以前、日本の作家・水上勉さんゆかりの古民家が、台北県淡水に移築されたという台日交流の話題をお伝えしました。(関係過去記事)
水上さんの信条だったという「一滴の水の精神」にちなみ、「一滴水記念館」と名づけられたこの古民家は、その後静かに正式オープンを向かえ、細々とながら、台湾と日本の交流活動の舞台となっています。
上の写真は、故・水上さんの長男で、作家・美術評論家の窪島誠一郎さん(左)。
幼い頃に戦争でお父さんと離れ離れになり、30歳を過ぎてから再会、自身も著作家の道へと進んだ窪島さんは、11月8日に初めて、妹の水上蕗子(ふきこ)さんと、この古民家を訪れました。
窪島さんは、水上勉さんのお父さん(窪島さんの祖父)が建てたこの家が、自分たち家族が暮らした事のない台湾の淡水に根を下ろし、そして水上さんの本と、同じ時代を生きた日本生まれの台湾の作家・陳舜臣さんの本が静かに収められ、人々の交流に役立っている事は、時代を超えた奇跡だ、と感激したそうです。
窪島さんたちが古民家を訪れた日は、地元の人たちが集まり、好きな作品や日本統治時代の思い出などについて、和やかな語らいが行われました。
また、5日には、陳舜臣さんも久方ぶりに台湾の地を訪れ、淡水に誕生した自分と水上さんの共同文庫を見学しました。
文庫を見学する陳舜臣さん
日本の神戸で生まれその後日本国籍を取得した陳舜臣さんは、日本で数々の賞を受賞している大家。
86歳という高齢になり、今はほとんど活動はしていませんが、もう一つの故郷である台湾に誕生した、日本との縁をつなぐ文庫をぜひ訪れたいと、困難を押して淡水までやってきました。きっと、忘れがたい「帰郷」となった事でしょう。
メディアに注目されるような大きなイベントではありませんが、このように草の根で広がる心と心のつながりを、応援して行きたいと思います。(華)
文庫を寄贈してくださった陳舜臣先生、水上蕗子氏、窪島誠一郎氏に訪問していただけ、台湾の方と、交流でき嬉しい限りです。
細々ですが、今後とも継続していきます。