福知山線脱線、無線気にし減速遅れ…事故調報告示唆
107人が死亡した昨年4月のJR福知山線脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、これまでに判明した事実を報告書にまとめた。
その中で事故調は、JR西日本は本来なら、カーブでの速度超過を防ぐ新型ATS(自動列車停止装置)を事故前に現場に設置する計画だったにもかかわらず、支出決定や書類チェックなどを漫然と先延ばしし、その結果、設置が事故後になった経緯を指摘した。また事故電車の運転士が、直前に犯したミスに関する車掌と運転指令の無線交信に気を取られた結果、ブレーキをかけないまま急カーブに進入した可能性を示唆した。
事故調は20日付で報告書を公表、来年2月1日に有識者らからの意見聴取会を開いたうえで、来春をめどに最終報告書をまとめる方針だ。
報告書によると、JR西が2003年2月に決定した設備投資計画では、04年度までの2年間で福知山線に新型ATSを整備する計画だった。しかし約8億円の費用支出は03年9月まで決定されず、さらに、この際の工程表では翌10月には設計が開始されることになっていたのに、大阪支社の担当者による書類チェックが半年近くもかかり、その結果、設置は事故発生後の05年6月までずれ込んだ。
事故電車を運転していた高見隆二郎運転士(死亡)は、電車がマンションに衝突する直前までの約40秒間、まったくブレーキ操作をしていなかった。事故調の分析ではこの間、高見運転士が直前の伊丹駅で犯したオーバーランのミスについて、車掌が運転指令に無線交信で報告していたことが判明。処分を受けかねないミス報告に気を取られた結果、ブレーキ操作が遅れた可能性を示唆している。
一方、事故現場を含む同線宝塚―尼崎間のダイヤについては、97年以降、ダイヤ改正のたびに途中駅での停止時間を削るなどして運転時間が短縮されたが、運転士の負担を軽くする施設や車両の改良はほとんど行われなかったと指摘。事故調は「遅れが生じやすく、運転士には常に上限に近い速度での運転を強いるダイヤだった」と批判している。特に事故の起きた伊丹―尼崎間では、同社のマニュアル通りに運転しても、遅れが生じてしまう状態だった。
このほか、事故調の模擬実験の結果では、現場カーブ(制限速度時速70キロ)では、106キロで進入した場合、転覆脱線する危険が高まる。しかし事故調がJR西の運転士50人にアンケート調査した結果、危険となるのは「110キロ以上」という誤った認識を6割が持っていたことも判明。「140キロ以上」と答えた運転士も9人おり、安全教育の不備が明らかになった。
(2006年12月20日4時0分 読売新聞)
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「97年以降、ダイヤ改正のたびに途中駅での停止時間を削るなどして運転時間が短縮されたが、運転士の負担を軽くする施設や車両の改良はほとんど行われなかった」
「同社のマニュアル通りに運転しても、遅れが生じてしまう状態だった」
「JR西日本は本来なら、カーブでの速度超過を防ぐ新型ATS(自動列車停止装置)を事故前に現場に設置する計画だったにもかかわらず、支出決定や書類チェックなどを漫然と先延ばしし、その結果、設置が事故後になった」
つまり現場の運転士に速度超過を強要し、カーブでの停止装置もなく、運転士ひとりに責任を押しつけていた。
ダイヤの遅れやオーバーランがでると、日勤教育という苛め。
「なぜミスをしたのか?」
会社の不備を棚上げして、運転士ひとりを責めつづける。
詰問・罵倒はときに何カ月にもおよぶ、自殺者もでる拷問だ。
そうやって運転士も乗客も殺し、JR西日本はあぐらをかいて生きのびている。
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