寓話の部屋

なろうみたいな小説を書いてみたけどアレ過ぎて載せらんない小説を載せるサイト。

第049話 百匹目の猿

2021-08-31 08:53:40 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第四十九話 

コーライ民主主義人民共和国、通称・北コーライの首都・プーヤン。
第三代将軍こと国家主席のキムボール・ジョンソン(わがままボディ)が今日も北コーライの民を偉大なる勝利へ導くべく、執務に励んでいた。

「なんだか南の連中が景気良いみたいなのねん!」

「はっ。なんでも航空機という新しい兵器の開発に成功し、その輸出が好調のようです。その他、魔伝話という音声を伝える機械も発売して普及させているようです。」
政治局敵工部の長官が答える。

「その航空機とかいうのは入手できないかしらん?」
「図面や部品などは、南の逆徒共に浸透させた工作員が大量に入手しておりますが完成品は難しいかと。図面を元に試作していますが…。あと燃料のケロタンというのも入手できません。ダイシン帝國でも原油確保に走り始めたばかりのようで我が国に回すほどの余裕が無いようです。」

「むふー、経済制裁にも困ったものなのねん!ダイシン帝國もツイステの傀儡との戦争の最前線たる我が国への支援をもっと真面目にやって貰わないと困るのねん!」
乞食のくせに態度だけは厚かましい北コーライ人である。

「ただ、南コーライ・傀儡のムーン政権は、しきりに我が国に対して秋波を送ってきております。魔伝話の専用回線をあっち持ちで敷設したいという申し込みもあります。工業特区・南北鉄道開通は、ツイステの圧力で頓挫しましたが、魔伝話回線は制裁対象になっておりませんから。」
「穀物・飼料の輸入も制限されていますが、制限項目に入っていなかった柑橘類の輸入で、ミカン箱の二重底に、金の延べ棒が仕込まれておりました。」

「そこまで卑屈に阿るようなら、その魔伝話くらいは認めてやるのもやぶさかではないのねん。よろしく計らっておくのねん!」

「ハッ!」

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今日も、ダイシン帝國の朝議が始まる…。
ちなみにパワーブレックファストというツイステの習慣は、”朝議”が朝の会議という翻訳間違いから発生したものであるという説が有力です。
ジャアアアーーン。大きな銅鑼が鳴らされると、御簾がしずしずと上げられ、玉座に座った皇帝陛下が、開口する。
「ダイシン帝國皇帝、マオ・タイラ・カーイー(ねこかわいい)でアル」
「そういえば除四害運動はどうなっているアルか?」

農務省の士大夫が
「ハハッ、皇帝陛下の御指導のもと、駆逐した雀の数は300億匹に達しました!今年はきっと大豊作になることでしょう!ハハハハ!」

「でアルか…」

文化省の士大夫カン(康)・チォウ(秋)クァイ(元)が発言する。
「我が国から選りすぐられた美少女にモトヒノや南方の後進国、ツイステ人を加えた”女少林寺三十六房”というユニットを結成しましたぞ!キレッキレッのダンスが売りです。これでまた、きやつらの若者の懐から金を搾取してやります!」

「でアルか…(正直どうでも良い…)。ところで、コーライ・モトヒノ・ツイステなどで、航空機なる革命的な兵器が導入されつつあると聞いたが、我が軍ではどうなっているのか?」

「ハハッ!関連企業には我が国の長い手が及んでおり、製図図面や部品などの入手は何の問題もありません。ただし、その技術理解は未だ不十分なところで、概念実証機体の作成から、着手しているところであります。」

「これは、諜報によって戦略級極大魔法を我が国に齎した以来の重要案件でアル!全力で取り組むように!」

一同
「ハハァーー」

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ここは新設されたダイシン帝國航空工業集団公司の研究所。
モトヒノやツイステの工科大で学位を取得したスパ…元留学生の英才が集められていた。

「姫様から、我が国製の航空機の開発が下命されたアルよ!」

「後輩から送られてきた資料はたくさんありすぎて困るくらいネ!」

「まあマネした機体は作るのは当然として、なにかオリジナルな要素も加えないとダイシン帝國4000年の意地がすたるというものヨ。」

「この鋼鉄製の機体というのがネックだと思うヨ!重い機体を飛ばすために重いエンジンを積んで、重いエンジンを積むために機体を頑丈にしないといけないという悪循環。」

「ジェットエンジンはたしかに強力だけど、魔動機を使った飛行機にもまだ可能性が残っていると思うアルよ。重い爆弾を積む攻撃機はしょうがないけど、それを迎撃する防衛用の機体なら、機銃だけ積めば良いのだし、基地から長距離飛ぶ必要も少ないから蓄魔槽駆動でも運用可能なのでは?。」

「思い切って機体を軽量化しないと無理ネ。ところで、機体は木とか竹ではいけないのアルか?最近の合板加工技術はバカに出来ないアルよ。天然木に見せかけた合板・樹脂製品は我が国の得意分野ネ。竹筋コンクリート製の高層ビルも我が国の得意技術アル!」

偽物商品を作る能力では多国の追従を許さないダイシン帝國の斜め上の技術が思わぬ兵器を生みそうな塩梅だった。


第048話 ここはエリア81。地獄の一丁目だよ

2021-08-28 13:50:31 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第四十八話

ここは、ツイステ合州国のArea 81と呼ばれることもある秘密の研究サイト。
大洋戦争時にモトヒノの技術の海軍リバースエンジニアリングチームから発展した先端軍事技術研究グループ「スカトン・ワークス」の本拠地である。

研究者ジョン
「この外国にしてやられた感覚は、半世紀前にも先達がモトヒノに対して抱いたのだろうなあ…。」

研究者ジェーン
「それでも今回は、一応、友邦が開発国というのはマシですわ。こうやって丸々、新品の完成品を入手できたわけですし。」

とても高価な攻撃機GAE-50、戦闘/汎用ヘリのAH/UH-100を惜しみなく全バラし、ネジ一本まで測定し記録する作業を見ながら、そんな会話が繰り広げられる。

研究者ジェーン
「こうしてみると、謎の技術というのはありませんね。なんで今まで気がつかなかったのかしら!という点は実に多いですけれど。魔導技術もジェットエンジンの補機にくらいにしか使われておらず、むしろなぜこれほど魔導技術の要素が少ないのかが不思議なくらいの技術体系だわ。」

研究者ジョン
「しかし、GAE-50の機体は頑丈なのは軍用としては良いが、重すぎるよ。エンジン出力でなんとかしているが、燃費が悪すぎる。軍用ではまだ我慢して運用出来るが、あの大洋横断してきたKl-18という大型のコーライ大統領専用機はどうやって長距離飛行を実現したのか、まったく想像も付かない。海兵隊の儀仗兵に扮したカンパネラの工作員が、こっそり駐機時に外装を削ってきた試料を分析したが、ただの鋼板だってさ!。コーライはKl-18の売却は頑なに拒否しているのだよな…。よほどの秘密があるに違いない!。」

ちなみに当然、Kl-18の魔力転換装甲魔導陣は内側に掘られていた。Kl-18が外販されなかったのも、商品として売るってレベルじゃ無いだけの話だったが。
たぶん売ればツイステは研究用には買ってくれただろうが、コーライの技術者にも恥の概念くらいはある。
ちなみに魔力転換装甲魔法自体の開発者はツイステ人ではあるが、実用性なしと廃棄したのもツイステ人である。

研究者ジェーン
「しかし、エンジンが300時間しか寿命がないというのは!。妙にエンジンの付け外しがしやすい構造だと思ったら、あとで、エンジンだけの追加パッケージを販売する気満々だったらしいわね。」

「エンジンカートリッジ商法とでも言うかね?商魂たくましいことだ…。コーライの冶金技術は我が国より遅れている。ツイステ合州国で改良すれば稼働時間は延長できるのでは?」

「それは、パテントでイジれないところなのよね。だからヤるなら、すべて新設計のエンジンにする必要があるわ。」

「それは当然のマストだよ…。思うんだが、このプロペラ?というの?ヘリに必要不可欠なのはわかるんだが、飛行機には本当に必要なのかね。燃焼したガスのエネルギーを軸回転に変換してプロペラを回して推力を得るのってなんか迂遠じゃないか?長距離ロケット砲だって、プロペラなんか無いが、固体燃料が尽きずに推力さえ続いているうちは空を飛び続けるわけだし。」

「ロケット弾に安定翼を付けないと軌道が安定しないのは理解していても、翼自体で揚力を得ていたことに注目しなかったのは、恥ずかしいわね。潜水艦の研究などで、流体力学は我が国が最先端だったのに…。」

「同じ燃料を燃やして得られるエネルギーを全て推力にするエンジンなら、新原理のエンジンとしてパテントを回避できるんじゃないか?」

「さすがねジョン!」
「早速、いろんな耐熱性の合金を集めて、燃焼室、コンプレッサー、ノズルなど試作しよう!」

国民の平均知能はかなり悲惨でも、トップ層の知能は計り知れないツイステ合州国の科学力がフル回転し始めた。

「ところで、新兵器に浮かれるのは良いけど、敵国が同じ兵器を使い始めた場合を想定して、対抗兵器も開発するべきじゃないだろうか!」

「フフッ、そういうと思って、いくつか腹案があるわよ。ジョン!」
「すばらしいよ!ジェーン!」

「まずロケット兵器よね。こんな高速で動くものに機銃の弾丸を当てようなんてどうかしているわ。音波探知式誘導魚雷はもちろん知ってるわよね。同じ原理で、標的に向かって飛んでいくロケットがあったら素敵じゃないかしら?」

「すごい発想だよ。でもどうやって?ああそうか言わないで!音は…いや五月蠅い戦場じゃ使えないな…、そうだ熱だ。ジェットエンジンが排出する熱で誘導されるロケットはどうだろう。」
「そうね。音波探知式誘導魚雷の場合は音源方向に向かうように推進プロペラに取り付けた偏向パドルを操作するという代物だったけれども、空中ロケットの場合、飛行機本体のように安定翼に偏向機能を付けるのが妥当でしょうね。」
「魚雷開発者のジャックを呼んで、早速試作機を作ってみよう!」

「まだ全部じゃないわよ。慌てないでw。ロケットは強力だろうけど、おそらくとても高価な兵器になるわ。もっと安い兵器も考えないと。コロンバスでは、マフィアがカノン砲を空に向けて撃ったらしいんだけど、そんなの当たりっこないわよね。ある程度範囲攻撃できる榴弾弾頭とはいえ、飛んでくる高度が自由に変更できる航空機相手に、適切な撃発タイミングなど信管調停のしようがないわ…。」
「ふぅむ。信管が問題か…。逆に相手が対地攻撃を仕掛けてくるなら、高度を読んで、広く弾幕を置いて接近拒否するという運用もあるだろうが…。」

「これはペンディングね。飛行機には無力でしょうけど、ヘリ相手になら、重機関砲による弾幕は効果はあるわね。これは特に技術的困難はないわ。せいぜい多連装砲化するくらいかしら。」
既にコーライが、商品化に動いていたのをすぐ後に知ることになる…。

「たしかに、地上から、高速で飛行する航空機に機銃を当てるのは難しいだろう。しかし、例えば、対航空機に専念する軽快な航空機を作って、相対速度を殺したところで機銃攻撃すれば、充分当てられるのでは?」
「なるほど一考の余地があるわね。”戦闘機”とでも呼ぼうかしら…。しかし、鋼鉄製の機体で運動性を確保できるかしら。なにかもっと良い素材は無いものかしら!」
「それも研究課題だな!」

こうして、天才達は寝食を忘れて新しい玩具に夢中になっていく。


第047話 夢幻泡影

2021-08-27 09:20:14 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第四十七話 夢幻泡影

ハネムーン期間が終了し、初の外遊を大成功に終えたムーンは久しぶりに赤瓦台に戻り、内政に勤しむことになる。

「立ち上がった航空産業とその関連企業の隆盛により、コーライ経済は絶好調でございます。」
コーライ産業通商資源部長官が発言した。

「そうかニダ!こうなるとウリにはわかっていたニダ!」
ご機嫌なムーンである。
「兵器産業は儲かるニダね。魔動自走砲や軍用トラック・四輪駆動魔動車も作って売りまくるニダ!そうそう対空車両も作るのを忘れてはいけないニダよwww。マッチポンプがこの商売で儲けるコツニダ!」

「しかし、従来なら財閥系に株式引受をさせていたのに、広く国民に株式を販売するという試みが、引き金になって、株式市場の例をみない過熱ぶりが気になります。新規企業のIPOの数もうなぎ登りで手が付けられません。庶民が借金をして株式を買ってそれを担保に更に借金をするなどという例まであるようです。」
「それに引きずられて、住宅市場も高騰化が悪化しています。昔ながらの土地を担保に借金したり、家賃の一括前払いを元手に株式に投資したり…。」

「それも経済成長の”成長痛”というものニダよw。経済成長している分には問題はないニダ!財閥だけが儲かる旧態の経済より、よほど健全というものニダ!」
前々々世で痛い目にあった記憶は、転生の際に置いてきてしまったような有様である。

「さすがムーン様です。」
とサスムンな発言で合いの手を入れるマルペ君。

産業通商資源部長官が続ける。
「いち早く油田地帯の油井の権利を買い漁った先行者利益も大きいです。今まで誰も見向きもしなかった鉱油がこれからの航空産業を支える大産業になるとは!」
「さすがです、ムーン様」
「その原油を運ぶタンカーの造船の受注も絶好調です。ただ、モトヒノやダイシン帝國系の造船会社が価格競争に参入してきているのが懸念事項ですね…。」

「ここでは手を抜かず大型船の建造経験を積むのが肝心ニダ。今後の国産航空母艦建造や国産潜水艦建造事業も見据えて赤字覚悟でも受注を重ねるニダ。」

「さすがです、ムーン様!(航空母艦ってなんだろう?あとで聞こう…)。しかし、”公職者不正捜査処刑法”の新設というのは未だ議会の反対が多く…。憲法違反だという声も…。」
「法曹界も財閥の息がかかった人材に汚染されているニダ。積弊を精算するには既存の法執行機関では不十分ニダ。なんとしてでも通すニダよ!」

「処す?処す?ムーン様、王室系の”国民情緒研究院”を拡大させるのはどうでしょう。貴族系の権限が増す危険性はありますが、財閥系の力を弱めるには致し方ない面もあります。」

「そのパンパンとかペクチオンとかいう下らない身分制度を骨抜きにするニダ。誰でもパンパンの身分を名乗れるようにすれば身分制度など形骸化するニダ。そうだ。パンパンの身分を高額で販売すれば国庫もが潤うということだニダ!」

「えええっ…、さすがにそれは…」
貴族の末席を汚すマルペ君もドン引きであった。

「王族だけは聖域にしておくニダよ。華族制度を廃止したモトヒノをマネするのはシャクニダが、皇族だけ残したモトヒノのようにフラットな社会にするニダ。」

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チキン屋を経営している40代A氏は、有頂天だった。
ローソク革命に参加し、新しい時代の風を感じたA氏は、銀行から紹介された融資で株を買い、上昇した株価で膨れ上がった額を更に担保にして新たに株式に投資し、レバレッジ比率は200倍に達していた。
チキン屋開業の借金は返したが、その数十倍もの額面の新たな借金を抱えている形になっていた。
上り調子の株式の保有資産の数字を考えれば、そんな借金額など気にもならなかったが。
三階建ての投資も勧められている。さすがに冒険が過ぎるかと躊躇はしているがコーライ大卒のエリートたる自分なら上手く売り抜けられるとも感じていた。
本業のチキン屋は妻とバイトで回して、暇を見つけてはウルソの証券市場の株価掲示板をチェックする日常を送るようになっている。

「これもみんなムーン大統領のおかげだ!コーライは”いんへるの”なんかじゃねえ、天国(ぱらいそ)になったんだ!」

株式欄の載った新聞を片手に赤鉛筆を耳に差し、充血した目で株価の上下を注視する。
その姿は傍目には幽鬼のようにしか見えなかった。


第046話 ナルコッサス

2021-08-26 08:58:25 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第四十六話 ナルコッサス

ここはツイステ大陸のとある国コロンバス。
国家の経済規模としては小さく、世界の趨勢には、なんの影響もない取るに足らない国ではあったが、貧弱な国家体制は、マフィアが跳梁跋扈する根拠地としては最高の住環境であった。
南ツイステ大陸で栽培された麻薬原料を精製し、ツイステ合州国に密輸するビジネスモデルで大金を稼ぎ、実質マフィアが支配する国。
業を煮やしたツイステ合州国政府は、常にコロンバス政府に対策を要求していたが、マフィアのお注射がよく効いているコロンバス政府にはまったく成果が挙げられず、ツイステ合州国政府の苛立ちは最高潮に達していた。
昔のツイステ合州国だったらとっくに宣戦布告し、占領していたところだったろうが、昨今の兵士の命の値段の高騰化に悩まされているツイステ合州国政府は陸上部隊の大軍を派遣する開戦にまでは踏み切れていなかった。

ところがある日、コロンバス政府に突然、ツイステ合州国大使から、「麻薬戦争への協力」が申し出されることになる。
協力とは聞こえが良いが、ツイステ合州国軍の国内活動を容認し、支援せよという命令に等しい。
がっつりマフィアの息がかかった大統領はのらりくらりとツイステ合州国の要求を躱してきていたのだが、なぜか今回は気合いが違い、断り切れない空気であった。

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今日も、平和なコロンバスの畑では農民がツイステ合州国の皆さんに良質なお薬をお届けするために野良仕事に精を出していた。
ジャングルに切り開かれた秘密農場ではあるが、まあ公然の秘密というものではあった。
外敵への警戒と言うよりは農民の監視の方が主な目的であったが、周囲には監視塔が設置され、万が一、官憲が近づいてくるようなら、応戦の用意もしていた。

農民ゴンザレス、カルロス
「なんだぁ、あの音はぁ」
「雷かねえ。空は良い天気なのに。」

監視塔のホセ
「なんだあの空の大きな鳥は?!」

そんな暢気なセリフが発されて、数分も経たないうちに、それはやってきた。
コーライ航空産業社(KAI社)製の誇る最新鋭兵器ゴールドイーグルGEA-50ということだ。

大きな鳥が火を噴き、一瞬で畑を火の海に変えた。焼夷弾頭の多連装ロケット弾である。
何が起きたのかわからないマフィアの兵士は、パニックに陥り、賢明なものはジャングルに逃げようとした。
勇敢なものは空を見上げて、それが人工物であることに気がついた。
陸上武装勢力を想定した防衛兵器は備え付けの機銃、カノン砲などであったが、大空をこの世界の標準では充分高速に飛行する航空機には、かすりもしなかった。カノン砲の榴弾弾頭も対空用の信管調停などされていないので、撃つだけ無駄というものだ。
8機の編隊が、ロケット弾を畑と兵士が逃げ込んだ周囲のジャングルに撃ち尽くすと、まだ動く人間に対して、兵士だろうが農民だろうが構わず、機銃攻撃を加えた。オーバーキルも良いところだが、「逃げるヤツはマフィア兵士だ。逃げないヤツは訓練されたマフィア兵士だ!」という作戦前の訓示通りに精鋭たる新設されたツイステ合州国陸軍航空隊のエリートパイロット達は無情な攻撃を加えていた。
もし彼らが異世界の某超大国の第二次世界大戦中戦闘機パイロットだったら、どう見ても民間人でしかない逃げ惑う女子供に機銃攻撃を加えることにも躊躇いがなかったことだろう。
圧倒的かつ衝撃的な攻撃力ではあったが、いかんせん弾薬の搭載量には課題が多く、攻撃は15分もいいところで終了せざるを得なかった。
電撃のように攻撃を加え、去って行った編隊を見送ると生き残りがポツポツと再び集まり始めた。

そこに時間差で現れたのが、KAI社製の誇る最新鋭兵器・百鷲ことAH-100/UH-100のヘリの編隊ということだ。
AH-100も周囲のジャングルにロケット弾を撃ち放ち、生き残りを掃討せんとした。撃ち尽くすと機銃で攻撃を加えた。回転台座機銃は、固定機銃より地上攻撃には有利だった。
UH-100にもドアガンが据え付けられていて、ランディングゾーンの安全確保に大いに寄与した。
UH-100から特殊部隊員と情報局員が降り立ち、焼け残った施設から30分ほど機密書類の回収に勤しむと、嵐のように立ち去った。

しばらくしてから、収拾のために派遣され、兵員輸送魔動車で到着したコロンバス陸軍の兵士が見たものはこの世の地獄かと神に祈らざるを得ないほどの惨状だった。
兵士・農民関係なく、黒焦げ・肉片になった死体。
まあマフィアも敵対する政府関係者や敵対組織の者を首切り死体やバラバラにして展示するのが得意だったのでどっちもどっちではあったのだが。

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このような作戦がコロンバス各地で実行された。
ジャングルに散在する隠し麻薬畑の位置は、航空偵察仕様のGEA-50で丸裸にされ、次々に焼かれていった。
それどころか、堂々と重武装で警備されていた都市部のマフィアの拠点も、AH-100/UH-100部隊によって、瓦礫の山と化した。
都市部でのコラテラルダメージをも意に介さないツイステ合州国の強行作戦にコロンバス政府は抗議したが、「お前らが、ふがいないからだろう」と一喝されて黙り込んだ。

もちろん、ツイステ合州国が麻薬禍に悩まされていたのは事実であったが、実際のところ、航空兵器の実験のための作戦であったのは、軍関係者にはわかりきっていた。
なにしろ、陸軍の戦死者が、ほぼ出ないのが、昨今のツイステ合州国の悩みを解決してくれた。
航空機の高価な調達費用と運用経費を鑑みても余りある費用対効果である。
80出撃(ソーティ)で、反撃そのものによる損失はゼロ。
故障によるGA-50 2機(パイロットは脱出成功)、AH-100 1機の損失(オートローテーションで不時着)は許容内であった。
この麻薬戦争の圧倒的勝利により、ツイステ合州国は試験部隊から、大規模な航空機部隊創設を決定した。


プロジェクトK-7 大航空時代の夜明け

2021-08-25 09:15:34 | 召喚大統領が異世界を逝く!

プロジェクトK-7 大航空時代の夜明け

一ヶ月ぶりにガラッと特技研の引き戸を開けるとミスターM改めコーライ大統領ムーンが言った。

「ツイステ訪問はうまくいって面目躍如たるものがあったニダ!ご苦労だったニダね。まあモトヒノでの立ち往生には参ったニダが。海に落ちなかっただけで幸いだったニダ!」

技術者A
「だから無茶だと言ったでしょう…。」
技術者B
「本当に人死にが出なかっただけマシというものです。」

「まあ、それはもう良いニダよ!それより、ウリ達の技術は羨望の眼差しで注目されて共同開発や出資の申し込みが殺到したニダ!これからは研究費がガッポガッポ入るから覚悟するニダよ!www」

技術者一同
「(いいかげん休みが欲しい…)」

技術者A
「しかし、100時間しか持たないエンジンなどとても商品になるとは思えませんよ。」
技術者B
「魔力転換装甲を使用した機体もあまりにも無理があるでしょう。何かの拍子で魔力が途切れれば空中分解です。」

「まあ、いきなり大型旅客機は、さすがに無理があったニダね。そこで、多少高くても売れる軍用機を優先して開発するニダ!ノウハウを集めていけば、そのうち採算の取れる大型機も実用化できると言うことニダ。」

技術者H
「当初のロードマップの通りに、小型機から始めませんか?ターボプロップエンジンでのヘリコプターもなんとかなりそうですし。」
技術者I
「それが無難でしょうねえ」

かくして俊英達は、新型機の開発に勤しむことになった。
まず、魔力転換装甲による軽量化は軍用機には使えないだろうという結論に至った。
対策として対空砲火がそのうち作られることは容易に予想が付くし、機体にちょっと穴が空いて魔方陣の配線が途切れれば、その時点で機体構造が破綻し、お終いである。

小型の単発機で鋼鉄製で重くなった機体をエンジン出力の向上でカバーした。武装は250kg爆弾、ロケットランチャー、機関砲を搭載した。
その結果、増槽タンクも採用しても、かなり足の短いCOIN機になったが、まだ対空兵器や大空に敵のいないこの世界では、無双できる。
エンジンは300時間程度は稼働するまでに改良された。その時間になったら換装は免れないが、使い捨てエンジンというのは、異世界の某国製戦闘機でも採用された概念である。

ながらくホバリングから進まなかったヘリコプターの推進方法にもブレイクスルーが起きた。
ローターの下に小さい操舵翼を付けてダウンウォッシュを操舵で流すと、傾斜姿勢になる。
すると、斜め方向の推進ベクトルを分解すると、前後方向の推力が得られるのだ。
サイクリック方式よりは非効率だが、とにかく進む。
ヘリコプターの場合、前面以外の空力学的機体形状をさほど重要視する必要はなく、極論すればフレームだけでもいい。
申し訳程度に装甲を貼り付けると、立派な攻撃ヘリの完成である。
ファミリー化で、同じフレームを使用した搭載量を重視した汎用ヘリも完成した。
そもそも仮想敵に航空機はいなかったので、戦闘機の開発は後回しにされた。

「みんなよく頑張ったニダね。これなら売れるニダ!飛行機は"黄金鷹"、ヘリは”百鷲”と名付けるニダ!ツイステからの出資もあって製造販売会社も作ったので、君たちの将来の天下りも万全ニダよw」

これらの機体は、新設されたコーライ航空産業社(略称KAI)で製造され、販売されることになった。
最大の顧客はツイステ合州国であり、コーライ本国、次にモトヒノであった。
ぼったくりな値段設定だったので、周辺の小国には手が出なかった代物であった。
もちろん、これらを購入したツイステ・モトヒノは全バラシをしてリバースエンジニアリングに勤しむことになる。