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『5つ数えれば君の夢』 (2014) / 日本

2014-03-09 | 邦画(あ行)


監督: 山戸結希
出演: 山邊未夢 、新井ひとみ 、庄司芽生 、小西彩乃 、中江友梨
鑑賞劇場: シネマライズ

映画『5つ数えれば君の夢』 公式サイトはこちら。

東京女子流 オフィシャルサイト


5人組ダンス&ボーカルグループ「東京女子流」の映画初主演作となる青春劇。文化祭を間近に控えた女子校を舞台に、少女たちのきらめきと葛藤を、5人が演じる少女それぞれにスポットを当て、叙情的に描き出した。(映画.comより)




東京女子流さんのことは知ってます程度なんですが知っています。きっかけは指原莉乃プロデュースの「ゆび祭り」。この映像で彼女たちを知りました。ここで歌っていたのは「おんなじキモチ」。他のアイドルさんたちと違った魅力を東京女子流に感じましたね。曲もかわいかったし。






だからそんな彼女たちが、新進気鋭の山戸結希監督とコラボだなんて、それはそれは超期待というか楽しみにしていたのでした。
ちなみに山戸監督の『あの娘が海辺で踊ってる』は未見。



それにしてもたった2年間なのに彼女たちはとっても変化してますね。中学~高校の頃って1年ごとに顔が変わるくらい変化してる。なのでもう去年のことは今年はできない。そんなめまぐるしい時代の彼女たちの、まさに「今」を切り取った。『5つ数えれば君の夢』はそんな作品なんだと思います。

あらすじとしては本当に「女子校」全開といった感じで、文化祭に向けてのあれやこれやのエピソードが最終的に収束していく訳なんですが、この「文化祭」って女子校通いの女子にとっては結構曲者なんですよね。同じく女子校出身者として言わせていただけば、こんなに1年で気が張ったりいろいろ起こったりするイベントもないもんだと(笑)女子高生にとっては最大の見せ場ですからね。しかも学外からもお客さん来る、男子も来るから緊張するけどうれし楽し(!)だから絶対に手抜きができないものなのです。イベントにしても、文化系の展示にしても。なのでとにかく如何にして自分たちが最大のパフォーマンスができるかということに命を賭ける、それが女子校における文化祭なのです。

その最大の象徴が、これまたどこの女子校でも大体やってる「ミスコン」。高校生がミスコンなんてけしからん!って言い出しそうな人もいたりとか、そんな世界的な流れとは全く逆流してますが(笑)祭りなんですよね。これって。
女子校って仲間内で「あの子いい~」「あの先輩超カッコいい!」な動きがいっぱいありまして(笑)、そういうコを文化祭のミスコンで出したりして、ついでに学外の男子にも投票してもらったりして大いに盛り上がると。ちなみに私の高校では女子が「ミスター」に変装してコンテストだった記憶があるんだけどもう忘れてるかも。それはそれで面白いんですよ。ミスコンだとまともに女子が競っちゃって文化祭後の人間関係に影響したりもするんですが、ミスターにしておけばギャグなんでその心配もないということで。うまくやってました。

なので、宇佐美はガチで取り巻き作って女王になりたい派なんですね。都は宇佐美に百合的に憧れる存在。
りこは宇佐美も含めた「多数派」から全く超越していて、自分の身体の中から発するものに従って生きたいと思い実際にそう生きている。だけどそうすればするほど周囲からはわかってはもらえず、自分のパフォーマンスが存分に発揮できないことにもジレンマを抱いている。
さくはどちらかというとりこに近い派で、園芸を通じて自分の感性を出したいんだけどそれも少数派ということで除外されがち。かといって完全に疎外されるのも嫌なので適当に過ごしているといったところ。
委員長・・・ 実は一番つかみどころのないキャラでした。ひたすら文化祭の成功のために奔走するのはわかるけど、統率することで生きがいを感じるタイプ?
こうしてタイトルにある「5つ」とか「夢」ってものが何となくキャラ設定から見えてくるような気もします。

どこの世界でもそうなのかもしれませんが、多数派は少数派をスポイルしたがる。特に女子の集団のそれは残酷です。多数派に屈して学園生活を生きないといけないのか?少数派の女子は常にそう考えているといってもいいでしょう。昔だって些細なことがきっかけで誤解されてしまったり仲間外れにされてしまったり、厄介な話はいっぱいあった。今はネットや携帯、スマホの登場でさらにそれが加速してるんで子どもたちは可哀想。気の毒になるくらいピリピリ気を遣ってるんじゃないでしょうか。少しでもボスの機嫌を損ねたらいけないと、誰かになびくことが楽しい学園生活だと思わされている不幸は21世紀になっても変わらない。

りこはそんな状況を眺めているけれど特に反発するわけでもなく、かといって屈することもしない。彼女には彼女の世界観があり、その夢に向かってひたすら進むだけ。そうは思っていても、同じようにみんなの輪からはずれがちなさくの存在に気が付いて、同じ匂いを感じるんですね。個として生きていきたいという存在を。さくはそんなりこに憧れに近いものを覚えながらもそれを表面に出せない。出してもいいのだけど宇佐美からの報復が怖い。
しかし、全てを感性のままに表現したりこに、さくは最終的には賛同するんですね。そして賞賛として自分の大切なものを惜しげもなく差し出す。このシーンは美しかったです。一心不乱に自らの表現を何物にも捕われずにし続けるりこ、そこに惜しみなく注がれる花の渦・・・。

もしもこんなことが実際の文化祭で起こってしまったらそれこそティーチャーストップがかかるとは思うんだけど、実はすべての人にこんな願望があるような、そんな気がして仕方がない。本当は自由に気ままに生きたいのにそれができない理不尽さ。特に日本の学校というところは、1人1人を「生徒」という箱に押し込める機能をしているだけに、その息苦しさたるや相当のストレス。まして女子校なんて型にはまることを要求される最たる場所、そこに合えばいいけど面倒くさいと思ってしまったら最後だし。心のままに振る舞えない世界にしか生きられない現実に取り巻かれれば、どこかで自分をアウトプットしていかないと壊れてしまう。それがりこのあのパフォーマンスとなったのだろう。

アイドルが主役ならではの制約を感じさせて、思わず「それはあまりにもなさすぎて」笑ってしまった部分もあるが、東京女子流という「枠」に入ることを選んだ5人にとっては、映画でそれぞれの役を演じ、夢というテーマで演技することでまた違う自分に気が付いたこともあるように思う。単にアイドル映画で終わらずにアートな側面を打ち出したことで、これからの活動に得るものもきっと大きいのでは。山戸監督にとっても、アイドル映画を1から作り上げて、プロモーション的なものを感じさせずに無理なく物語に仕上げたということで、きっと素敵なお仕事にもなったのでは?両者のコラボ、正解だと思いましたよ。


★★★★ 4/5点









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