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赤司 征大|Masahiro Akashi
UCLA MBA留学記
WHITE CROSS株式会社 起業までの軌跡

日本歯科医療へのテーゼ4 教育

2015-04-22 04:07:45 | 日本歯科医療へのテーゼ
 昨年秋口の文章です。これの項目は私の中で、特に古い考えを含み、現在の考えのコアとは言えない部分が多々含まれています。現実の即して、どうアプローチをとるべきか、再度思考を深める必要があります。



 第4回目の今回は、教育に焦点を当てます。歯科医療では、非の打ち所のない高額治療症例のデータや写真が歯科医療の本質であるかのように扱かわれ、B to Bのセミナービジネスが行われています。歯科医学のボーダーを拡げる、あるいは知識を体系化した専門書などを普及させる意味合いでその存在価値は確かにあります。また、それらを学ぶ事は、プロフェッショナルとしての成長につながるように感じ、自己の重要感を満たしてくれる分かりやすい道として映ります。その一方で、実際にそういった治療を提供する機会は少なく、それが患者にとっての実質的価値を生むものなのか、それとも単なる自己満足なのか、モチベーションの高い若い歯科医師ほどジレンマに陥ります。単純な論理だけで否定出来ないプロフェッショナリズムがそこにはあるため、歯科医師は、如何にバランスを取るかが大切な職業だと言えます。

 個人的には、新人歯科医師は、寝食を惜しんで勉強/技術研鑽をするべきだと考えています。その過程で、自己満足の領域に入り込むことは当然で、モチベーションが高ければ誰もが一度は通る道です。大切なのは、ガイドとなるベテラン歯科医師が同じバランスの失い方をするのではなく、歯科医療を通じて社会に提供するべき価値について若い歯科医師に語りかけ、彼等のジレンマに正面から向き合う存在である事です。また、バランスについて考えられる高い視座を身につけてもらう為に、学部教育において最低限のマネジメント科目を導入し、プロフェッショナル視点とマネジメント視点の両方を教育するべきです。医療におけるマネジメントとは、“如何に患者に医療を通じて提供できる価値を高められるか”を現実に即して考え、実行していく力です。

 次に歯科医師の実践力教育に焦点を当てます。日本の歯科医師の約85%は診療所勤務です。従って、歯科医療のスタンダードは診療所において提供されている歯科医療と言えます。従って、歯学部においては、診療所で通用する実践力のある人材の育成を目指すべきです。しかしながら、歯学部における学部教育のみで十分な実践力を身につける事は難しく、その習得は、卒後に現場にて行われているのが実情ではないでしょうか。とは言え、卒後教育に置いても、歯科医師として必要な治療技術や治療計画策定の基礎能力を習得できる環境が十分に整備されているとは言えず、日本の歯科医療は、実践力のある歯科医師の輩出機能を組織的に持っていないと言える可能性があります。歯科大学のリストラクチャリングが必要ですが、その必要性は認識されながらも、多くの既得権益/利害関係の上に成り立っているため、抜本的な改革は見送られているようにも見受けられます。近年の歯科医師国家試験の合格率等を見るに、今の歯科界は現世代の現状維持のために、次世代を犠牲にしているように見えます。

 私は現在、教育という課題に対する戦略をビジネスサイドから模索しています。その第1歩として、歯科医療従事者のみを対象としたIT Platformを通じて、ベテラン歯科医師の知識/技術/経験知などが、次世代に継承されるフローを作り上げようとしています。サービスの一例ですが、複雑な症例における治療計画策定のガイドラインが存在しない歯科医療においては、同じ症例でも歯科医師毎に治療の結果として作られる口腔に大きな違いが生じます。論理的判断と経験的判断の両方が重要となる歯科医療においては、法律や経営学等と同様に、若い歯科医師がベテラン歯科医師の治療計画策定の思考回路をトレースできるケーススタディーから得られる学びは少なくありません。そこに注目した症例データベースを作り上げようとしています。

 医療のあるべき姿を考え、歯科医療従事者同士/既存の枠組みを越えて医療関連業種を結びつける架け橋となるIT Platformを作り上げて行くことが私の目標です。その為には、これまで具体策が見つからなかった歯科助手への教育、来るべき予防へのシフトに備えて歯科衛生士資格保持者の再活性にも取り組んで行きます。中期的には、そのIT Platformを介した医科歯科連携や、歯科医療の予防へのシフトを進めて行きます。歯科単体では不可能なことでも、ヘルスケアの一翼を担う歯科と位置づけることで、実行可能性のあるビジネスモデルを作れる可能性は大いにあります。私のビジネスのミッションは、“医療の質を高め、人々の健康を高め、歯科医療の社会的価値を高める。”です。

日本歯科医療へのテーゼ3 歯科医療費と保険制度

2015-04-22 04:04:46 | 日本歯科医療へのテーゼ
 昨年秋口の文章です。これもまた、現在と比較して古い考えを含んでいますが、私のコアとなる考えです。


 第3回目の今回は、歯科医療費と保険制度に焦点を当てます。医療費が継続的に増加する中、歯科医療費はこの20年近く、約2.5から2.7兆円代で推移しており、実質経済の成長を考えると、寧ろマイナス成長をしていると言えます。米国のデータによると医療費が上昇する要因は、①医療技術の進歩/②保険適応範囲の拡大/③自動化が難しく他産業と比較して労働生産性が改善されない事、次いで④人口増加/⑤高齢化となります。

 日本の歯科について当てはめてみると、①医療技術の進歩については、保健治療におけるここ数十年の歯科技術の進化 = 機材性能/材料性質の向上と言えます。歯科医療が社会へ与えている価値が ”削る/埋める/被せる/抜く/補完する”であり続け、世代を超えてほぼ同じ事を行っているのであれば、改善効果が定量化しづらい分、この観点から歯科医療費を拡大する事は難しいです。また、新しい治療技術を自費治療として扱い、重要な収入源とする歯科特有の慣行もその理由として考えられます。②保険適応範囲の拡大については、寧ろ適応範囲が広すぎることが問題視されています。④人口増加は日本には当てはまらず、⑤高齢化については、歯科ではある一定水準の関係性を確かに有していますが、入院/大量投薬を含むケースが少ないため医科ほど明確な年齢と医療費との関係性はありません。

 以上より、単純な“医科医療費の経年的変化との比較論”等では、歯科医療費向上は図れない事が分かります。可能な戦略は、短期的には、③労働生産性の非改善によるコスト上昇/保険適応材料のコスト上昇についての補完を求め、長期的には、前回記載した予防行為の経済的効果に合わせ医療費上昇を求めると言うものです。

 次に保険制度ですが、現在の制度下では、対応する治療の幅が広すぎ、個々の単価が安く設定されているため、薄利多売型のビジネスモデルが前提になっている上に、1回で終わる治療を、複数回にわけ細く長く治療をせざる得ない仕組みになっています。つまり、国家観から見た際に、保険治療において歯科医師に求められるのは、意図的に治療の生産性を下げ、短時間で要件を満たした過不足のない治療を国民に提供する事です。確かに現行の制度は、医療費のコントロール自体はかけやすい仕組みですが、その運営実態は混沌としており、最低限のコストすら捻出されていない治療項目が存在する理不尽、多くの非効率を内在しています。(医療における非効率は予想以上に凄まじく、米国医療費の最低20%が非効率による過剰コストだという分析すらあります)

 この状況において尚、私は日本の歯科医療は、例えば米国等のやり方を周到すべきではないと考えています。他の先進国と比較した際に、日本の歯科治療費の個別単価が低い事は明確ですが、日本において歯科医師になる為の努力量/平均年収などを考慮すると、歯科医師が日本社会において生きていく上で悪い職種とは思えないため、歯科医師が潤う事を目的とした制度改革には反対です。国家としての全体最適を無視した戦略は、結局の所、医科/歯科間、さらには国家単位での医療/他産業間でのコストの押し付け合いにしか成りません。目的とするべきは、あくまで歯科医療の社会的価値を高める事です。

 他の先進国では歯科治療は保険対象外である事が多く、一般的に高額と認識されており、国民が歯科疾患を生活習慣病と認識し、歯牙を大切にする傾向があります。その反面、歯科治療費が高いがゆえにアクセスが悪く、その結果生み出されている低所得者層の惨状を考えると、医療のケアサイクルにおいて重要な役割を果たしている歯科治療へのアクセスを下げるような戦略を安易にとる事は、中長期的に間接的な医科医療費の上昇にまでつながる可能性が高く、現在の社会の変化の流れにも反します。

 日本の歯科保険制度改正において基本的に行うべきは、治療単価設定にてアクセスのし易さと患者への意識付けのバランスを取りながら、保険適応ラインの再線引き/確実に連続する治療をまとめたバンドリング請求方式の導入を行い、レセプトへの治療実態の反映と効率化を図る事です。その結果得られようになる信憑性の高い医療データに基づいて、予防の経済的効果を提示し、予防と治療のバランスにおいてお金が回る仕組みを作り上げ、予算配分編成を行います。無論、予防へのシフトは年代毎に段階的に行うべきであり、それは、治療行為主体の歯科医療を受け続けてきた年代へのセーフティーネットとなります。

日本歯科医療へのテーゼ2 歯科医療の価値と予防

2015-04-22 04:03:24 | 日本歯科医療へのテーゼ
 昨年秋口の文章です。これもまた、現在と比較して古い考えを含んでいますが、私のコアとなる考えです。


 第2回目の今回は、歯科医療の価値と予防に焦点を当てます。本来、医療の価値は、患者が得る医療行為の成果によって評価されるべきです。しかしながら、術者と患者間での医療情報量の違い、人体を相手にするが故の不確実性、さらに医療行為の成果の測定が難しい等により、患者にとって医療はブラックボックス化しています。さらに、歯科医師の約85%は診療所勤務という細分化された業態故に、医療行為の質のコントロール/結果の評価は難しく、患者から見ての歯科診療所は玉石混合です。

 歯科医療が患者に提供する医療行為は大きく分けて、異なる治療の組み合わせの結果として、口腔機能/審美性を再構築し、その状態を長く維持させる“治療行為”と、根本的に歯科疾患から患者の口腔を守って行く“予防行為”の2種類です。各医療行為は、その単価/コスト/消費時間が制約条件であり、保険治療である限り、最大の制約条件である単価が規定されています。そして、現行の保険制度は、治療においてのみお金が回るようになっており、術者/患者共に予防への意識が高まりづらい環境となっています。しかしながら、治療と予防のコスト比較/予防導入による中長期的な国家医療費への影響/なにより患者自身にとっての医療の価値/歯科疾患は生活習慣病としての側面が強い事を考えると、予防と治療のバランスにおいてお金が回る仕組みに変わっていくべきです。

 保険制度の改革は非常に難しく、詳細は割愛しますが、深く紐解けば医療に関わる全てのプレーヤー(患者/術者/保険者/医療機器開発や創薬を行う開発者/政府)に改革を困難にしている責任があることが分かります。

 とは言え、全員責任=責任不在ではありません。今現在、糖尿病等の生活習慣病を切り口に大量の特定健診・レセプトデータを分析し、保健事業を介して加入者の健康保持増進を図る“データヘルス計画”が予防へのシフトの第一歩として、押し進められています。ところが、さらに踏み込んで医療現場における保険適応での予防行為の提供を目指し、法律の改訂を視野に入れた途端(日本の健康保険制度の基本となる法律では、保険診療の範囲を「疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付」と規定)、医科においてはその医療現場自体が最大の障害となります。それは、医師の6割強が病院勤務であり、病院自体が治療によりお金が生まれるように作られた巨大なインフラだからです。その点、歯科は、治療/予防行為問わず、診療チェアーが基本的な医療の行為の提供の場であるため、インフラとして予防へとシフトしやすいと言えます。私自身、前職にて歯科医療法人にて予防歯科の導入に取り組んだ際、インフラはそれほど関係ない事を実感しました。

 とは言え、保険制度を予防と治療のバランスにおいてお金が回っていく仕組みに切り替えて行くには、様々な障害があります。法律改正へ働きかけるには、政治の場において訴求する必要があります。その為には、根拠となる予防の経済的効果を多面的に分析し数字として提示する必要性があります。その為には、実証実験を通じた医療データの確保が必要です。一つの可能性が、データヘルス計画にあります。しかしながら、医科と比較したレセプト電子化導入の遅れや、現在の仕組みに基づく健診データの精度/レセプトの信憑性を考えると、短期的に十分と言える質を保った情報を確保する事は難しいと予想されます。

 それでは、具体的にどのように情報を確保して行くか。それについては次回、保険制度の観点から紐解いて行きます。また私自身は、自らの専門であるビジネスサイドからその戦略を探っています。歯科医療界には、医療×ITを通じて改善しうる課題が多々あります。歯科医師/歯科衛生士/歯科助手への教育、歯科衛生士の復職促進、専門医の活用体制、医歯薬連携の促進など、私は現在作り上げようとしている歯科医療のIT Platformビジネスを通じて、日本歯科医療が抱えている課題に取り組み、その過程でデータ確保についての戦略を見いだそうとしています。そのタイミングは、ビジネスを成長させていく上で、多数ある事業候補の優先順位に左右こそされますが、中長期的には、現場にて予防推進を図っておられる先生方の思いと、私の作り上げるIT Platformの持つ力が両輪となり、個の歯科医師としてのOpinionを越え、日本歯科界のOpinionを形成して行きたいと考えております。

日本歯科医療へのテーゼ1 序論

2015-04-22 04:00:02 | 日本歯科医療へのテーゼ
 昨年秋口の文章です。これもまた、現在と比較して古い考えを含んでいますが、私のコアとなる考えです。


 私は常に歯科医療を身近に感じる人生を歩んできました。歯科開業医の家庭に生まれ育ち、学生時代には、日本歯科医療の抱える課題を客観視できるように、医療とは異なる軸を自分の中に持つため、中小企業診断士という経営コンサルタントの国家資格を取得しました。その後、歯科医師と診断士の両方を活かした大規模歯科医療法人のマネージャーとしてのキャリアを通じ、医療界を革新していく上で必要なのは、医療へのマネジメントの導入とプロフェッショナル自身の関連ビジネスへの参入ではないかと考え始めました。そしてそれは、現在のUCLA経営大学院への留学を通して確信に変わりました。今回から始まる拙文、「日本歯科医療へのテーゼ」にて、これまで私が考え続けてきた日本歯科医療の現状、課題、そして未来に向けて産業として取るべき戦略を描き出していきます。

今まさに、日本歯科医療は革新を求められています。現在、安倍政権下で押し進められる日本再興戦略において、ヘルスケアは重点課題として位置づけられています。高齢者率の継続的な上昇が予測されている日本において、国力維持のためにも、国民の健康寿命を伸ばす事は必要不可欠です。その為に、保険者毎に医療データを分析し、保健事業を介して加入者の健康保持増進を図る“データヘルス計画”が予防へのシフトの第一歩として、押し進められています。また、これから5年/10年単位で、医療×ITにより生まれる様々な新サービスが社会に広まり、医療機関の持つ機能の一部は、私達の日常生活の中に組み込まれて行きます。長期的には、医療保険制度自体が、治療に置いてのみお金が回る既存の仕組みから、予防と治療のバランスにおいてお金が回る新しい仕組みに変わって行くべきであり、医療機関のあり方、さらには医療従事者/国民の医療に対する考え方も変わって行かなければなりません。
 
 私はこの夏、医療×ITの先端企業や、データヘルス計画の旗手である企業にてインターンとして働かせて頂きましたが、この変化の中で歯科医療が取り残されつつあると感じました。歯科疾患は生活習慣病としての側面が強い上に、間接的に医科医療費を発生させ、歯科医療は国民の健康寿命の増進に深く関わっています。それにも関わらず、産業として環境の変化に対応できないという失態は、日本社会に大きな損失を生み出して行きます。

 歯科医療は、先進国家における医療インフラの一部です。しかしながら、日本において特に医科と歯科とは異なる業態/市場サイズ/バランスを有しており、その市場成長率や政治/経済への影響力にも大きな差があります。また、医療の提供方式/報酬は、各国の医療保険制度に大きく左右されるため、比較論として高収入を期待でき、術者としてのプロフェッショナリズムも満たされ易い米国市場環境等への羨望が容易に生じます。それらは、正誤を問わない歯科へのネガティブキャンペーンなどと相まって、日本歯科医療が産業として抱える閉塞感/停滞感を生み出しています。

 さらに、日本の歯科医療は、その教育制度/保険制度が抱える課題に慢性的に苛まれています。それらの構造的問題は社会に実害を生んでおり、革新する必要性こそ認識されていながら、両制度は多くの既得権益/利害関係の上に成り立っているため、抜本的な改革は見送られています。また、臨床の現場とは異なり、政治/経済という社会にインパクトを与えうる場を通じて、歯科医療の社会的価値を高めるに至れるリーダーも不在に感じられます。

 以上の様に、変化を求められている一方で、歯科医療を取り巻く状況が厳しいのは事実です。しかし、私はこの状況をネガティブには捉えておりません。歯科こそ予防と治療のバランスにおいて成り立つ医療へと変化して行く魁になれる可能性を有しており、これからの時代だからこそ生み出せる新しい価値が存在すると考えています。その為には、教育/保険制度、それに連動する歯科医療従事者/患者の意識変化が必要であり、それら動かし難きを動かす為の、戦略と実行力が必要です。予測される様々な障害を乗り越えて行く戦術については、Run & Thinkで考えて行かなければなりませんが、その先に、歯科医療の社会的価値の向上があると考えています。今の時代だからこそ、温故知新にて変化していける日本歯科医療の持つ可能性を一人でも多くの読者の皆様に感じて頂ければと願っております。






半年前の考えの30%位を破棄します

2014-11-06 22:10:51 | 日本歯科医療へのテーゼ
過去記載してきたテーゼが如何に浅い考えに基づいているかを実感しています。ということで、過去のテーゼの30%位はあっさりと破棄しなければ行けません。まっ、半年くらい前のなまっちょろい考えなので、破棄して当たり前ですが。

これまでに紡ぎ上げてきた考えと、実際に経験から学んだ事を、丁寧に織り込んで行くように文章化していく過程で、自分自身の考えが形作られて行きます。

今、これをする事には大きな価値があります。それは、WHITE CROSSというビジネスが、私の考えを反映させたものになるからであり、考えの深さに比例して、協力なビジョンへと転化されて行くからです。

これから、1週間はこの作業に没頭します。