補給品搬入を妨害するという活動を行った。
まともな国家であれば、当該政府の治安機関が取り締まるべき無法が、コーライではほとんど放置された。
ツイステ合州国軍は、その施設への補給のためだけに陸路を諦め、大型ヘリを運用せざるを得ず、コーライ政府に改善を要求していたが暖簾に腕押しの有様であった。

また、コーライ戦争後に、旧宗主国として、様々な支援活動を行ったモトヒノに対し、コーライの経済水準が向上すると、もはや用済みとばかりに大洋戦争以前の植民地時代のアレコレで無理筋の難癖を付けるようになった。
時効もいいとろの徴用した工員に法外な給与補償を求めたり、山を掘り起こして未開のコーライ国土を近代技術で測量した金属標を民族精気を吸い取る呪いの杭だと言いがかりをつけたり、毎週モトヒノ大使館前で、もはや何の抗議だかわからない迷惑集会を行ったりし始めた。
モトヒノ外務省は、いくらコーライ政府に取り締まりを要求しても対応してくれないことに業を煮やし、施設の老朽化を理由に大使館を取り壊し、ウルソの賃貸ビルに移転する始末である。
そしたら、今度はそのビルの玄関に魔導車トラックで突っ込むw。やりたい放題である。

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「見てみろ!あれは悪名高い合州国海兵隊第一海兵師団。コーライ戦争のクロム鉄鉱石作戦で同胞の北コーライ人民を虐殺した殺人部隊だぞ!」
「まだモトヒノ駐在の海兵隊が来るのは理解出来るが、ツイステ本国の部隊まで派遣されるとはただ事では無いな…。」

下手な軍オタより知識のあるプロ市民達である。

「それより、あれを見ろ!あの太陽を象ったにっくきモトヒノ軍旗!半世紀前の侵略を再現しに来たとしか思えない!」
「モトヒノ軍は演習ですら敷居をまたがせたことが無いのに…。なんてこった!」

じつのところそんなこともなく、モトヒノ軍人が一応名目上は同盟国みたいな感じの微妙な距離感のコーライ軍施設で小規模な演習を行っていたりはしていた。
その時も、モトヒノ側は罰ゲーム的に選抜され、派遣された高級士官主体の戦闘能力的には微妙なチームに対して、コーライ側は最精鋭の特殊部隊員を動員し、シミュレーション演習で無双して悦に入っていた。
海軍や空軍も多国籍演習で一緒になるのはしょっちゅうだし、戦争中毒のツイステが巻き起こす小規模な戦争には両国とも常連メンバーである。
最近では国聯平和維持活動でご一緒することもあり、モトヒノがトリガーハッピーのコーライPKO軍に弾薬の融通をしたこともあったが、現地では相身互いで好意でやったこの行為も、わざわざ本国のお注射済みのコーライ議員が国会で問題視し、哀れなコーライPKO軍の司令官は更迭された。

「モトヒノ軍が再び、神聖なるコーライの地を踏むなど絶対許されることではないぞ!」
「そうだそうだ!」

もちろんダイシン帝國工作員のお仕事である。
戦略級大規模魔法とエルフ災害による痛手で、せっかくの南進作戦の好機を失いつつあるダイシン帝國はかなり無理筋の工作を指示していたのだった。
まだツイステ軍の増援だけなら、火付けは不発に終わった可能性が高かったが、そこにモトヒノ軍という触媒が加わったのが妙味であった…。

「どうやら、隠匿していた北コーライ製の武器が火を噴くときが来たようだな!」
「コーライの平和は俺たちが守る!」

平和のためには武力行使も厭わない意識の高いコーライ市民達が立ち上がろうとしていた…。



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