あの大学時代の、馬鹿なオレ。その1 【 つめえり 】

2023-08-13 01:00:16 | 馬鹿なオレ

あの大学時代の頃、



オレは、学ランを着て、詰襟に、バッジを付けて、

黒の革靴を履いて、キャンパスを歩いていた。

 

キラキラ輝く、明るい笑顔の中で、不釣り合いだった。

体育会という組織に、所属した。

 

4年・神様、3年・貴族、2年・平民、1年・奴隷、

と、呼ばれる体育会の階級制のなか、

オレは、1年の奴隷から、2年の平民になった。

 

ひと階級、上がって、

人間扱いされる様になった時に、

オレは、退部した。


この部の流儀は、

キスリングという凸( でこ )型の、

藪の中を縦走して山を登るこの部には、

非常に、不合理なリュックサック「 ザック 」を

背負うのが、荷物を運ぶ基本の手段である。

 

雨が降り、夜露で、水を含むと、すべてのその水分が、

重みとして、加わり、

ただでさえ、重いのに、さらに、重みをかさねた。

旧軍隊式の、くすんだ、わさび色のテントに、

テントを支える芯となる、鉄のパイプ。

 

鉄のパイプって、

学生運動、華やかなりし時の、武器じゃないんだから、

時代錯誤だった。

 

すべてが、不合理だった。

 

学生だから、そういう不合理を、

危ない遊戯として楽しんでいたんだろう、と、

いまのオレは、思う。

 

毎年、テントや、ザック、食糧、の軽量化が、

2年の終わりに、

正式な部員、正部員と認められる

儀式の会議の議題に出るんだが、

オレたちも、改ることは、一切なかった。


伝統だそうだ。


永く続いた伝統を

自分たちの手で改めるのを、ひとは畏(おそ)れる。

オレたちも、同様に、畏れたのだ。

 

伝統を

守るのもいいだろう。

 

しかし、所属する部員が、年々、減少する中で、

この装備を、このやり方を、継続するには、

そろそろ、破綻の時期が、来ている様に、

皆んな同様に感じていたはずだけれどもだ。

 

社会に出る前に、学生が、

不合理、不条理、理不尽を楽しむのは、勝手だ。

社会に、出てからも、当然、それは、ある。

その課題を、予行練習するのも、いいんだろう。

 

オレは、そう、理解して、

永く続いた、この伝統を、壊すのが怖くて、守った。

 

組織としては、オレは、この伝統を守ったが、

個人としては守る気がしなかった。

 

だから、組織に伝統を残して、

オレは、組織から退部した。

 

この伝統は、過去に、過酷さゆえ部員を、

山で亡くしている。

そして、亡くなった先輩に対して、

頂上(ピーク)では、黙祷を捧げていた。

そして、これも伝統になっていた。

 

 

そして、

この道のりは、つづく、

 

 

初出 17/09/02 16:07 再掲載 一部改訂



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