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日本歯科医療へのテーゼ2 歯科医療の価値と予防

2015-04-22 04:03:24 | 日本歯科医療へのテーゼ
 昨年秋口の文章です。これもまた、現在と比較して古い考えを含んでいますが、私のコアとなる考えです。


 第2回目の今回は、歯科医療の価値と予防に焦点を当てます。本来、医療の価値は、患者が得る医療行為の成果によって評価されるべきです。しかしながら、術者と患者間での医療情報量の違い、人体を相手にするが故の不確実性、さらに医療行為の成果の測定が難しい等により、患者にとって医療はブラックボックス化しています。さらに、歯科医師の約85%は診療所勤務という細分化された業態故に、医療行為の質のコントロール/結果の評価は難しく、患者から見ての歯科診療所は玉石混合です。

 歯科医療が患者に提供する医療行為は大きく分けて、異なる治療の組み合わせの結果として、口腔機能/審美性を再構築し、その状態を長く維持させる“治療行為”と、根本的に歯科疾患から患者の口腔を守って行く“予防行為”の2種類です。各医療行為は、その単価/コスト/消費時間が制約条件であり、保険治療である限り、最大の制約条件である単価が規定されています。そして、現行の保険制度は、治療においてのみお金が回るようになっており、術者/患者共に予防への意識が高まりづらい環境となっています。しかしながら、治療と予防のコスト比較/予防導入による中長期的な国家医療費への影響/なにより患者自身にとっての医療の価値/歯科疾患は生活習慣病としての側面が強い事を考えると、予防と治療のバランスにおいてお金が回る仕組みに変わっていくべきです。

 保険制度の改革は非常に難しく、詳細は割愛しますが、深く紐解けば医療に関わる全てのプレーヤー(患者/術者/保険者/医療機器開発や創薬を行う開発者/政府)に改革を困難にしている責任があることが分かります。

 とは言え、全員責任=責任不在ではありません。今現在、糖尿病等の生活習慣病を切り口に大量の特定健診・レセプトデータを分析し、保健事業を介して加入者の健康保持増進を図る“データヘルス計画”が予防へのシフトの第一歩として、押し進められています。ところが、さらに踏み込んで医療現場における保険適応での予防行為の提供を目指し、法律の改訂を視野に入れた途端(日本の健康保険制度の基本となる法律では、保険診療の範囲を「疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付」と規定)、医科においてはその医療現場自体が最大の障害となります。それは、医師の6割強が病院勤務であり、病院自体が治療によりお金が生まれるように作られた巨大なインフラだからです。その点、歯科は、治療/予防行為問わず、診療チェアーが基本的な医療の行為の提供の場であるため、インフラとして予防へとシフトしやすいと言えます。私自身、前職にて歯科医療法人にて予防歯科の導入に取り組んだ際、インフラはそれほど関係ない事を実感しました。

 とは言え、保険制度を予防と治療のバランスにおいてお金が回っていく仕組みに切り替えて行くには、様々な障害があります。法律改正へ働きかけるには、政治の場において訴求する必要があります。その為には、根拠となる予防の経済的効果を多面的に分析し数字として提示する必要性があります。その為には、実証実験を通じた医療データの確保が必要です。一つの可能性が、データヘルス計画にあります。しかしながら、医科と比較したレセプト電子化導入の遅れや、現在の仕組みに基づく健診データの精度/レセプトの信憑性を考えると、短期的に十分と言える質を保った情報を確保する事は難しいと予想されます。

 それでは、具体的にどのように情報を確保して行くか。それについては次回、保険制度の観点から紐解いて行きます。また私自身は、自らの専門であるビジネスサイドからその戦略を探っています。歯科医療界には、医療×ITを通じて改善しうる課題が多々あります。歯科医師/歯科衛生士/歯科助手への教育、歯科衛生士の復職促進、専門医の活用体制、医歯薬連携の促進など、私は現在作り上げようとしている歯科医療のIT Platformビジネスを通じて、日本歯科医療が抱えている課題に取り組み、その過程でデータ確保についての戦略を見いだそうとしています。そのタイミングは、ビジネスを成長させていく上で、多数ある事業候補の優先順位に左右こそされますが、中長期的には、現場にて予防推進を図っておられる先生方の思いと、私の作り上げるIT Platformの持つ力が両輪となり、個の歯科医師としてのOpinionを越え、日本歯科界のOpinionを形成して行きたいと考えております。

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