Blue Moon Cafe

~since1999~

犯人探し

2017年08月29日 | 瑠璃色ノート
新理事長から緊急理事会が召集された。平日の夜、仕事終わりでご飯も食べてない。

理事といってもマンション自治会の輪番制。お当番だからしょうがなく、というスタンス。

議題はゴミ出し。ルール違反をして布団をそのままゴミに出した住人(もしくは外部の人間)

がいるので、監視カメラの映像をさかのぼって調べて特定する、というもの。

15年くらい前にマンション各所に、犯罪抑止と不審者対策の目的で監視カメラを付けた。

録画の内容は事件や事故の際、警察からの要請があったら立ち合いのもとに観ることにし、

建物内での違反行為や住人の行動を監視するものではない、という前提だった記憶がある。

(犯人探しをしたい)という正義感と好奇心のワクワクに取りつかれた新理事長と副理事長。

女性の理事の出席は私一人。僭越ながら反対意見を述べた。隣人を犯人扱いしたくないので

今回の件もこれまで同様、注意書きの文書をゴミ集積所に掲示し注意喚起することを提案。

「奥さんは性善説派だから・・」「ルール遵守する人なら犯人探しに同意賛成するはず」

皮肉なのか女性卑下か、半分にやけながらの態度にカチンときた。『奥さん』でも無いし。

犯人なんて知りたくもない。ゴミの始末はマンション管理費と市町村税で解決する話だ。

正義感と好奇心を抑えきれないオジサン達を、終始努めてにこやかにおだやかに諭した。

疲れた。

転げ落ちる階段

2017年08月27日 | 瑠璃色ノート
在来線から地下鉄に乗りかえる連絡通路の階段を、注意深く下りていた。

ふいに背後から「キャー」という女性の悲鳴と、派手に転んだような鈍い音が響いた。

「痛っっ、ッテ―、、なんなのよ、もう・・」という涙声のつぶやき。

ふり向くことが出来なかった。手すりを伝わりながら速やかにその場を離れた。

先月私も全く同じところで派手に転んでアザを作った。

運が悪かったら頭から、もしくは顔面から落ちていた。

(ヒールで足がぐらついたのだ、ただの偶然)と自分に言い聞かせ、娘に話すと

「嘘!そこの階段、私も前転んだ!普通に下りてたのに、ダダダって落ちたっ」

偶然が重なり怪談になる。ただの偶然だ。けどこれも結構あとからじわじわ来る。

二人の老婆

2017年08月24日 | 瑠璃色ノート
霊感も無く幽霊も見たことがなく、夫の夢さえ見たことがないので、死後の世界は『無』

だと思っていたが、『走る女』を見てしまってからなんだか疑心暗鬼。コペルニクス的転換。

毎朝田舎道を通って通勤しているが、たまに見かける高齢の『佇む老婆』と『異形の老婆』。

一人は小さくやせて黒い帽子をかぶり、いつも信号の角の家の前の生垣の石のところに

ちょこんと腰かけ、信号で停まる車を眺めている。死んだ祖母と面影が重なるので

今日も元気そうで何よりだなあ、と呑気に思っていたけど、はて。疑うときりがない。

よく見るとたまに何かつぶやいている。こっちをじっと見ている。朝の8時40分。

もう一人の老婆は、白髪をふり乱し、ボロをまとい田んぼの一本道を歩いてくる。

ホームレスのような風貌でビニール袋に荷物持って、3ヶ月に1〜2度出くわす。

身寄りが無いんだろうか、と見かけるたびに思う。この間は道にしゃがんで嘆いていた。

ように見えた。見かけると(まだ生きてた)と安心したり心配になったり福祉を問うたり。

娘達にそのことを話すと「お母さん!それ、絶対に目を合わせちゃ駄目だよ!」

「もう絶対ソレだよ」「こわいよ」と言われても生きてる人とソレの区別が出来ない。

同じ通勤路の同僚に二人の老婆の確認をしたいが、怖くていまだに出来ないでいる。

あとからじわじわくる話

2017年08月20日 | 瑠璃色ノート
【走る女】


のどかな秋田。田んぼと山しかない国道でお盆の帰省ラッシュ。渋滞行列のろのろ運転。

娘二人と何気なく景色を眺めていたら、はるか行列の先の方から細い歩道を
こちらに向って走ってくる長い髪の女性がいた。

白いブラウスと薄茶のロングスカートで、カバンもケータイも持たずに悲壮な顔をして
早いペースで私の車の左横を通り過ぎて行った。

近くにお店や集落も無いのに一体どこまで走っていくのだろう、と不思議に思って

「ねえ、あの人どこまで走って行くんだろうね」と娘たちに話しかけても返事がない。

「ねえってば。あの人、ケータイもカバンも持たないで何急いで走ってくんだろうね」
と語気を強めてみると

『お母さん、さっきから何言ってるの?』と恐ろしげに目を見開いて聞いてくる。

「さっき、この渋滞のずっと先の方からそこの道ずっと走ってきた女の人、居たでしょ?」

『誰のこと言ってるの!?』『私たちずっと一緒に外見てたけど、そんな人見なかったもん』

「・・・え・・・」


車中大混乱。


今すれ違ったのは本当に普通の人のように見えた。