自堕落玩具箱

更新頻度まったくもって不明。たまに暴言毒づき悪態、気まぐれ天邪鬼。
パラレルワールドの住人が夢

焼け野原 Ⅱ

2009-10-06 18:30:00 | 


「槐(えんじゅ)の間」は一番奥まった場所にある。渡り廊下に屋根と壁をつけたような細長い通路を歩いていく。断熱材などもちろん使用していない為冷える。床の軋みが耳につく。壁には宿泊した著名人と宿の主が写った写真が額縁に横並びでびっしり飾られている。年代を感じさせる写真の色具合にちょっと時空散歩をしている錯覚に陥る。宿の雰囲気から奇妙な空間に入り込んで行くよう。「槐(えんじゅ)の間」までかなり歩く。運動不足解消になりそうだ。ようやく着いたら女将がゆっくり見ていってくださいと言い残し立ち去る。先客が見学していた。仲むつまじい上品な老夫婦だ。笑顔で挨拶された。この宿に来て一番最初の笑顔、癒される。老夫婦は管理人に気を使ってくれたのか数分で退出した。一人この異空間に取残される。彼らがいた時と空気ががらっと変わった。床の間にぎゅうぎゅう詰めに無数に飾られたぬいぐるみ。まるで一対一対に魂がこもっているかのように生々しく感じられる。たとえていえば誰もいない部屋なのに無数の目がいっせいに自分に向けられている様。座敷わらしのありがたみなど何処を探しても見当たらず、蠢く邪念で渦巻く空間に息苦しくなり、5分も立たずに間から出る。

離れから母屋に戻った頃には落ち着きを取り戻した。とてもじゃないがあんな所で一晩夜を明かすなんて到底できそうもない。大人数でもたぶん無理だ。実際霊は見たことはないが行ってはいけない危険な場所など嫌な感覚が襲ってくる。今まで難を逃れることが出来ていると実感する時は幾度もあった。俗に言う第六感にあたるのだろうか?偶然の一致かもしれないが害が及ばないだけありがたいと思っている。
部屋に戻る。日がかげると同時に急激に気温が低下してきた。暖房器具があったので点ける。ファンヒーター=灯油しか使用したことなかったので目の前の暖房に戸惑った。話には聞いていたがガス式の暖房。レトロなタイプだった。灯油式は点けると勢いよく熱くなるが、ガスはじんわり来る。岩手の冬はあまり厳しくないのだろう。

夕食は6時。まだ時間はあるが外出する気にもなれずTVをザッピング。廊下が賑やかになってきた。どうやら他の宿泊客のようだ。突然部屋が揺れる。足音がバタバタ反響する。

  「!?」

建物が老朽化しているせいで廊下を歩く音が非常にはっきりうるさく聞こえすぎるのだ。たしかに古い家屋などは二階を歩く音が響くが、例外にない程。地震でも起きたのかと勘違いしたくらい。隣の部屋からは話し声が聞こえる。壁も薄い。くつろげなくなってしまったので館内を散策しながら残りの荷物をついでに取りに行く。そうこうしているうちに夕食の時間だ。建物は古くても飯がよけりゃと大広間へ。ここだけ新築のようなだだっぴろい空間。だが、問題が… まず寒すぎる。たった今点けたばかりのストーブ。この広さを最適な温度に保つには最低30分前に点けるべきだろう。
もう一つ、仕切りがない。分かりやすく説明すれば大宴会場スタイルなのだ。団体様ご一行なら納得出来るが、一人モンにはあずましくない。人見知りだから余計に。ここらへんは配慮の欲しい所。見ず知らずの他人と飯を食った所で喉も通らない。一人部屋でくつろぎながら食いたかった。肝心の夕食も茶碗蒸しと蕎麦は美味しく頂けたがそれ以外は… 管理人は海育ちなので、山の食事は不味いと聞かされていた。川魚は身がしまってなく水っぽいなど。全体的に薄味過ぎて物足りなかった。こってりした物一品あればまた少しは違ったかもしれない。 値段相応じゃないなと言うのが感想。お膳に半分放置したまま大広間を後にした。部屋に戻り、ひとっ風呂浴びてすっきりするかとそさくさ準備し浴場へ。

これで終わらすつもりのハズが、またまたロングなので次項へ
いつまで続くんだよorz

 



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