12月8日は真珠湾攻撃の日(現地では7日)です。1941年のこの日,日本はハワイの真珠湾に停泊中のアメリカ太平洋艦隊を奇襲攻撃し,太平洋戦争が勃発しました。映画「パール・ハーバー」はこの事件と,その後のアメリカの報復作戦を描きます。
ところが,この映画は恋愛映画です。恋愛は極限状況で燃え上がります。そのいい例が「タイタニック」でしょう。「パール・ハーバー」の制作者は「パイレーツ・オブ・カリビアン」3作などで知られるジェリー=ブラッカイマーで,恋愛を燃え上がらせる背景として,真珠湾攻撃を選んだにすぎないのかもしれません。そして,真珠湾攻撃の戦闘シーンを,これでもかこれでもかと最新の技術を駆使して見せつけ,その翌年にアメリカが空母に航続距離の長い陸軍の爆撃機を乗せて日本のいくつかの都市を爆撃した作戦を,英雄的に描きます。
同じ真珠湾攻撃を描いた1970年の「トラ・トラ・トラ」が,アメリカの負け戦のみを描いたのに対して,こちらはちゃんとアメリカ人のナショナリズムを満足させたことでしょう。「トラ・トラ・トラ」は,当初日本側シーンの監督だった黒沢明が途中降板したことでも話題になった映画です。この辺りの事情も非常に面白いですが,またにしましょう。
結局この「パール・ハーバー」は,甘い恋愛ドラマで客を引きつけて,ナショナリズムで盛り上げるということでしょうか。そのため,日本に関するシーンの時代考証は,まったく適当です。
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この映画が公開されて数カ月後の2001年9月11日,同時多発テロが起こり,アメリカでは一挙にナショナリズムが高まりました。
ところで,12月8日は1980年,ジョン=レノンがニューヨークのダコタ=アパートの前で射殺された日です。ジョン=レノンといえば,日本では元ビートルズのメンバーで,ミュージシャンとして認識されていると思います。しかし,当時のアメリカでは政治的にラディカルで非常に危険な人物として政府にリストアップされており,マインドコントロールされたマーク=チャップマンに暗殺されたとする説もあります。レノンを暗殺したチャップマンを中心に描いた映画に,2007年の「チャプター27」があります。チャップマンは,現在もニューヨーク州のアッテカ刑務所に服役中です。
同時多発テロ直後,ジョン=レノンの「イマジン」を,アメリカの大手ラジオネット局が系列局に流さないように指示しました。そのサウンドはソフトですが,歌詞は「国家なんかない」「宗教なんかない」「財産なんかない」と「想像して」と確かに過激です。私は20世紀最高の1曲だと思います。その後アメリカでも日本でもコンサートでよく歌われていますが,ミュージシャンたちはどんな気持ちで歌っているのでしょうね。
これも,山川出版社のHPに2004年に書いた原稿に手を入れたものです。レノンは今年で没後30年,生きていれば70歳になっていたのですね。
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