さて循環する同じ訴えをウンウンとしばし聞きながら、頃合をみて療養上の注意を話し、訴えに終止符を打とうとした。「そうですか、それは大変でしたね・・。それでは家では、そのような時にまず血圧をはかって・・・」と言いかけたが、患者さんはこちらが話していることを意に介さず自分の愁訴を延々と「・・・ですからねっ、頭が重くなってめまいが・・・」と喋り続けるのである。つまり、まったく会話をさせてもらえないのである。ここで「ちょっと私の話も聞いてください」といってしまうと、一歩間違えば「あそこのクリニックは患者の話をきちんと聞いてくれない」と外で噂される可能性もある。しかたないので黙ってまた「ウン、ウン」と同じ話を聞くしかない。心の中では「あ~次の患者さんはイライラしてるだろうなー」と思いつつ、自分の心もとてもヤキモキしている。ところがそんな患者さんに限って結末は意外と簡単なのである。