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第134話 立ち上がれガンギマリ

2022-06-14 10:04:29 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十四話 

ほぼ全兵力を無益なモトヒノ侵略作戦に投下し、損害は軽微だったものの、すぐさまとって返してダイシン帝國との北方戦線に転進させられたコーライ軍の疲弊はかなりのものだ。
そのコーライ軍部隊の配備状況・移動の状態を、仮にも友軍wたるツイステ側はしっかり把握していた。
疲弊はともかく、暫定首都のウルソや北コーライの旧首都プーヤンを超えて、大部分の部隊の北方シフトに移行が完成しかけていたところでの南の港湾都市プーサンで起きたツイステ・モトヒノ連合軍との偶発的戦闘。
理想は、ガラ空きの首都を、ツイステ・モトヒノ連合軍が北方戦線への援軍の体で、近くを通った際に急襲し、ムーン政権をサージカルストライクでスマートに除去し、あわよくばダイシン帝國の南進の大義名分を失わせる、あるいは対決が避けられないにせよ不安定要素である無能な味方という最大の懸念を排除するというツイステの決断が悪いものではなかったはずだ。
当のコーライの政府首脳・軍部も、スッカラカンの南部の状況を把握しており、北から再度南方へのコーライ軍主力に転進を命じてはみたものの、無人の野を征くが如きの精強なツイステ・モトヒノ連合軍がウルソを包囲するのを防ぐのは時間的に無理だろうと実に悲観的であった。
コーライの貴族出身高官には、国外逃亡を企てる者まで続出した。

軍事的に華麗な電撃占領作戦という当初の目論見は破綻したものの、圧倒的な戦力で戦力の空白地帯を進撃し、ウルソを包囲し、落とすプランBだって、それほど筋の悪いものではないとツイステ・モトヒノ連合軍の指揮官達も安易に考えてはいたのである。

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一路、ウルソに向けて進発したツイステ・モトヒノ連合軍の車列。
軍事的に戦闘状態であるのに幹線道路に車列を形成するなど油断の極みでしかないが、今の南部のコーライ軍に対抗できる機甲部隊や砲兵が払底しているのは承知の上での確信犯的舐めプである。

「車長、せっかく戦車を持ってきてもウルソまで戦車戦があるとは思えませんぜ。」
「まあ、そういうな。本番はウルソを占拠した後の対ダイシン帝國との対決だ。それまでは演習だと思って気を引き締めろ!演習は実戦の如く・実戦は演習の如くだぞ!」
「イエス!サーw」

そんな少し弛緩した雰囲気の車列に、道路の脇のビルの窓や屋上から、裏道から、当時の最新兵器である対戦車ロケット兵器の雨あられが突然襲ってきた。
トップアタックや側面、後方を狙われたツイステの誇る最新鋭戦車M1は次々に戦闘不能、擱坐した。さすがに砲塔が吹っ飛ぶほどの痴態は無かったがw。
そこに自動小銃や、携帯ロケット兵器、高性能爆薬ベストを装備した自殺兵が襲いかかり、戦闘歩兵車、装甲歩兵輸送車なども甚大な被害を被った。

「なんなんだやつらはッ!!コーライ軍はほとんど北に行ってお留守な筈じゃ無かったのか?!」
「ゲリラにしては装備が良すぎる!攻撃も組織だっている…。実はカンパネラが把握していなかった伏兵がいたんだ!クソッ!奴らの無能のケツを拭くのはいつも俺らだぜ!」

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そんな敵から高評価のコーライの強者達。
その正体とは、何のことは無い、その辺のプロだけではないアマチュア一般市民までが立ち上がった義勇兵である。
普通の国で、一般市民が突然銃を手に取って軍事行動を始めたところで所詮は烏合の衆になるのが関の山であるはずだ。
しかし、コーライはまったく普通の国ではなかったw。
数十年にわたる分断国家は、南コーライでは二年、北コーライでは十一年の兵役を全国民男性に課し、労働年齢の男子のほぼ全てが近代的な軍事的素養を身につけていた。
その辺の国民に竹槍で訓練していたようなマヌケな国とは違う。

もちろん、そんな兵士の素養だけで、強力な義勇兵が出来るはずは無い。
それを支えたのは、豊富な装備・兵器であった。
当のコーライ軍の首脳はもちろん、ツイステ・モトヒノ連合軍の諜報部も正規軍の戦力は念入りに把握しており、侵攻に当たって正規軍がいないのを確度の高い情報として掴んでいた。
ただ、彼らが数えていなかったものがあったのだ。
国外輸出向けの兵器が、工場に、プーサンからの出荷を待つ倉庫に、それこそ「売るほど」大量にあったのだ。
それは、近年、ムーンのもたらした新構想の技術が結実したコーライ製兵器が、国外にバンバン売れていたことにより、正規軍があと二つは揃えられそうな在庫が船便での出荷待ちの状態であった。

攻守双方の正規軍人達は、もとより員数外、国内での使用を想定していないそれらを数の内に入れていなかった。
愛国心に駆られた兵器製造者・輸出業者は、それらを義勇兵に無料放出したのだった。

そして最後の最大のファクターであるが、それはムーンの持つ異能「夜郎自大」によるコーライ国民の異常な志気の高まりであった。
この異能は、自国への愛国心を異常なまでに過熱させるという特性を持っている。
数千万人の命知らずの挺身兵という敵軍にとっての悪夢。
高性能爆薬を持って、M1戦車の底面に走って滑り込み、自分で起爆するというマジキチの戦術や、助けを呼ぶ母親を保護しようとしたら赤ん坊は爆発する赤ちゃん人形だったなどという狂気には、ツイステ兵の精神は大いにヤられた。

エアカバーについてもいつものツイステの一方的な弱い者イジメのパターンが通用はしなかった。
プーサンに橋頭堡こそ確保し、陸揚げは出来たが、空軍基地の確保にまで至らなかった。
一方、コーライ側は、さすがに航空戦力の呼び戻しは、比較的短時間で行えたし、東海(モトヒノ海)に浮かぶ、今世界唯一の原子力空母の艦載機もあったために、コーライ本土上空での制空権とも言われる絶対的な航空優勢をツイステ・モトヒノ連合軍が確保することはかなわなかった。
もちろんツイステ・モトヒノ連合軍はプーサンの郊外に急遽、仮設飛行場を設営はしたが運用上の制限が大きく、また航空機の質でもコーライ製のFK-21は、今世界航空機発祥の本家だけのことはあり、ツイステ・モトヒノ連合軍の装備の主力戦闘機F-1/2/3より質の上では優っていたのである。
余談であるが、せっかくのコーライの誇る唯一の原子力空母であったが、戦場が本土である以上、艦載機はむしろ陸上基地で運用・活用した方が制限が少なく(STOLで発艦する戦闘機は燃料や兵器搭載量に大きな制限がある)、広大な大海原の戦場で機動戦を行うには、モトヒノ海は狭すぎるのであるw。
莫大な軍事費を費やして建造したにしては、国防には大して用兵・戦略的に役に立たない無用の長物なのであった。
まあ、本当はこれはあくまでデモ機で海洋覇権国家・侵略戦争大好きなツイステ当たりに高額で売り払う腹づもりだったのではあるが。

加えて、コーライの軍首脳は、コーライの南部に、出荷前の員数外の新品の戦車や自走砲、砲弾があることにようやく気付き、妙案を思いついた。
北に派遣した戦車や自走砲を再度南に派遣するには輸送上の困難が極めて大きいと見切り、そうした正規軍の戦車兵・砲兵を下車させ、暴走トラックや特急魔導列車で、身ひとつで移動させることにした。
南の工場や倉庫で、まだシートにビニールを被っているような新車を受領し、戦力化させたのである。
さすがに義勇兵だけで正規軍を相手にするのは無理があったが、正規に訓練を受けた専門技能を持った乗員だけを高速輸送するという鬼手で、これで、なんとか戦車戦・砲戦を行えるだけの体制を間に合わせることが出来た。

 



1 コメント

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Unknown (Unknown)
2022-06-14 11:51:56
ツイステ・モトヒノ連合軍とコーライ義勇兵の戦闘。
何処かの軍事行動とにていますね。
ダイシン帝國軍対コーライ軍は、パコママに痛めつけられたダイシン帝國軍が、いいところを見せるターンでしょうか?

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