第百三十話
空輸した大統領選用装甲リムジン、ビートルに乗ったフラリーはヨコシマ空軍基地からオーエドに向かった。
「今度はまともな話し合いになれば良いけど…。前回は散々だったわ。」
「マリア・アベ首相が心肺停止って三人だけのトップ会談場で、なにが起こったんですか…」
と事情を知らない側近がこぼす。
「あ、あれはコーライのムーンの暴挙に興奮したマリアが興奮して、そっ、卒倒しただけよ…」
「はあ…?」
そんなやり取りをしているうちにモトヒノの首相官邸に到着するのだった。
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首相官邸に到着したフラリーが職員に案内されて会談場に入る。
高級なソファーが置かれた会談場には迎えるはずのマリア・アベ首相が見当たらない。
「?!」と驚くフラリー。
すると、よく見るとモトヒノ側のソファーの陰に何かがいる。
うむ。マリア・アベ首相であるw。
「シャーーーーッ!!」と追い詰められた猫のように威嚇する。
かわいそうにニュウヨックでの心肺停止により、軽度の低酸素脳症のダメージが抜けきらず感情失禁の傾向がひどくなっていた。
いくら国民に大人気のマドンナ首相でも、与党の重鎮はさすがにもうダメかもしれんねと匙を投げ出しかけていたが、急変する事態に心神喪失しかけている首相の差し替えという荒療治を行う決断力を発揮できなかった。
いかにもモトヒノの無能な政治屋どもである。
フラリーは唖然としながらも、さすが女だてらに世界最強大国の大統領にまで上り詰めた女傑である。
すぐさまリブートし、
「チー…チチチ、怖くないよ。美味しい話も持ってきたわよ!」
と作り笑いを浮かべて懐柔しようとするのだった。
なんだかんだで、マリアをソファーに座り付けて、会談を開始した。
フラリーが発言する。
「今回の件では、モトヒノに自制を強要しすぎたことは、私も大いに反省しました!そこで我が国も腹を括りましたよ!」
と、腹案を話し始めたのである。
それを聞いたマリアの瞳には次第に理性の光が戻り始め、行き過ぎて狂気の光まで宿り始めたのだった。
「姐さん! 付いていきます!!!」
興奮冷めやらないマリアの姿に、満足したフラリーは、キメ言葉を発するのだった。
「この一件、私が仕切らせていただきます…」
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この会談の一週間後。
緊急展開能力では随一のツイステ合州国海兵隊遠征部隊(MEU)を中心とした先遣部隊と、コーライへの反撃作戦計画で編成済みのためすぐに用意できたモトヒノ軍の同盟軍wが、コーライの南端、プーサンに次々に上陸を始めた。
第一次コーライ戦争以来の海外の大部隊がコーライ半島に展開されることになったのだった・・・。