月に一度は、映画館で新作を。2023年の
11月は、「首」(日本)。
北野武が監督する映画をすべては観ていない
が、アウトレイジは面白かったので、同系統
かなということでチョイス。
事前知識はいつも通り、映画館予告のみだっ
たが、鑑賞後に調べると、意図も戦国版アウ
トレイジで正解だったよう。
日本は戦国時代、1578年の織田信長に対
する荒木村重の反乱から、本能寺の変を経て
羽柴秀吉と明智光秀の山崎の戦いまでの話。
世界観はしっかり構築されているが、いわゆ
る没入型ではなく、一歩引いた視点で人間を
シニカルにコミカルに見せる。
どの作品にしろ、北野武が監督をしている映
画を複数見ている人は、例え監督名を伏せら
れても、すぐに監督がわかるだろう。
それくらい、過去の作品のつくり方、展開が
そこかしこに見えて、良い意味で北野武の映
画という期待を裏切らない。
逆に言えば、若い世代(なお本作はR15+)
で北野武の映画が初めてで、楽しめたのなら
ば、過去作も楽しめるはず。
ただし、リミッターという意味では、そうし
て監督として個性を確立し、認められたとい
うことをボーナスに外し気味でもある。
戦国という、ある意味フィクションの許され
る舞台で、ネームバリューを武器に表現は大
げさに、やりたい放題ともいえる。
そうしたかったのか、結果そうなったのかは
分からないが、ゆえに、コミカル、ナンセン
スが強めにも感じる。
しかし、その感じるは過去の監督作品を観て
いるからの感想であり、「首」を単体で見れ
ば、バランスはこれでいいのかもしれない。
直ぐに監督が分かるほどの個性を持ち、観る
人の多くは、おそらく自分のように監督の過
去作を観てしまっている人が多いだろう。
だとするとなんだか、この作品は正当に(と
いうか正確に)は評価されないのかもしれな
い。
一方的な作品への期待も、ありきたりに繰り
返された監督論も、きっといらない。
有名監督の戦国バイオレンスヒューマンコメ
ディとして、無駄のない、綺麗な映像のくだ
らない130分を、ただ、楽しめばいい。