21世紀のデカメロン Decamerone del duemila

映画と世界史のあれこれ


植村 GIulio 光雄

44.クロッシング・ザ・ブリッジ

2007-05-01 | 映画
 映画「クロッシング・ザ・ブリッジ」は,ヨーロッパとアジアの「架け橋」であり続けるイスタンブルの音楽についてのドキュメンタリーです。
 イスタンブルは,紀元前7世紀にギリシア人が建設したとされる植民都市ビザンティオンに始まります。4世紀にはコンスタンティヌス帝によってローマ帝国の都コンスタンティノープルと名を変え,ローマ帝国の東西分裂後は,東ローマ帝国の都として繁栄しました。15世紀半ば,イスラーム教徒のオスマン帝国が東ローマ帝国を滅ぼして都を置き,その名もイスタンブルと変えています。
 ドイツのミュージシャン,アレキサンダー=ハッケが映画音楽製作のさいイスタンブルの音楽に魅せられたのをきっかけに,現地を訪ねてさまざまな音楽や人々と出会います。独特のメロディラインをもち,電気を通した伝統楽器を使うロック,まさにマシンガンのような言葉のラップ,スーフィズムに最新のクラブサウンドを融合させた音楽,最近まで禁じられていたというクルド人の歌,「アラベスク」と呼ばれるアラビア風音楽など,さまざまなタイプの音楽が登場します。とくに,ラップはトルコ語の発音が向いているのか,迫力があります。トルコ語は日本語に比較的近い言葉のはずですが。
 わたしも,イスタンブルを1992年に訪ねたことがあります。通りを歩いていると,露店でカセットテープを売っていました。ロックを愛するわたしは,何かトルコのロックのようなものはないかとたずねたのですが,英語が通じません。しかたなしに,ラベルのデザインで,決めました。 わたしのカンは正しく,聞いてみると,独特の音階にギターがからむ,まさにトルコのハードロックでした。わたしの授業を受けたことのある人なら,イスラーム世界のところで,「コーラン」や旋回舞踏教団の「スーフィーの神秘の笛」や「シーク教の祈り」とともに,トルコのロックをかけたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。 あれが,その時買ったエルキン=コライの「HAY・YAM・YAM」です。
 この映画には,そのエルキン=コライが登場します。動くかれの姿を見ることがあるとは思ってはいませんでしたので,映画館のなかで「おう」と声をあげてしまいました。パンフレットによれば,1960年代からトルコ語のロックをやっていたかれは,トルコ音楽を電子楽器で演奏した最初のミュージシャンであり,またトルコの伝統楽器でビートルズやストーンズのカバーもしたそうです。60歳を超え,髪も薄くなっていましたが,現在も現役として活躍し,若いミュージシャンの尊敬を集めていました。
  ところで,ラッパーの父親が,若い連中の音楽に対して自分たちの伝統的音楽としてあげたのが,トルコの音楽ではなくジミ=ヘンドリックスやエリック=クラプトンだったのには少なからず驚きました。でも,時代は,確かにそうなんですね。

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2 コメント

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エルキン=コライのくだりにしびれました。 (にっころ)
2007-05-02 00:14:49
エルキン=コライのくだりにしびれました。
すげぇ。その偶然すげぇ。
やっぱジャケ買いってありですよね。

写真替わりましたね。
正面って珍しいんじゃないですか?
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メーデーで映画の日だったので観てきました。 (kiku)
2007-05-03 02:14:50
メーデーで映画の日だったので観てきました。
高橋由佳利さんの漫画や友人のHP(4/4に渋谷クアトロで行われたBaba Zulaライブの感想も)で、トルコの様々な音楽には興味があったのですが、実際に聴いたのは初めてでした。
独特な音階、リズム、トルコ語、楽器が混ざり合っていた事と、映画館の大音量で軽くトリップしそうでした。
漫画に描いてあったセゼン・アクスやオルハン・ゲンジェバイ(千葉真一さんに似てると思った)も出演していて感動です。
ラップは発音とかリズムが合っているのかなと思います。話をしている時もラップみたいだなーと。

音楽っていろいろなジャンルがあって、それぞれに成り立ちや歴史や内容やスタイルは違うのだろうけれど、"Music"を"音楽"と訳した人ってエライ!
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