Four Season Colors

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読書のよもやま(2022.12.19)

2022-12-19 | 雑文
「歴史の中で語られてこなかったこと おん
な・子供・老人からの「日本史」」網野善彦
・宮田登(朝日文庫)

歴史家である網野善彦と民俗学者である宮田
登による、それぞれの専門である日本の歴史
と民俗をテーマとした対談集。

「語られてこなかった」という題名のとおり、
華やかな歴史のできごとや人物はほとんど出
てはこない。

では、題名のとおり「おんな・子供・老人」
が対談の中心かといえば、そうでもない。

もちろん、それぞれの話題は出るのだが、主
というよりは、それらを視点として、終点は
「百姓は農民ではない」になることが多い。

300頁にわたり様々な観点で対談は進むが、
多くは網野善彦による「百姓は田地の農民だ
けでなく様々な職業が含まれる」に落ち着く。

すべてがそうではないから、織物、儀礼、商
業、民具など重要はキーワードはあるが、印
象はこの「百姓」が強く、繰り返される。

しつこいことは網野善彦が言及しており、自
覚的に、意図的に発言しているのだから、目
的も達している。

自分は専門家でもなければ、そちら方面の教
養もまったくないので、ただ勉強になるだけ
で、否定も肯定もない。

だから内容には不満はないのだけれど、対談
集として、書籍のつくりとしては、残念な感
はある。

題名から期待される内容と実際の内容のズレ
が大きすぎるし、最後まで読み終えれば、冒
頭の「もののけ姫」もあざとさしかない。

本書は、日本史というより、対談者の専門で
ある「民俗学」の歴史を学ぶものなのだろう。

自分のように、日本の歴史について学べるの
だろうと、ほぼジャケ買いすると肩透かしを
食らうので注意が必要か。

ただ、これは完全に自分の対談者に対する無
教養によるものであり、書籍に責任などある
はずもなく。

民俗学と歴史学という学問とは、という方面
としては、とても読みやすく面白いので、目
的にあっている方には。


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