働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

黒川検事長 退職金満額 懲戒処分なし訓告 甘い法務省調査

2020年05月23日 | 検察庁法改正問題
お尋ねの件に関し、調査した結果は次のとおり
1 令和2年5月1日、いわゆる賭け麻雀をしたものと承知している。
2 同日、ハイヤーに同乗し、その費用は支払っていないものと承知している。
3 5月13日も賭け麻雀を行い、費用負担のないハイヤーに同乗したと承知しているが、この2日間以外、賭け麻雀やハイヤーの送迎の事実の認定には至らなかった。
4 記事に出ている記者には接触していない。(法務省が野党議員に回答した黒川検事長賭けマージャン調査結果回答書より)


黒川検事長・賭けマージャン訓告は懲戒処分ではないから退職金は満額支給

昨日(2020年5月21日)の午後、安倍晋三内閣総理大臣(首相)と森雅子(まさこ)法務大臣が、「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する処分について「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する法務省調査報告書」に基づいて協議した。

その「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する法務省調査報告書」に基づく安倍内閣総理大臣の決定は、結局、「訓告」という国家公務員法・地方公務員法の規定による懲戒処分ではない、軽く甘い決定であった。つまり、訓告と言うと何か処分された感があるが、黒川検事長に今後支払われる多額の退職金は満額で死は他われることを意味する。すなわち、訓告は国家公務員法では懲戒処分にあたらないので、退職金は減額されることはない。

では、訓告という懲戒処分にあたらない軽く甘い結論にいたらせた「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する法務省調査報告書」の内容は、どのようなものであり、調査書には何が記載されていたかは、極めて重要な事柄となる。

黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する法務省調査報告書
本日(2020年5月22日)午前6時42分、ツイッターで福島瑞穂(みずほ)議員が「法務省が発表をした黒川さんの賭けマージャンについての報告です。どれくらいの金額を賭けたのか、どれくらいやってきたのか分からず不十分な調査です。不十分な調査で処分はおかしい。」とツイートし、「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題」に関する法務省調査内容が記載された一枚の紙の写真を公開した。

そこに記された調査結果は予想以上に簡単な内容で、杜撰な身内に対する甘すぎる調査内容であった。特に問題視すべきは、3の「2日間以外、賭け麻雀やハイヤーの送迎の事実の認定には至らなかった」という個所で、このことにより常習性のない賭博行為であったとされたのだろう。つまり人事院「懲戒処分の指針」では「(常習としてではない)賭博をした職員は、減給又は戒告とする」(安倍内閣による決定は「訓告」であり指針にも記載されていない処分となる)とあり、また「常習として賭博をした職員は、停職とする」とあるので、常習性があったかどうかの事実認定は重要。

にもかかわらず、4には「記事に出ている記者には接触していない」と記載されているので、賭けマージャンをした産経新聞記者2人と朝日新聞元記者1人からは聞き取り調査などは一切行っていない不十分な調査であったと言わざるを得ない。この法務省調査報告に納得できる国民がいるのだろうか。

なお、蓮舫議員も「この程度の聞き取りを「調査」とする法務大臣。産経新聞の2人の記者、朝日新聞社員と黒川さんの言っていることに食い違いもあるので再調査を、精査をしてからの処分ではないか、と階議員の質問に対し、森雅子法務大臣は調査は終わったとの認識。どこまで国民に背を向けるのか」とツイートした。

追記(2020年5月22日)
菅義偉官房長官は22日午前の記者会見で、東京高検検事長を辞任した黒川弘務氏の賭けマージャン問題をめぐり、再調査は不要との認識を示した。「法務省で必要な調査を行ったと聞いている」と述べた。黒川氏の退職金に関しては「国家公務員退職手当法の規定に基づいて支給される」と語った。進退伺を提出し、安倍晋三首相に慰留された森雅子法相について、菅氏は「引き続き法務行政に関する職務を全うし、検察の信頼回復に努めてもらいたい」と述べた。(産経新聞電子版、5月22日13:40配信)

参考「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68、人事院事務総長発)
人事院では、この度、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました。
職員の不祥事に対しては、かねて厳正な対応を求めてきたところですが、各省庁におかれては、本指針を踏まえて、更に服務義務違反に対する厳正な対処をお願いいたします。

特に、組織的に行われていると見られる不祥事に対しては、管理監督者の責任を厳正に問う必要があること、また、職務を怠った場合(国家公務員法第82条第1項第2号)も懲戒処分の対象となることについて、留意されるようお願いします。以上

参考「懲戒処分の指針」抜粋
第2 標準例
3 公務外非行関係
  (1) 放火
    放火をした職員は、免職とする。
  (2) 殺人
    人を殺した職員は、免職とする。
  (3) 傷害
    人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
  (4) 暴行・けんか
    暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
  (5) 器物損壊
    故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
  (6) 横領
   ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
   イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。
  (7) 窃盗・強盗
   ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
   イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
  (8) 詐欺・恐喝
    人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
  (9) 賭博
   ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
  (10) 麻薬等の所持等
    麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
  (11) 酩酊による粗野な言動等
    酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
  (12) 淫行
    18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
  (13) 痴漢行為
    公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
  (14) 盗撮行為
    公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。


追記(2020年6月3日)
日刊ゲンダイ電子版(6月3日配信)は「黒川弘務前東京高検検事長の賭けマージャン問題をめぐり、市民団体『安倍首相による検察支配を許さない実行委員会』が2日、黒川氏に対する告発状を東京地検に提出」と報じた。

追記(2020年6月5日)
共同通信(6月5日配信)の報道によると,森雅子法務大臣は6月5日の参議院本会議で、法務省に設置予定の「法務・検察行政刷新会議(仮称)」に関し、賭けマージャン問題で辞任した黒川弘務前東京高検検事長の定年延長や訓告処分、検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案について、協議対象には含めない意向。森大臣は3点を列挙し「黒川氏の勤務延長や処分は適正に行われた。検察庁法改正案の内容も適切で、これらの適否を同会議の議題とする考えはない」と明言。


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