親友がうつ病にかかった。そして、命をたった。
彼を救えなかった。「罪を償うため」に、著者は精神科医になる決意をする。
「患者に寄り添って、言葉にならない言葉に耳を傾けられるような精神科医」をめざして。
著者は医師となり「息を抜く間もなく、全力で患者さんと向き合って」いく。
人の命をあずかるプレッシャーを背負いつづけて。
やがて疲労感や不眠、希死念慮(死にたい気もち)など、
うつ病の症状がつのってくる。
そして限界を超える。
彼は心のなかで亡き親友に語る。
「お前のつらさが、今は実感としてわかるよ。相当つらかっただろうな。
(中略) 俺も、もうだめかもしれないよ。エネルギーを使い尽くした」
「死んじゃ、だめです。(中略) 休職届を出して、病院に行きましょう」。
恋人が、懸命に彼を支える――
著者は書いている。「精神病への偏見をなくすために『うつ病は心の風邪』などと言う人がいるが、僕が思うに、『うつ病は心の肺炎』だ。適切な治療を受けないと確実に命を落とす」